再現答案 R4 予備試験 法律実務基礎科目(刑事)

第1 設問1
1(1)
(1)供述の信用性は、他の信用性のある証拠との整合性、供述内容の一貫性、供述態度等から判断する。
(2)証拠(以下略)⑩によれば、Bは令和3年3月1日夜、Aから電話で犯行をもちかけられた点につき、BにAから同日夜電話があり通話したことが⑪から裏付けられる。また、BとAが、犯行現場であるV方たるQマンションを犯行前に何回か下見していたことについて、B所有車で同マンションを訪れる男2人の存在が、⑤⑮より裏付けられる。また、BがAの指示どおりの作業着と帽子を購入した点につき、Bがそれらを所持していたことが⑨より裏付けられる。また、BがAから、犯行においてVを脅すためにAの父のナイフを受け取った点につき、Bが3月8日以降、このナイフを所持していたことが、⑬⑭から裏付けられる。また、BがAとともに犯行時刻頃、V方付近にB所有車で訪れた点につき、B所有車でQマンションを訪れた、上記Bの犯行時の服装と一致する男の存在が④⑤より裏付けられる。また、犯行態様について、Vが⑩の供述のとおりの被害を受けたことが①②③より裏付けられる。また、犯行から約30分後、ABがUに立ち寄り、AがVから奪ったキャッシュカードを用いてATMから現金を引き出そうとし、Bがペットボトル1本を購入した店について、B所有車と外見が一致する車がUを訪れ、Bの犯行時の服装と一致する男乙が、甲と共に来店し、乙がペットボトルを購入し、甲がATMの前に立っていたことが、⑦⑧から裏付けられる。そして、Bが、Aに、Vから奪ったカードとAの父のナイフを渡したことについて、⑫から裏付けられる。また、Aが同カードでATMから現金を引き落とそうとして失敗したことについて、⑥から裏付けられる。そして、Vから奪った現金をAとBで分配した点について、⑯と整合する。
 よって、⑩の供述は、信用できる多くの証拠と整合する。
(3)また、⑩⑰から、Bが犯行を一貫して認めており、その供述に矛盾がないことがわかる。
(4)また、⑰から、Bは、嘘をついても通用しないと思い、当初から犯行を認める供述をしたことがわかり、真摯な態度で供述したことがわかる。
(5)たしかに、Aを共犯者にしたてあげるため、Bが虚偽の供述をしている可能性はあるが、一方で、多くの信用できる証拠と供述が一致することなどもふまえれば、本問供述部分の信用性が認められる。
2(2)
(1)共謀共同正犯は、共謀すなわち意思連絡と正犯意思と、共謀に基づく実行行為からなる。
(2)信用性のある⑩から、AがBと、V方でVを脅して現金とキャッシュカードを奪うこと等を計画したことがわかるため、意思連絡が認められる。また、Bが、上記共謀に基づく強盗致傷罪の実行行為を行ったことがわかるため、共謀に基づく実行行為が認められる。
(3)では、Aの正犯意思が認められるか。
 正犯意思は、犯行への関与の度合い、実行行為者との関係性、分け前の取り分から判断する。
 ⑩から、Aは、自ら犯行をBに持ち掛けている。そして、Bに犯行時の服装を指示している。また、凶器となるナイフをBに提供している。たしかに、V方に侵入し、Vを脅して現金とキャッシュカードを奪うことなどの犯行計画は、AとBが話し合いで決定している。また、Vを縛るためのロープはBが用意している。また、Aは、犯行時見張り役にすぎない。
しかし、犯行の発端はAにあり、また、強盗致傷罪の主要な凶器であるナイフを提供し、AがBに犯行時の服装を指示したことから、Aの犯行の関与の度合いは大きい。
 また、Aは、Bの地元の先輩で昔からBの面倒をみており、その他BはAに恩義がある。そのため、BはAに従う関係にある。
 また、Aは、Vから奪った現金について、実行行為者であるBより100万円も多い300万円の分け前を得ている。
 よって、Aの正犯意思が認められる。
(4)よって、Aに共謀共同正犯が成立することが認められる。
第2 設問2
1 公判前整理手続の趣旨は、公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため、争点及び証拠を整理することにある(刑事訴訟法(以下略)316条の2第1項、316条の3参照)。
2 弁護人は、AB間の共謀の事実を否認している。そのため、AB間の共謀の有無が争点となっているから、その争点についての証拠を整理するために提出を求めた。
第3 設問3
1 接見等禁止の請求は、被告人が接見者にはたらきかけて、証拠を隠滅することを防止する点にある。
2 ㋒では、検察官請求証拠の証拠調べやBの証人尋問が終わっていない。そのため、AがBにはたらきかけて、証拠を隠滅させたり、Bの証言を虚偽のものにするよう指示する可能性がある。
3 ㋓では、第2回公判期日までに、検察官請求証拠の証拠調べやBの証人尋問は完了している。そのため、請求をしなかった。
第4 設問4
1(1)
 Bは、⑩の内容と異なった証言をしている。そのため、⑩は、Bの証言の弾がい証拠(328条)として証拠能力が認められるので、弾がいのために請求した。また、Bの証言は、公判前整理手続終了後はじめてされたものであるから、それ以前に請求しえず、「やむを得ない事由」がある。
2(2)
 「同意」とすると、326条1項の「同意」ととられかねないため、弾がい証拠としての採用のみ認める意図で「異議なし」とした。

<コメント>
 設問1:
(1)
・⑪からわかるのは、『A』なる者であり、Aと断定してはいけないことに留意すべきであった。また、以降、全体の書き方として、⑩と整合する、くらいに簡潔に書けばよかった。信用性の問題と、犯人性の問題との違いが、ようやく理解できた気がする・・・
・「甲がT店ATMで同カードを用いて現金を引き出そうとし未遂に終わったことが⑥から裏付けられる。」の方がよい。
・「Aが300万円を受け取ったことが、⑯から推認できる」のほうがよいのか?
(2)
・強盗致傷罪の実行行為をまず定義してから入るべきだった。①②③は暴行と致傷の実行行為認定で使う?
・ロープもAの指示やん・・・
・なんとなーく、これでよかったのか疑問。(1)では、設問上、Aが犯行に関与した点についての信用性しか吟味していないわけで。(2)は、いわばAの犯人性の認定でもある。⑩は信用できるから、甲=Aを前提に(2)を記載していったが、本当は、(2)で甲=Aを認定していくべきではなかったか。(結局、よくわかってない・・・)
設問3:
・「被告人」でOK。Bも公判請求されてたんだね。勾留されてなくてよかった・・・そしたらこの設問、解答しづらくなるけど。
・悩んで、「証拠を隠滅することを防止する点にもある」から「も」を削った。他の場面が浮かばなかったから。
設問4:
(1)小学生の時から「弾劾」の漢字を忘れるくせがある・・・
(2)たぶんこれなんだろうけど、いまいち確信が持てない。もっと深い意味があるのか?というのも、別に、同意したって、⑩の内容的に検察官は困らないような・・・むしろ困るのは弁護人。でも、ではなぜ検察官は、⑩を証拠請求しなかった?
たぶんあれかな、弾劾となるか否かは、請求後のJの判断だから、Pとしては、Jが弾劾証拠として用いることを否定する可能性に望みをかける意図で、同意まではしなかったのかな。


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