R3司法試験 刑訴

【問題】

https://www.moj.go.jp/content/001350706.pdf

【出題趣旨】

https://www.moj.go.jp/content/001355370.pdf

【採点実感】

https://www.moj.go.jp/content/001357781.pdf


出題趣旨から読み解いたお作法メモ:
・単語の羅列であるメモ1は、「供述」(人がある事実の存否という情報を伝えようとする言語的な表現(@後掲『伝聞法則に強くなる』))といえないのでは?
→単語の羅列からでも事実の存否を認識しうるなら、供述とみてよいと考える

  1. 男→V女TEL。V→男、個人情報、資産情報連絡。男、V宅で住侵強盗。

  2. レンタカーから男が甲と判明。甲、任意同行でP(K)に自白。甲「乙の指示。乙は犯行データ持つ。犯行データはUSBにある。間違ったパスワードを入れるとデータが消える。乙の背後には丙組。供述調書は、報復が怖いので×」

  3. Pらは,甲を,乙及び氏名不詳者と共謀の上,本件住居侵入強盗に及んだ旨 の被疑事実で通常逮捕。同被疑事実で,「捜索すべき場所」を 「H県I市N町2丁目3番4号Aビル21号室」とし,「差し押さえるべき物」を「被害品と認め られる現金,本件に関係ありと思料される名簿,マニュアル,メモ,名刺,パーソナルコンピュー タ及びその付属機器類,電磁的記録媒体,携帯電話機及び付属の充電器」とする捜索差押許可状を 発付。PC、プリンタ差押え。①丙組の幹部丁の名刺1 枚(「丙組若頭丁」と印刷されたもの)を差押え。「V 住所等 犯行態様」のメモ1差押え。白黒USBにつき乙「パス2222。開けたら?」と。しかし、②USB2本、内容確認せず差押え。

  4. 乙、任意同行、同被疑事実で通常逮捕。

  5. 黒USB、データ有。メモ1のデータも。白になし、乙に還付。

  6. 甲、逮捕後は乙、丙の関与黙秘。メモ1も黙秘。乙、完黙。甲乙、起訴。個別審理。

  7. 甲、自己の公判でも6と同。

  8. 乙、否認。③Q(P)、甲乙間の共謀立証のため、メモ1証拠調べ請求。乙のB「不同意(※326Ⅰ)ないし取調べに異議あり(※309Ⅰ、規則205Ⅰ前段(「証拠調に関する異議」のうち、「証拠調に関する決定」でないもの。不同意であり、伝聞証拠であり、伝聞例外がないから、証拠能力なし))」との証拠意見(※309Ⅰ、規則190Ⅱ)。甲、乙事件での証人尋問では6,7と同。

第1 設問1
1(1)①差押えの適法性
218Ⅰ
「差し押さえる べき物」のみ
趣旨:差押えが対象者の財産権への制約となることか ら,これを可能な限り限定
要件:①令状に明記された物件に該当(憲法第35条,219条第1項)
かつ
②被疑事実との関連性(憲法第35条,222条第1項,第99条第1項)

※出題趣旨ではいまいち条文文言との結び付き不明。機械的暗記か。


①「正当な理由」(憲法35Ⅰ)があると認められた範囲で、
 →a嫌疑の存在、b差押え目的物が捜索場所に存在蓋然性、c目的物と被疑事実との関連性、d捜索・差押えの必要性
②「捜索する場所及び押収する物を明示」(同項)した、
③「権限を・・・各別の令状」(同条2項)の発付により、
捜索・差押えが可能。

※基本刑訴Ⅰ

あてはめ 
①名刺 〇
②関連性の基準

捜索・差押えは、捜査初期段階で行われることが多く、関連性も捜査の進展により変化する。関連性の明確な証拠物のみしか押収できないと、客観的証拠の確保が困難。そこで、直接証拠、間接証拠のみならず、情状証拠、背景事情に関する証拠も、関連性が認められる証拠 に含まれる

最判昭和51年11月18日判時837号104頁(百選21改)

本件住居 侵入強盗の事案の性質→乙の背後に丙組がいる組織的
差し押さえられた名刺の記載内容→乙の背後にいるとされる丙組員
捜索・差押えの現場がどのような 場所→本件事件のアジト
→その丙組員が、本件事件の共謀者と推認(間接証拠又は背景事情に関する証拠)

∴適法

2(2)②差押えの適法性
①令状に明記された物件 電磁的記録媒体〇
②関連性
・問題の所在:USB内データは、可視性可読性なし→関連性が即時に判断できない

(a)電磁的記録媒体の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、(b)その現場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるなどの事情の下では、内容を確認せずに差し押さえることが許される。

最決平成10年5月1日刑集52巻4号275頁(百選22改)

あてはめ
(a)アジト、甲の事前自白と一致 〇
(b)パスはほんとは8桁(甲の事前自白より)。乙は嘘のパスワードを伝えた。データ消去の可能性。〇

∴適法




第2 設問2
1 小問1 メモ1の証拠能力?(乙作成を前提)
(1)伝聞証拠(320Ⅰ)?

公判期日外の供述は、知覚、記憶、叙述の各過程に誤りが混入する可能性があるにもかかわらず、反対尋問(憲法37条2項)等によりその真実性を吟味できず、信用性が担保できない点にある。
公判期日外の供述を内容とし、要証事実との関係で、原供述の内容の真実性を立証するために用いられる場合は,信用性の担保に欠ける証拠を立証に用いることで事実認定の正確性を損なうおそれが生じるため,伝聞証拠に当たる。」

規範

メモ1:「書面」。甲乙間におけ る本件住居侵入強盗に関するやり取りがうかがわれる記載はなく,その記載の内容(被害者の 名前,住所,500万円の在りか等)の真実性を立証したとしても,甲乙間における本件住居 侵入強盗に関する共謀という要証事実の認定上直接の意味を持たない。

しかし、

・メモ1の内容と客観的な犯罪事実が偶然の一致でない程度一致
かつ
・メモ1が犯罪発生前に作成
→犯罪=メモ1の犯行計画にそって遂行されたことを推認

かつ
・メモ1の作成者=乙
→乙と甲間で当該メモに記載され た内容の共謀が推認

メモ1=その存在と内容自体から、要証事実を推認させる。内容の真実性は問題とならない。

∴伝聞証拠ではないから、証拠能力は否定されない。

2 小問2
・甲方 の捜索時、メモ2差押え。@机の施錠された引き出し内にあった甲使用の手帳の令和2年8月4日のページの部分
・甲は,メモ2について全く供述しなかった
・乙の公判の証拠調べ手続において,④Qが,甲乙間において本件住居侵入強盗に関する共謀 が存在することを立証するため,本件メモ2の証拠調べ請求
・乙の弁護人は, 「不同意ないし取調べに異議あり。」との証拠意見
・甲の証人尋問が,甲と 乙との間及び甲と傍聴人との間の双方に遮へい措置を講じて実施
・甲は,自己の犯罪を自白,メモ2 含む乙との共謀は、一切の証言を拒絶した。
・メモ2の証拠能力?(なお本件メモ2は甲作成)
メモ2 メモ1とほぼ同内容。手書き。冒頭に、「乙から指示されたこと」とある。ひらがな多し。

メモ2:「書面」。「乙から指示されたこと」の記載のほか, 本件住居侵入強盗の被害者の名前,住所等と一致する記載及び本件住居侵入強盗の犯行態様と 一致する記載があることから,本件メモ2は,乙から本件住居侵入強盗を指示された旨を甲が 供述した内容を記載した書面であるといえ,「甲乙間における本件住居侵入強盗に関する共謀」と いう要証事実との関係で,その内容の真実性を立証するために用いられる場合に当たることか ら,刑事訴訟法第320条第1項の適用を受ける伝聞証拠として証拠能力を検討することが求 められる。

甲が自己の供述を記載した書面であり,乙との関係では,「被告人以外の者 が作成した供述書」に該当することから,伝聞例外となる規定として刑事訴訟法第321条第 1項第3号を選択した上で,同号が規定する①供述不能,②不可欠性,③絶対的特信性の各要 件を指摘。

①供述不能

321条1項各号の供述不能事由は、公判期日において現供述者の供述を得られない場合の典型事由を示した例示列挙である。よって例示列挙と同種又はそれ以上の事由の存する場合を含む。

証言拒絶の場合には、その後翻意するがありうる点で供述者死亡の場合と同様とまではいえないものの、供述者が国外にいる場合と比較すると、より供述を得ることは困難であるといえるから、供述不能事由にあたる。

最大判昭和27年4月9日刑集6巻4号584頁等からの自作規範


甲は、報復を恐れ、供述調書の作成を拒否。遮蔽措置してもなお、一切の証言拒絶。
→〇

②不可欠性

当該証拠の存否によって事実認定に著しい差異をもたらすことになる場合

自作規範

メモ2以外には、共謀推認できる証拠なし。
→〇

③絶対的特信性

証拠能力の要件であるから、供述の際の外部的付随的状況を基準に判断する。

規範

施錠引き出し内の手帳→他人に見せることを想定していない→虚偽を記載する理由なし
→〇

∴321条1項3号により伝聞例外として証拠能力〇


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