エルフちゃんに子どもがいた!

母が利用している訪問入浴の職員は、みんな若い。特に研修の時から来てくれている女の子は、まだ幼さを感じるほどだ。子どものような張りのある声、ぱっちりとした目、髪の毛の隙間からぴょこんと飛び出る耳。その姿はまるで、妖精エルフのようだ。

訪問入浴の職員の方は動きやすい服装、ジャージやトレーナーを着用している。エルフちゃんが初めてうちに来た時は、まだ勝手がわからなかったのでしょう。彼女はミッキーの顔が真ん中にあしらわれたエプロンを纏い登場した。これから調理実習でもあるのかな、と私は内心おどけていた。

浴槽で温まった体を拭いてくれているエルフちゃんに母は尋ねた。「先週はお休みだったね」私は心の中で親指を立てた。グッジョブだ。エルフちゃんが休みの日に何してたか聞けるじゃん。母のつぶやきにいいねボタンがあったら、私は即座に押していたことだろう。彼女は答えた。

「そうなんです!子どもが熱を出してしまって…」

頭にタライを落とされたような気がした。これがコントだったら、どれほどよかったでしょう。衝撃は、私の鈍い頭を回転させた。(こ、子ども?今子どもって言ったよな…ああ歳の離れた家族がいるってこと?いやそれなら弟か妹だよな…)浮かんだ疑問を直接ぶつければいいのに、口は重く動かない。頭の動きと反比例するかのように。まったく人間ってやつは矛盾を抱えた生き物だよ。

思い返せば、同級生の女子たちも成人式の数年後にはバタバタと結婚して子どもを産む層がいた。私も私の周りもそうじゃないから、想像すらできなかった。人は環境に起因するとは、よく言ったものだ。私なんかより、幼いと思っていた彼女の方がよっぽど大人だったのだ。

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