てかてか

庶務の女性が結婚して、二次会に出席した時の話。主役の彼女は、普段眼鏡をかけた地味なタイプ。でもダイエットやエステに通って頑張っているんだとはりきっていただけあって、その日はとても綺麗だった。照明が消えて、スポットライトを浴びながら入場してくる彼女を見て、僕らは「誰だよ!別人じゃねえか」と騒いでいたほどに。

会は進み、出席者のメンツが大体わかってきた。我々は会社の同僚として、男5人で出席した。新婦の友だちには、女性4人。年代が近いこともあって、僕らはこのメンバーで会を共にしていた。

ところが、同僚の男1名が見当たらなくなった。消えた彼は先輩で、長身で、少し日焼けをしていた。それは趣味のフットサルによるものだ。大多数の人間は、彼をイケメンと評するだろう。モテる彼は女遊びが大好きで、その言い訳として学生時代は彼女一筋で遊べなかったのだからいいだろと言ってのけるような人物だ。

そして、女性も1名いなくなってしまった。私は食べるのに夢中だったので、どうせいなくなった2人でその辺ほっついてんだろほっとけ!と内心思ったが、残された女性陣が心配していたのでみんなで探すことに。

会場を出たところで、すぐに2人は見つかった。人気のない地下フロアから続く広めの階段を揃って上がって来たのだった。2人とも着衣は軽く乱れ、顔はてかっていた。その様子を見て、僕らは察したのであった。男女それぞれに分かれて、事の次第を確認。今なら「渡部か!」くらいのツッコミができそうではあるが、その時の私は驚くことしかできなかった。

イケメンの先輩は満足した様子で帰ったが、残った僕らは三次会を開催することになった。私も腹いっぱいだしもう帰りたかったけど、別の先輩の意向なので仕方がない。驚いたのは、先ほどの多目的女もついてきたことだった。

適当な居酒屋に入って席に着く。男女が対面するような形になり、私の目の前に座ったのが例の女だった。なんだか彼女は勝ち誇っているように感じた。この女4人の中でイケメンに選ばれたのは、あたしなのよって。その満足感がほとばしるせいなのか、先ほどの情事の名残なのか、安い油で揚げられたツマミのせいなのかはわからないが、多目的女の顔はまだてかっているように見えた。それが、心底気持ち悪かった。

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