初めての人体実験
汗切丸の試作品ができたのは、それからしばらくしてからであった。
この頃はまだコンセントをパワーソースとしていた。
開発の初期段階。
まだまだ原理試作である。
不安はあるが、試せるのは己の身体のみであった。
コンセントの100Vが、繋がっている回路…
自分が設計した回路とはいえ、ここに手を突っ込むことに不安は大いにあった。
そこで私は旧知の仲であるデザ子に連絡を取った。
彼女は後輩だが、吹奏楽部にて幾多の死線を共にくぐり抜けた中である。彼女の家で実験をさせてくれないかと持ちかけたのだ。
もし私が感電し、電流から離脱できなくなったときは、ドロップキックでもして電路から離脱させて欲しい。そう頼んだ。
デザ子は快諾してくれた。
春先のうららかな朝、彼女の家まで40キロの道のりを、実験器具と試作品を担ぎ自転車を漕いだ。
次回に続く。
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