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第十一回 そこの路地入ったとこ文庫 委託参加

第十一回 2024年07月14日(日)そこの路地入ったとこ文庫
委託参加をします。
場所日時など 11:00~16:00、入場無料、烏丸御池「Cafe YoKoSo」
主催者様のサイト https://note.com/sokoroji_kyoto/n/ned4d03401643

今回もお世話になります。
委託本はこちらの2冊です。
・「猫屋奇譚 百鬼夜行」300円
・「猫屋奇譚 鬼にあふこと」400円

今回委託をします2冊は、昨年12月に開催されました
「第10回そこの路地入ったとこ文庫 コピー本折り本」に委託しました「干支鈴」「竜胆」の本編になります。
「干支鈴」は「百鬼夜行」、「竜胆」は「鬼にあふこと」になります。

猫屋奇譚はすべて短編連作になります。
「鬼にあふこと」は「百鬼夜行」に収録しました「鬼にあうこと」の続きになります。
「百鬼夜行・鬼にあうこと」で猫屋の陰陽師である橘と鬼の晴が初対面を果たします。
そして、今回の新刊「鬼にあふこと」でばったり再会! どんな場所でどんな感じに再会したのかを連作を通じて晴が語ります。
「百鬼夜行・鬼にあうこと」を読まずとも話は通じますが、出来ましたらご一緒に読んでくだされば幸いです。

委託本の紹介

猫屋奇譚 鬼にあふこと

☆新刊「猫屋奇譚 鬼にあふこと」
俺が人間のそれも陰陽師にお願いをするなんて初めてだし、最後だと思う。
和綴じ本 本文54項 400円
3話収録 ・正月に起こる良き事 ・桂花 ・竜胆
正月と桂花は書き下ろし。竜胆は「花暦」より再収録。

正月に起こる良き事より抜粋
その重箱を見たのは三月も中旬に差し掛かった暖かい日だった。
ちょっとした用事を済ますために駅への道を歩いていた僕は、重箱を抱えた青年とすれ違った。
小さな漆塗りの三段の重箱は側面に梅の花が描かれていて、風呂敷に包みもせずに重箱そのままを持っている。
それでも青年の片方の手には薄い白地の蓮模様の風呂敷が握られていて、一応は包もうとしたらしい感じがする。
「急がなければ」
青年はかなり急いでいるらしく箱はカタカタと音を立てて軋んでおり、まるで風を切るようにあっという間に遠ざかったのが印象に残った。


猫屋奇譚 百鬼夜行


☆新刊「猫屋奇譚 百鬼夜行」300円
猫屋奇譚シリーズより、晴を語り手とした奇譚4話収録
紫陽花・百鬼夜行・鬼にあうこと・干支鈴

鬼である薬師と村に伝わる風習のために薬師を招く人間である誠二との奇譚。
1冊を通して初夏から師走の大晦日までの季節を意識した連作となっています。

本文より抜粋
俺は村の事情と風習の意味を知り、自分自身も決行しなければならないと悟る。
昔は村のどの家でも風習に従った。だが今も続いているのは僅かに数軒を残すのみだ。

俺だって本当に風習を信じているわけではない。この村は長子に長女は育たないと云われてきた。
男女に関わらず、初めての子は大人にはなれない。何が原因なのかは分からない。
だが実際に風習を馬鹿にした家は大切な子を失った。  
人によって土地が悪いだの村の者全員が呪われているとまで云っているのもいた。
そして厄から逃れるために、村の者達は家に子供が生まれるその前に薬師と呼ばれている男と連絡を取った。

二人の鬼面を付けた男が立っていた。
俺から見て右側の男は横笛を手にして黒く染められた着物を緩く着ており、もう片方は背中に風呂敷で包んだ箱を背負っている。
「本日はお招きありがとうございます」

俺の目に映った光景は一生涯忘れないだろう。

横たわる雲の合間から糸のように細い光が差し込んでくる。
あれは先頭を行く薬師の持つ提灯の火だ。その後ろには懐かしささえ感じる魑魅魍魎らが蠢くように列をなしている。
満月が奴らを照らした。半数が塵となり消えていく。
「久しぶりのご対面だ」
僕は妖刀を満月の光を浴びせるように振り上げた。