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織物基礎からのアフタートークは産地の話にズームイン

おはようございます、朝活中の渡邉です。今週もnote編集部員の私がレポートをお送りします。

今週は古橋織布の浜田さんに講義をしていただきました。古橋織布は綿織物で有名な遠州産地にある創業93年の会社です。講師の浜田さんは東京出身で、文化服装学院在学中から日本各地や海外の産地を巡り、機屋の魅力を感じて今の会社に入社されました。

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浜田さんはなんと、小学校3年生のころから自分で帽子を縫ったり、高校ではファッション部で生地屋に通ったり、大学受験を試みていたのにもかかわらず、高校3年の2月にファッションの専門学校へ進路変更したりと、小さい頃からテキスタイルに対して熱をお持ちの方です。

そんな浜田さんの講義の後に、織物産地の魅力や課題、そのほか浜田さんが感じられていることについて、今回もnote編集部でインタビューをしました。


浜田さんのお話から、いくつか心に残ったポイントを紹介していきたいと思います。

何をするかを決めるより、如何に自分らしく生きられるか

産地に入って8年目になる浜田さんのもとには、新しく産地に入った方からいろんな相談が届き、日々お話される中での浜田さんの考えを聞くことができました。

地元を離れての産地就職となると、新しい地域でのコミュニティも重要です。これまでの友達や、家族とも離れ、息抜きする場所も変わったりしてきます。産地に飛び込むのと、住み慣れたエリアで就職をするのでは生活面での変化も大きいです。新しい仕事がはじまると同時に生活も一変します。(私は都会で育ったので想像ベースで書いておりますが)

浜田さんは、産地と共に生きていくためにこそ、仕事以外の活動を通して息抜きができると良いとおっしゃいます。浜田さんは結構本気にフットサルをされているそうです。

また仕事の面だと、入社前に仕事に対して明確な理想を持ちすぎるのは必ずしも良いとは限らず、「自分自身がどういう環境でやっていきたいのか」を明確にして、柔軟にどんなことにも対応していくことが大事だと言います。

会社に何かを期待するのではなく、環境に応じながら自分で考えて行動できる人でないと、もしかしたら入社前後のギャップに感じるのかもしれません。そういう環境も楽しむスタンスですね。これはどの業界にも通じるところがあると感じました。「何をしたいか」より「どんな会社で働きたいか」「どんな人と働きたいか」と言い換えられるかもしれません。

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テキスタイルの仕事におけるやりがい

次は、機屋としてお仕事をしていて、やりがいを感じる部分をお聞きしました。

1つ目は、目の前で生地を織っているから、頭に描いたものが実際にプロダクトになる魅力です。お話を聞いていて、「企画だけ」「製造だけ」という関わりだと、得られないやりがいということがわかりました。もちろん産地にいて、工場にいて、機械が前にあるからこそです。

2つ目は、古橋織布の生地を採用する方はこだわりのあるお客さんが多いから、最終製品まで見えるという点です。古橋織布の工場まで生地を探しにくるデザイナーさんもかなりいるそうです。産地の学校の卒業生も何人もお世話になっていると聞きました。

3つ目は、古橋織布の生地は特徴的だから、自分の会社で織った生地の服を着ている人を見かけるた時に喜びを感じるそうです。それがもし自分で企画した生地や、織った生地であったら、、と想像をするとワクワクします!

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遠州産地ならではの取り組み

遠州産地には、機屋さんのみならず、撚糸屋さん、染め屋さん、加工屋さんなどさまざまな工場が揃っています。そういった中でこれまでは横のつながりがあまりなかったそうですが、最近は20-30代を中心にしたコミュニティができているとのこと(ひよこのかいと呼ぶそうです)。このコミュニティでは、月1でみんなで勉強会をしたり、イベントを企画したり、課題を議論したり、職種を問わない交流が行われています。

ひよこの会のメンバーで協力して、それぞれの強みを活かしてオーダーメイドの服や、オリジナル商品の販売などもしているそうで、これも魅力的です!

産地の後継者について

日本は世界一の高齢化が進んでいる社会です。それもただ単に高齢化社会、高齢者社会ではなく”超”高齢化社会(65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が21%以上)です。ちなみに世界で超高齢化社会BEST3は、①日本②イタリア③ドイツだそうです。なぜか職人によるものづくりが有名な国に多い…?

また日本では2030年には65歳以上の人口が総人口の30%を占めるともいわれており、約3人に1人が65歳以上の方ということになります。そういった社会の中で最近、機屋を支える準備工程の職人さんたちは、なかなか後継者がいないから後5、6年で事業を終えようかと考えている人が多いそうです。

でもやる気の人がいれば何でも教えるし、会社も継いで欲しい思っている職人さんが多くいるウェルカムな状態だとも言います。普段の生活をしていては、全く伝わらない仕事が多いので、note編集部としてはこのような仕事の存在と魅力を少しでも伝えていきたいです。(今後、人を求めている職人さんにインタビューしに伺いたいです)

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デザイナーや企画職ではなく産地就職という考え方

こちらはインタビュー中の宮浦さんのコメントですが、「服飾学校に入って就職活動が終わるまでに、繊維産地のことに触れる機会が少ないので、ここの選択肢を広げたい。結果デザイナーやパタンナーに就職したとしても、学生時代からもっと産地に出入りしたり交流して欲しい」とのこと。「産地で日々作られる素材は、宝の原石である」と宮浦さんは考えています。

以上、インタビューをまとめてみました。これらをまとめてみて感じたことは、思った以上に私たちが知らないところに課題があるんだなということ。

とくにアパレルとは全く異なる仕事をしている私からしたら、これまで服を購入する際に産地のことについて考えたことはありませんでした。

ただ今回の講義やインタビューを経て、ものづくりの背景からは、なにか人間らしい魅力やこだわりを感じました。現代の私達が生きる資本主義社会ではひたすらに生産性を求めてしまいがちですが、ふと視点を変えてみるとこれまでに認知されていなかった魅力で溢れてます。

今後、産地の学校のnote編集部として私は、少しでも多くの人に産地から生まれる隠れた魅力やこだわりを、私みたいな一般の人にもわかるように可視化していきたい、と思うに至りました。


渡邉

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