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BOOK ESSAY「宙に浮いた子供」

SANBON RADIO No.026
『惑う星』(リチャード・パワーズ/木原義彦/新潮社)

SANBON RADIO第26回は、読書会の形で開催します。
今回扱う作品は、ぼく(鎌田)からの発案で、リチャード・パワーズの『惑う星』です。他の本も候補にあげましたが、嶋田さんからの「鎌田くんの好きな方で良いよ!」という声と、磯上さんからの「パワーズの入り口としてもお薦めできるのでは?」という後押しもあり、『惑う星』を選びました。読み始めてみると、意外なほど、素直に入り込むことができました。読書会のときは、提案者がその本についてエッセイを書いています。(駆け足で書いたのでまとまりがありませんが、)本編と合わせてお楽しみいただければ嬉しいです。



BOOK ESSAY「宙に浮いた子供」

雪が降った翌朝の畑は、のっぺりと白く、静かで、ひっそりしている。
シャキシャキと音をたて、真新しい雪のうえを歩くと、畑の奥にある人参の畝に辿り着くまでにいろんな足跡を見つけた。歩幅の狭い、三本の跡は鳥。真っ直ぐに歩く二本の蹄は鹿。ジグザクと揺れるように遊んでいるのは狐の親子。雪に残った小さな点々を眺めながら、身近な動物たちの生活を想像するのは楽しかった。

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