同性婚

前の記事は同性婚についてもタイトルにあげてたのに、全く触れていなかったので、続きを書くことにした。

大学で法律を学ぶときに、僕らの世代だと我妻栄という民法の神様のような学者がいて、もちろん古いとか言われていたのだけれど、その人の本を使う人もまだまだ多かった。そして我妻栄の本で印象的だったのは、民法は個人意思自治の原則という主義があって、その現れが意思表示という制度である。個人がある法律効果を希望したとき、法がその価値を認めて実現に助力する制度、というようなものである。実現に助力する、とは具体的には契約が有効だと、金銭債権や引渡請求権などが発生して、強制執行などもできるというくらいの意味である。逆に、奴隷契約のようなものや暴利行為(トイチの闇金)みたいな意思は、たとえ当事者が合意してても、国がそれを手助けするわけには行かないから公序良俗違反(民法90条)で無効になる。まあ、そんなわけで、法律効果を与えるというのは、それが国家の立場から見ても法律効果を与えることが有用だと認める場合、だという国家的ないし公的な評価を含む面がある。

親子や「つがい」というのは動物にもあって、親鳥はヒナがかえり、自分でエサが取れるまでは餌を運んでやる。そして成長して性的に成熟すれば、それぞれの生物特有の求愛行動を経てカップルになり、巣を作り産卵する。しかしこれらを婚姻とか扶養とか呼ぶわけではないし、婚姻も扶養も人間特有のものである。特に、子が成熟して独り立ちするまでが人間は長いのだけど、子が独り立ちしても、その後も夫婦は続く。これは多分人間特有のものである。だから、人間の婚姻には、同居義務、協力義務、婚姻生活の費用を分担する義務、夫婦財産の独立性と共有推定、相続権などが民法にもあるし、他の法律では社会保険、税制など夫婦特有の定めが置かれている。

同性婚を希望する人は増えてきていて、それは婚姻制度に伴う効果を、同性同士の結びつきにも認めてほしい、ということらしい。実際諸外国には、そういうパートナー制度を定めて一定の法的効果を付与する例もあると聞く。同性婚でも子供を育てる機能は考えられなくもない。例えば養子縁組をすることもあり得る。その場合、現行法では未成年養子だと夫婦共同縁組じゃないといけないので、その「夫婦」に同性婚が含むかどうかは一つの問題であるけれど、同性婚の求められる機能とは、主には生活保障面と相続関係のことだろう。そして、どういう効果を認めるかは、どういうニーズがあるかの調査を含めて、まだまだ議論のあるところだと思われる。生活保障や相続関係だと、現行法では例えば養子縁組するという方法もなくはないけど、やや制度が本来予想するところとは違うという批判もあるかも知れない。

前の夫婦別姓についても述べたけれど、これは本来立法政策の問題だから、これを作らないことが違憲だなどと裁判所が判断することはこれからも多分、ない。けれど、国民が希望して、国会と行政が協力の上でそういう制度ができれば、裁判所がそれにどうこういうことはない。結局、ここでも下駄は国民に預けられているわけなのであります。

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