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オッパイが張って痛い!!ー乳房うっ積と乳汁うっ滞

乳房うっ積と乳汁うっ滞。これは産婦人科病棟勤務のスタッフにとって永遠のテーマ。
この対応を間違えると、産後のママを「マタニティーブルー」にも「産後うつ」にもしてしまえるほどの重大事象。

しかしながら、この二つの状態を見極められるスタッフは多くはない。
と感じています。
大抵のスタッフは「乳房ケアは難しい」と言います。
難しい。と言いながらも、産後のママに乳房ケアや母乳保育を説明しなければならないのですから、時折、その対応が間違っている。という場合も多々あるのです。

病棟スタッフが苦手とする乳房ケア。
ママが知識を持っていれば「マタニティーブルー」にも「産後うつ」にもならずに母乳保育が楽しくなるかもしれないですよ。

1.乳房うっ積(うっ血)

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産後2~3日目ごろに起こる。

乳汁産生のために、乳房への動脈血流が増加し、相対的な静脈血流還流不全が生じ、乳房内に血液・リンパ液がうっ滞(うっ血)するために起こる。
難しいですね。簡単に言えば、血行障害。血液の交通渋滞です。

動脈血は心臓の拍動とともに乳房内へどんどん送り込まれてきますが、静脈血の流れが悪く、うっ血してしまう事で乳房内の内圧が上がり、”オッパイが張る”という状況になります。
溜まっているのは乳汁ではなく、血液なので、オッパイが張っている割に 搾乳しても乳汁は思ったほど出ません。
更に、オッパイが張ることに伴って、乳頭は平たくなり、乳頭・乳輪部の 伸びも悪くなるため、授乳のための条件が悪くなり、赤ちゃんはオッパイを吸うことが出来ずに授乳の度に拒否するかのように泣くようになります。

https://note.com/sanba_kaori/n/nb029971527d8

①症状

両方のオッパイが張る                
オッパイを触ると熱い(熱くないこともあり)   
オッパイを触ると痛みがある   
オッパイを触るとしこりが触れる

オッパイが張っている割に搾乳しても乳汁は出ないため、スッキリしない

②対処方法

溜まっているのが血液なので、搾乳しても張っている割に乳汁は出ません。まず、搾乳するより乳房基底部マッサージをしましょう。

乳房マッサージが触ると痛くて出来ない場合は、肩回しで背中の血行からよくしていきましょう。

基底部マッサージもしくは肩回しは授乳の前に毎回実施します。

背中にカイロを当てて気持ちが良いと思える温度で温めることもおすすめです。

痛みが強すぎる場合は、痛い場所を保冷材で冷やしましょう。
血行が悪いときに冷やすことは普通はしませんよね。血行が悪いとき普通は温めます。が、乳房うっ積のときは痛みを抑えるために保冷材で冷やします(冷罨法)

冷罨法で痛みを抑えた後、乳房基底部マッサージもしくは肩回しで血行を良くしていきます。搾乳が出来そうであれば少量でも乳汁を出して(排乳)みてください。その際、搾乳器ではなく手で搾乳します。

手で搾乳することにより、乳頭乳輪部も柔らかくマッサージする事にもなり、一石二鳥です。

2.乳汁うっ滞(うつ乳)


産後3~4日ごろに起こる。

乳管周囲組織の血液・リンパ液うっ滞や浮腫による乳管圧迫・乳汁凝固や剥脱上皮による後天性乳管閉鎖、オキシトシン分泌不全による乳汁排出障害。
簡単に言いますと、乳汁の溜めすぎ、溜まりすぎた状態の事です。

何らかの理由で分泌されている乳汁量より、排出(排乳)する量の方が少なく、乳腺内で乳汁が溜まっていることで起こります。

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①症状

両方のオッパイが張る                
オッパイを触ると熱い(熱くないこともあり)   
オッパイを触ると痛みがある   
オッパイを触るとしこりが触れる
搾乳すると、乳汁が排出され、オッパイの張りが楽になる。もしくは楽になったと感じることが出来る

②対処方法

乳汁排出(排乳)・・・搾乳(搾乳器の使用も可)
冷罨法(局所の安静)
消炎鎮痛剤(NSAIDs)投与・・・カロナール・ロキソプロフェン・アセトアミノフェンなど
葛根湯の内服・・・市販の風邪薬。少なくとも3日間内服

※痛みのためにご自身で搾乳が出来ない場合は産婦人科もしくはお近くの 助産院にて対応してもらってください。
葛根湯を内服すれば、乳汁うっ滞が改善されるわけではありません

                      
抗生物質投与(産婦人科受診)

3.まとめ

乳房うっ積も乳汁うっ滞も乳房の張り(乳房緊満)・疼痛・熱感・発赤・ 硬結など症状が全く同じである。

①乳房うっ積

血行障害により起こる。溜まっているのが乳汁ではなく血行障害によりうっ血している静脈血であるため、搾乳しても苦痛なだけで改善されない。

乳房基底部マッサージもしくは肩回しによる大胸筋を動かすことにより血行を良くしてやることで改善できる。

搾乳する事よりも乳房基底部を動かすことが先決。(乳房基底部マッサージ励行)

②乳汁うっ滞(うつ乳)

何らかの理由で乳腺内に乳汁が溜まりすぎもしくは溜めすぎた状態で起こる

搾乳(排乳)することにより乳汁が排出され、オッパイの張りが楽になる。もしくは楽になったと感じることが出来る

乳房基底部マッサージを行うと、更に乳汁産生を促すことになるため、乳房基底部マッサージを行うより搾乳を行う。
できれば乳頭乳輪部を柔らかくするために手による搾乳を授乳前に行う。

4.乳房基底部マッサージの仕方

乳房基底部とは、ブラジャーのワイヤーが当たる部分。乳房のふくらみと大胸筋との境目。

①1操作

右手の手のひらと指で、バスケットボールをつかむように指を広げてオッパイを持ちます。

右手の手の母指の付け根をオッパイの上部にあてて、右側に向かって押します。これ以上行かない。という場所まで押し、3秒間キープします。

この動作を3回繰り返します。※痛いときはもっと外側から行いましょう。


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②2操作

右手の位置を少し下方にずらし、小指側をオッパイの外側下方(斜め下)にあてます。

右手は左手の上にあて、力を入れる点(図)に注意しながら、右の肩に向かって押すようにします。これ以上行かない。という場所まで押し、3秒間キープします。

この動作を3回繰り返します。

※右の手のひらでオッパイをつぶさないように注意する


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③3操作 

右手の手のひらの小指側を、オッパイの下にあてます。

左手はその下にそえるように置いてオッパイを真上に救い上げるようにします。これ以上行かない。という場所まで押し、3秒間キープします。

この動作を3回繰り返します。

※前から手のひらが見えるくらいがちょうどいい位置です。

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1クールとは左右の乳房で1の操作を3回。2の操作を3回。3の操作を3回実施することをいい。2クール・3クール…行う場合はご自身で乳房の緊満度を見ながらマッサージを実施してみてください。


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