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【妄想】LIDET UWF 10.9 メインイベント

 U、新日本、10.9。その3つのワードだけで十分だった。「歴史上の出来事」であったはずの「10.9」。プロレスファンとして産声を上げた時には終わっていた、しかしながら間違いなくプロレス界を変えた1日。ただただ、それを体感してみたかっただけなのだ。

 GLEAT ver.1、まさかの新日本プロレスよりSHOが参戦。そして勝利という結末。「10.9」という日程の魔力。スケジュールを確認した後、カード発表の前にチケットを抑えた。なんせ当時は緊急事態宣言のせいで、制限された座席数が想定された新宿FACE。キラーカードが発表されれば一瞬でソールドアウト。私は鈴木社長を信じた。

  カード発表日の9.9。帰りの電車の中で記者会見をyoutubeで見ていた。メインでの出撃が当初より宣言されていた飯塚の対戦相手、確かに直前の西武ドームでヒールターンはしていたが、別に戦う方法がないわけではない。自分の中では、「10.9」で飯塚の対角線上に立つのはSHO以外考えられなかった。

  10.9当日、セミの伊藤・田中稔vs佐藤・川村戦は伊藤が佐藤をハイキック葬で失神KO。失神した佐藤に代わり、川村がマイクを握りハードヒットの解散を宣言。佐藤光留が公言していた通り、「どちらかが潰れるまで」の約束を反故にすることなく抗争終結となった。新しい観戦様式などどこ吹く風、ハドヒファンの怒号が飛び交う中、伊藤はふてぶてしく退場。全く素晴らしい表情だった。間違いなくレスラーとして一段上へと昇った伊藤とSHOがもう一度戦う姿を見たい、しかし、それもかなわぬ夢なのか。今日の飯塚の対戦相手は橋本大地。大日本プロレスの看板選手の一人であり、団体最高王座の奪取経験もある。決して悪い人選ではないし、彼に謂れがあるわけではない。それだけは厳にお伝えしたい。それでも、この特別な日に新日本vsUWFを見てみたかったプロレスファンはここにいるのだ。

 どうにもテンションが上がりきらずに迎えるメインイベント、飯塚の入場が終わり大地の入場の直前、まさか―――こんな―――

 名曲、爆勝宣言が流れる中、大地が入場。なるほど、面構えは悪くない。万といる2世、3世レスラーの中で、苦難も歓喜も経験している。そんじょそこらの同じやつとは比べるなということだ。堂々と入場しリングイン。リングアナが名乗りを上げる直前、、、、、突如暗転!!

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 流れ出すミュージック、聞き覚えのあるチップチューン、ダークでポップなヒールビート、間違えるはずがない、名手ヒゲドライバーが生み出した名曲のアレンジ、彼の選手のためだけに生み出された入場曲...120% Voltage!!騒然とする場内、混乱に包まれる新宿FACE、リング上には、新日本プロレス、Bullet Club、House of Torture、Murder Machine、――SHOが現出した。

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 そこから試合まではかつての異名通り、まさに雷のような速さだった。動揺する大地に対し風神拳(ショートアッパー)で即座にKO。大地陣営のセコンドは突如現れたディック東郷が新日本ではまず見せないであろうトップロープからの鉄柱越えセントーンで撃滅。そして現れる血まみれの人影―鈴木社長だ。辛うじてリングアナからマイクを奪い取り、「本日のメインイベントは................飯塚選手vsSHO選手へ変更となります!!」

 力尽きる鈴木社長、飛び交う怒号、私は、心の底から、ワクワクしていた。

 意外にも試合自体は普通に進んでいた。伊東戦で挙げていた打撃対応も格段に良くなりながら、アマレス、柔術、そして新日道場で日々鍛えられた精神を見せるSHO。突如対戦相手が変更となったアクシデントにも努めて冷静に、しかしながら怒りの表情を見せながら追い詰める飯塚。15分が経過しスコアは2-3、飯塚が有利な状況。やはりUWFルールの場数が違う。観客もだいぶ落ち着き、一挙手一投足を見守る。生まれつつある「これはひょっとしていい試合なのでは?」という空気。...そんなことで終わるはずがなかった。

 飯塚が無理矢理コーナーにSHOを押し込み腕を取ろうとする中、東郷がリングイン!数々の新日本ファンを失望の谷に叩き込み続けたスポイラーズチョーカーで飯塚を絞殺攻撃。審判は即座に反則負けを宣言。三度怒号に包まれる客席。それらを無視してスネークバイトを決め飯塚を失神させるSHO。押し寄せるセコンドに東郷がラリアット連発!さらに失神から回復したであろう佐藤光留が鬼の形相で現れるも、またしても突如現れたEVILがインターセプト。ダークネス・フォールズで観客が座っていたパイプイスの山に叩きつけ沈黙。

 騒然とする中、現れる伊東貴則。先ほどの堂々としたそれとは全く違う、怒りとも、後悔とも、呆れともとれる表情だった。

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 伊藤「SHO...なんやこれは?どないなっとるんや?俺はこのお前戦って、お前が求める強さってのを理解できたと思ってたよ。それは俺たちと同じ方向なんじゃないかとさえ思った。違ったんか?」

 SHO「伊藤...お前の言う強さってなんだよ。かつて存在したUってやつか?それならそこに二人倒れてるよ。お前も、お前が今否定した俺に負けた。それが事実だ。お前が言う強さも...Uも...もう終わってんだよ。」

伊藤「確かに俺は負けたな。それは認めたる。でもあの試合は、俺たちの世代が作ることのできるUをほんの少しかもしれんけど、見せられたはずや。まだまだ先があると思う。俺はそれを作っていきたい。そのために今このリングに立ってる。このリングに、プロレス人生掛けてんのや。だから、俺は、こんなことするお前を止めるよ。いいえ、とは言わさん。SHO...もう一度俺と戦え。」

SHO「断る、と言いたいけど...この前の試合後、俺自身が言ったんだよな、「点か線かお前次第」って。だから一つ条件を付ける、お前が負けたらLIDET UWFは解散しろ。今日、ハードヒットとかいう自称UWF系団体が終わったんだろ?終わったんですよね、お客さん?つまり...このリングは現存する最後のUだ。そんなもの、新日本プロレスのこの俺が...終わらせる。拷問なんかじゃねぇ。死刑だよ。伊藤、お前を、楽にしてやる。」

睨み合う二人。踵を返すHouse of Tortureの面々とSHO。

 とんでもない空気感に包まれた新宿FACE。二人の睨み合いはプロレスウィークであったこの週末、おおよその予想を覆し週刊プロレスの表紙となった。後日、GLEAT及び新日本プロレスから12/31、ある時以降、格闘技の日となったと言っても過言ではないこの日に、二人の決着戦は組まれることとなった。場所は始まりの舞台、東京ドームシティホール。スケールが小さい?なんとでも言えばいい、それでも、「遅れてきたプロレスファン」にとって、今しかない決戦が始まるのだ。

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 そして確信した。「10.9」。この日、この場所、このシチュエーションに、プロレスの神様はいたのだと。

~了~

 ...ネコシさんリスペクト!!

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