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1.8 WRESTLE KINGDOM 16 NOAH vs NJPW レビュー

 noteではだいぶご無沙汰しております。さなりぃです。最近はpodcastにてレビューなんかをやっておりますが中々これが難しい。結果ともいえるPVも30程度で毎回ひーこら言っている状態です。そんな中、タイトルの回に関してはありがたいことに50PVと多くの皆さま(当社比)に聴いていただけました。

 最初はプロレスを見たままそのまま話していたのですが、自分のトークスキルでは無理があると察し最近では割とガッツリ目に原稿を固めてから収録しております。それであのクオリティは逆にヤバいだろってのは、はい、その通りです。

 …で、その原稿なのですが、ちょっと文章の体裁を整えればそのままテキスト版として掲載できそうな気がしてきました。どうしても原稿→収録まで時間もかかるのでネタを再利用したい…という横着さもあるのですが、経験上、同じ内容でも活字と音声では意外とニュアンスも受け取り方も頭への入り方も変わるような気がします。

 耳プロ界隈&紙プロ(?)界隈でも両方を同時にガッツリやってる人はあまりいない気がしますし、 せっかくですから二兎を追いたい、もとい、己のお気持ちをあらゆる手段を使って皆さまにお伝えしたいという自己顕示欲を抑えきれないので今回実験的にやってみようと思います。

 長い前置きでしたがそれではどうぞ。

第0試合① 矢野vs藤田

 いい試合でした。全体を通して喧嘩っぽいのが藤田でしょうか。色々とできるであろう矢野に対して、ドロップキックとボストンクラブしかない藤田という構図と、そのがむしゃらさが藤田へ応援が向く理由になっていた気がします。

 やはりボストンクラブの攻防が肝だと思うのですが、1回目は矢野が丸め込み。2回目は足首を持ってガード…を崩して背中を蹴り飛ばして成立。3回目は矢野を振り回して成立とボストンの攻防だけでしっかり味を変えた2人がお見事でした。強いて言うなら3回目の足首掴みを藤田は踏んづけてほしかったかな。

 ただ、単純な技量差なら矢野の方が上というのもわかりやすかったので、GK金沢氏も補足してましたが、もう少しわかりやすい見せ場があれば、ここまで拮抗(もしくは藤田攻勢)という印象は薄らいだと思います。というより、このキャリアで自分よりキャリアのない選手をよく見せられるというのはもしかして凄いことなんじゃないでしょうか。

 結論として、2人がきっちりショースターターとしての役割を果たして会場盛り上げたのが全てだと思います。ベストバウトに挙げる人が多いのも納得ですし、私自身も会場で盛り上がりました。不満の声が上がっていた理由のほとんどが、「矢野はもっとできる」というものだったと思うのですが、少なくともこの試合をいい試合だと思って見ていた私からすると「矢野が付き合った」的な見方はあまりしたくないのが本音です。矢野が藤田をチンチンにして塩漬けするような試合はあまり見たくないですしね...。とにもかくにもサンキュー矢野!!

第1試合 ワト・田口・石井・YOSHI-HASHI・後藤vs 原田・稲村・岡田・大原・稲葉

 ノア勢は全員ノアのロゴTシャツで入場、新日側はワトのみライオンマークTにて入場。スタンスの違いが顕著に見えていたシーンだと思います。ノア側はとにかくこの対抗戦においてはユニットを超えた呉越同舟の強い団結力を示しており、1.5のノア勢全員でのリングジャックが象徴的です。対して新日はその際にもロスインゴメンバーのみが対応と、あまり新日全体で抗戦という雰囲気には感じられませんでした。そんな構図をみて、私は新日側に対して何となく攻殻機動隊というアニメのこのセリフが思いかびました。

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「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ。」

 カウンターテロ組織であり、スペシャリストたちの集まりである主人公属する公安9課を象徴するセリフです。何が言いたいかというと、新日本のレスラー達は強い個を持っていることが前提で、その個がよりいいパフォーマンスを見せることで、新日本の今の高いレベルを作り上げており、ことさらにライオンマークを見せつける必要なんてない...といった新日レスラーの表現なのかもしれません。絶対そこまで考えてないとは思いますが、妄想は自由です。

 開幕の稲葉がすごくよかったですね。この試合、というより大会本編のファーストアタックは対抗戦の強度そのものを計る上で大事だったと思うのですが、しっかりカタく当ててるように見えましたね。それに動じない殿も流石。稲葉はほぼ初見だったチッタ川崎での清宮戦と比べると随分よくなったように見えます。年齢を考えるともう少し焦らなきゃいけない気がするのですが…現状のノアだとなかなか活路が見出せない状況がもどかしいですね。

 みんなが期待していた石井vs稲村も一歩も引かない稲村がとにかく素晴らしかったです。エルボーの音もエグく、余裕そうに受け止めたはいましたが石井も相当辛かったのではないでしょうか。その後のインパクトのある屈伸ブレーンバスターもとても良かった。

 稲村はこの1週間でKENTAと石井に認められる男となりましたがそれも納得のファイトぶり。新日本ファンは稲村のような選手はかなり好きだと思いし、やや広くプロレスを見ていた層からはとっくにわかっていたことではありますが、改めて稲村という逸材が「発見された」のは間違いないでしょう。ノア側とどういう契約なのかは我々が知りうることではありませんが争奪戦となるのでしょうか。稲村は完全に売り出し時ですので、新日に限らず他所での試合でもそのファイトをみせてほしいなと思います。石井とのNEVER戦は期待せずにはいられません。

 同期の稲村が完全に認められている中、オカキンはやや伸び悩んでる印象を受けざるをえません。そんな選手に対してYOSHI-HASHIは逆エビでのフィニッシュをあえてのチョイス。明らかな格下扱いではありましたが、カルマや消灯では何も印象に残らず、YOSHI-HASHIはオカキンに対してこのフィニッシュによって光をしっかり当てたと思います。屈辱的な敗戦ではありますが、本来であればノア内で敵対してる選手がこれに触れて、そこから彼が立ち上がってくストーリーがあってしかるべきとも思っています。とにもかくにも稲村とオカキンの為の試合だった印象です。

第2試合 SHO vs 小峠

 今大会、本戦では唯一のシングル戦ではありますが、色々と苦心の末に組まれたのは明らかです。入場の際のSHOの暗く妖しいオーラが印象的です。逆に小峠はそういう部分とは無縁なのがかえって味になっているような気もしています。

 試合自体は特に言及することはなくSHOが無難に反則して勝利…宮脇が目立って良かったね…ぐらいの内容だったともいます。どちらかと言えばその後の方が気になる部分であり、この小峠の敗戦が線になるか点になるか。第6試合次第だと思っていたのですが、第6試合に小峠がノア勢の救出に来なかったので本大会完結の伏線ではどうやらないようです。つまりSHOだけはなんらかの続きが決まっている、もしくは小峠にこの負けを無かったことにできる何かが今後ある。ということなのだと思います。でもまぁこのシングルやるぐらいならワトvs宮脇を見たかったのが本音です。

第3試合 石森・外道 vs HAYATA・吉岡

 この大会においては当然ながら対抗戦というフィルターを通して試合を見るわけですが、やはり対抗戦ならではのバチバチを求めがちになってしまうんですよね。そうなると過剰なヒールムーブはともすれば冷や水をぶっかけるような行為であり、しかもヒールvsヒールとなると達人同士であったとしても、盛り上げるのには一苦労というのがわかります。

 それでも吉岡の速さ・蹴りの強さはシンプルに魅力的であり、終盤のシザースキックも素晴らしかったですね。逆にHAYATAはそもそもの稼働時間が短く、また感情表現や技がわかりやすいタイプでもないので割を食ってしまった印象です。へデックはそりゃ初見だとわかんないよね。ノアジュニアにおいて長期政権を任されるだけの実力者なのは間違いありませんので、みなさん是非ノアを見ましょう。

第4試合 デスぺ・DOUKI vs 論外・YO-HEY

 論外の曲がワールド非対応なの許せねぇよなぁ!!いや勿論会場では堪能したのですが。DOUKIもすっかり新日ジュニアの一員となっているのはなんだか嬉しいですね。

 第3試合とこの試合に関してはノアジュニアをプレゼンする試合だったのは間違いありません。その中でYO-HEYは何を見せたのかというと、まずは罵倒!でも内容がいい意味ですごくバカっぽい!第3試合のHAYATAとは対照的にそのキャラクター性と素晴らしいドロップキックという明確なアピールポイントはこの試合では間違いなく有利に働いたと思います。

 今の日本ジュニア界でトップであろう存在感を放つデスペに対して、アクションは勿論ですが存在感で真っ向勝負するYO-HEYは勝負師だと感じましたし、結果としても試合には負けてしまいしたが、他団体のファンに発見されるという、レスラーとしては間違いなく勝ちに等しいモノを得られたんじゃないでしょうか。なんというかYO-HEYには地頭のよさ・惹きつける力...?中々形容しにくいのですが、外してはいけないところを外さない嗅覚のようなものが優れているように感じますし、今日出場したノアジュニア勢の中ではYO-HEYはしっかり新日ファンの心に刻まれたと思います。...というか解説の真壁先生が内定出してました!期待!!

第5試合

稲村もう1試合でよかったんじゃね?

第6試合 潮崎・マサ北宮 vs EVIL・ディック東郷

 潮崎は元旦よりコスチュームを変更したのですが、やっぱ内藤よりマント似合ってますね。悔しい。潮崎の試合というと当然ながらその圧倒的迫力のチョップが試合での重要なファクターとなるのですが、この試合のファーストチョップはEVIL。最初に一発基準のチョップを打つことによって、この後の潮崎のチョップを際立たせてますね。途中のEVILのチョップキャンセル含めて、潮崎の魅力をうまく引き出そうとしているEVILが素晴らしいと思いました。

 潮崎の現在のコスチュームは彼の容姿も含めて正統派騎士風な出で立ちなのですが、それに対して用心棒的雰囲気の北宮。主役は間違いなく潮崎の試合ではあるものの、黙ってみているわけにはいかんと言わんばかりの大暴れで乱入してきたSHOと裕二郎を一掃し、さらにはEVILを監獄固めで捕獲する大活躍。北宮の頼もしさと強さもきっちり見せたうえで、最後は潮崎の剛腕ラリアットで締め。

 わかりやすいほどの勧善懲悪かつヒーローショープロレスでしたが、潮崎も北宮も顔を見てるともうノリノリなのがわかります。おそらくですが2人ともこの手のコテコテな試合も結構好きなのでしょう。プロレスの基本といえばその通りですが、スポーツライクなノアだと中々こういう試合は成立せず、HoTという現代では貴重な極悪ユニットがいたからこその試合であり、対抗戦…とは決して言えない試合ではありましたが、その選手を別のフィルターを掛けて見る、という点ではこの試合が一番おもしろかったかもしれません。ベストバウトに挙げる人が多いのも納得です。なによりもノアファンの方がとにかくこの試合楽しんでくれたのが一番のポイントでしょう。

第7試合 丸藤・小川 vs ザック・金丸

 HYSTERICがワールド非対応なのは許せねぇよなぁ!おうちでもヒゥイゴーしたいんじゃ!!というよりG1に出てた時は普通にかかってた記憶があるのですが...なんでや!

 この試合に関してはあまり多くは語れないのですが、ザックのデスロックからのコンボ攻撃が好きです。とにもかくにもザックが終始楽しそうなのが印象的でした。金丸が負けた瞬間に即退場したのは色々とリアリティを感じたのですが、意外にもインスタライブやっちゃうほど上機嫌だったようで...みなさん楽しんでいたようでなにより。

メインイベント1 LIJ vs 金剛

 まずLIJと金剛は似ているのかという話ですが、金剛がLIJを参考にしてるのは内藤の「似ている」発言の通り間違いないと思います。反体制という方向性、それに反するLIJのキャッチーさ。そのままだと単なるパクリになってしまうので、カラーギャング的な要素をより強調し、そこに拳王の信念(真面目さ)を足すことで十分な差別化を図っており、実際にこうして対峙できるほどの個性を持ち得ています。いわばオマージュとオマージュ元の戦いがこの一戦となっています。


 どうにも「対抗戦」というにはやや無理があるマッチアップが続いていた中、拳王の入場テーマである失恋モッシュがかかった瞬間、一気にムードが対抗戦になるのが肌で感じられました。この大会を通してですが、戦前のMVPは拳王なのは疑いの余地がないでしょう。1.1、1.5の両方で全力でアジテーションを行い、少なくともこの試合(とメイン2)は「そういう試合」として見ていいんだとファンに丁寧に伝えていたと思います。この試合の雰囲気も彼が作り上げたモノと言っても過言ではありません。正直に言えば内藤に勝っちゃってよとすら思っていました…内藤の入場までは!

 対するLIJの入場。新日本でのLIJの人気というのは他のチームと比較しても圧倒的なものであり、対戦相手の拳王ですら「日本一人気のあるチーム」とその部分に関しては勝負を避けていましたが、その中でも内藤の入場はモニター越しでもわかるほど明確に拍手の音量が一段上がっています。

(ここから妄言)ファンからしても、強さの象徴としてオカダがいます。困難を一緒に歩いてくれるレスラーは棚橋がいます。混迷の時代を引っ張ってくれた鷹木という選手もいます。でも、それでも、この対抗戦において、新日本ファンの思いや矜持を託せる選手は、新日本であることに最も強烈なプライドを持つ内藤しかありえない。内藤哲也こそ新日本のジョーカー!(妄言終了)

 正直LIJの毎回の個人入場はどうかと思っているのですが、今回に限っては花道で整列するロスインゴと併せて金剛との対比が顕著になっており、試合への期待感を高めていたと思います。強いていうのであれば、金剛はただコーナーで待機するのではなくて、花道に向けてポーズとってほしかったなとは思います。その後もLIJが続々とリング周りに進行していく中、鉄柵手前で内藤が単独でリングに視線を投げて拳王との視殺戦を誘っていたように見えたのですが、拳王がそれに気づいたのかどうか、少なくとも振られてしまった形となってしまいました。

 試合前。開幕を買って出る中嶋に対しいきなりの内藤で会場はヒートアップ。緊張感あるコンタクト…と見せかけてのチームアタックを金剛は選択し、これはチームvsチームであることを強調していたように見えます。そこからレスリング的攻防からのお互いの寝そべりポーズ。内藤を蹴り飛ばしに行くのが常套手段ではありますが、中嶋も団体最高王者なので余裕を見せたい…という初手から難しいシーンだったと思うのですが、そこは戦前からイキリ立っていた拳王がうまくカバーしています。

 アレハvsヒロムのシーン。アレハがすごくいいですね。この試合の金剛側で一番動きが固くなかったのはアレハだったかもしれません。攻防の中で一瞬フリーズしたのはご愛嬌。その後アレハの飛び技のフェイクに対応してヒロムが覇王にけしかけていきますが、しっかり戦前からの因縁を試合に結びつけていくのは流石ヒロムと言うべきであり、彼のプロレスラーとして最も秀でた能力はこの部分であることに異論はないでしょう。

 鷹木vsアレハのシーン。流石に体格的にもアレハの不利さは否めません。鷹木は優位なマッチアップを活かして一気に攻めたてるかと思いきや拳王にちょっかいを出して余裕を見せていきます。シーンごとにイラつきや焦りをしっかり見せる拳王が素晴らしいです。

 BUSHIvsアレハ。アレハの延髄に連動しコーナーに控えていた金剛のメンバーがリングインからの分断攻撃。LIJの定番連携であり、金剛がLLJのいいところをしっかり取り入れているのがわかります。しかしこの分断攻撃を仕掛けるメンバーがメンバーなのでややもっさり気味なのが残念ではありました。

 その後BUSHIが孤立し、金剛側は中嶋がレフェリーを引きつけつつ、覇王仁王も参加するトレインアタックを敢行します。ずっこい!その後、拳王中嶋の蹴りに移行するのですが、その直前にBUSHIのTシャツ破るタダスケがいいですね。この二人の蹴りを受けるのにTシャツなど無粋。...内藤最後まで脱がなかったけど。拳王中嶋という国内キッカー最高峰の2人の蹴りを受け、さらにタダスケアレハのサンドイッチドロキでBUSHIのHPをモリモリ削っていきます。ただその中でもロープワークをチェイシングしてのドロキで見せ場作るBUSHI。その後BUSHIが金剛2人をダブルティヘラでなんとか隙を作りSANADAにチェンジ。

 SANADAvs征矢。普段はそんなことない、というよりそこまでSANADAに思い入れのない私ではありますが、拳王中嶋の2トップ相手にもドロップキックで蹴散らすSANADAには頼もしさを感じてしまいます。個人的にあまり好きではなかったプランチャも、ナラナン氏のレビューを受けてオーバーザトップロープ式のダイビングエルボーと考えるとあり!勝って知ったる中なのか、この2人だけはリープフロッグの場面など一手先の攻防をしていた印象です。この試合唯一のパワー型である征矢がしっかりと重い攻撃をしかけていて試合に緩急をつけようとしているのがわかります。最後もブッコ抜きでしっかりインパクト見せていました。

 拳王vs内藤。最注目の大将同士のマッチアップのシーンとなります。とにかく拳王のテンションが高く内藤をシットダウンさせ即捕獲してのナックルパート。いったん落ち着かせたボルテージとテンポをしっかり上げ直しています。その後バスソー→フットスタンプ→後頭部へのニーで拳王が主導権を握るのですが、内藤はそれを崩すように拳王を捕獲して首攻めからのバックエルボー!二冠王者時代から使用し始めた技であり、あまり評判はよくありませんが、明確な格の差を突き付ける技としてはこれほど優れているものもないでしょう。その後の拳王の張り手連打は内藤の殺人ビンタを誘っていた気がするのですが、内藤はこれには乗らずエルボーで反撃。ここからの一連の攻防は素晴らしいの一言。初対戦とは思えない噛み合い。最後の拳王のオーバーヘッドキックは痺れました。

 中嶋vs内藤。中嶋の蹴りはノア本編と比較するとやや抑え目ながらも、それでもBUSHIとヒロムを歯牙にかけない鋭さを見せていきます。しっかりやられにきた2人もさすがでまさにおもてなしてますね~。内藤すらもその蹴りで追い詰めていく中、再度BUSHIのカットイン、タイミングが絶妙でスピード感を全く損ねていません。

 鷹木vs中嶋。その中嶋の蹴り受けて「いいねぇ!」と余裕を見せる鷹木。IWGPこそ直前で手放したものの、新日ファン側からするとその頼もしさに陰りはありません。キックvsチョップというお客が見たい攻防もしっかり見せつけていきます。しかしながらこの試合はチーム戦。鷹木は無理をしすぎずにチームアタックで主導権を握ろうとしますが中嶋が迎撃していきます。その後の鷹木のラリアットを撃ち抜く中嶋のハイキックはマンガやアニメのワンシーンみたいでめちゃくちゃカッコよかったですね。

 鷹木vsタダスケ。このマッチアップの前半で征矢拳王タダスケの連携があるのですが、拳王か征矢が向きを間違えてましたねwこの試合唯一のミスと言えるシーンです。タダスケは鷹木とも互角のラリアットを撃ち合いますが、鷹木は読み合いでしっかり勝って強さを見せていきます。そこからはフィニッシュ前のスクランブル。アレハとBUSHIもジュニアらしい飛び技を仕掛け互いのチームを分断していきます。

 で、この試合、誰が負けるのかという問題に対して鷹木とタダスケの関係性がピックアップされました。ジュニアvsヘビー、現在の地位、過去の出来事、それらを踏まえて真正面からぶつかるタダスケに観客も全乗っかりのムードができていました。地団駄ラリアットで勝機を見せるタダスケでしたが、最後は鷹木がキッチリ詰め切って勝利。この難しい試合でタダスケも素晴らしい大役を務めました。そして試合後の、ロスインゴのポーズに対して呆然とする拳王のあの表情。素晴らしい。

 全選手おそらく自分たちのお見せできる引き出しの6割ぐらいしか開けていない試合でしたが、それにも関わらずこのクオリティ。いやー、素晴らしい試合でした。LIJも勝ったし大満足なのですが、正直なところ個人同士で言えばLIJと金剛にそこまでの差は感じませんでした。差があると感じたのは選手自身の個であることの意識の差と連携面であり、連携に関しては実況の村田さんがカバーしておりましたが、私自身のひいき目を考慮しても、あらゆるサポートのタイミングやシームレスさは間違いなくLIJが上と感じました。特にBUSHIは全選手の中で最もサポートの回数が多かったと思われますが、全てのタイミングが完璧であり、LIJ側の連携が良かったと感じられたのであれば、その役割は大きかったと思います。

 もう一つ気になったのはLIJ含め新日側は多人数タッグでは交代際や援護の時以外は基本的にコーナーに立たず、ノア側は常に数人立っている...という違いがありました。ノア側の姿勢は試合への入れ込み具合という意味での表現にはなっておりますが、コーナーに立たれるとやや見にくいというのも事実でしょう。もしこういう細かい部分まで新日側が気にしているのであれば驚きです。もしくはコーナーに立った時は、試合中の何かしらの合図だったりもするのでしょうか。気になります。

 チームとしては結果以上の差が見えたように思えましたが、刺激的遭遇であったのは間違いありません。続きがみたい!!

メインイベント2 武藤・清宮 vs 棚橋・オカダ

とりあえずノアTシャツ来てる武藤はズルいですねw自分の席の周りはほぼ新日ファンでしたが、武藤の入場の際だけは「武藤だししゃーねーなー」的な雰囲気で手拍子をしており、新日本における武藤敬司の団体を超えた信頼を感じます。棚橋の入場の時にコーナー譲る武藤ほんと草。

 ところで明らかな猪木オマージュで入ってくるオカダに対して、武藤はどんな思いを抱いているのでしょうか。気にいらないのかな。そもそも気にしてないのかな。ぜひインタビュー等で聞いてみたい内容です。

 さて試合は始まり開幕は清宮vsオカダ。いろいろな意見を目に耳にしましたが、私個人としては序盤のレスリングはお互い時間切れによるドロー、しかし清宮vs棚橋は最終的に棚橋が嫌がったように見えるため清宮優勢で勝利という印象でした。しかし、見直して改めて確認したのですが棚橋は最初の清宮とのコンタクトの時点では武藤を仕切りに見ていました。武藤と清宮のタッチ後、速攻で清宮を離す棚橋…単純に清宮は眼中にないという表現なのでしょうが恐ろしさを感じてしまいました。

 再度オカダvs清宮の場面。清宮のジャンピングショルダー→ギロチンドロップ→エルボードロップ!美しさ、躍動感、そして正確な打撃と技一つ一つの精度が素晴らしいコンビネーションでした。思わずテンションが上がります。その後場外戦へ移行しオカダの「調子乗ってんじゃねぇぞ!」がありましたが、あれはプレイヤーからしたら癇に障る何かがあったのでしょうが、見てる側からするとよくわからん罵倒でしたね。

 武藤vs棚橋。武藤の足4の字のシーンがありましたが、あの拍手コントロールすごかったですね。決まった直後はリングを叩いて、武藤の攻めに対する拍手を誘発、しかしながら試合はここまで終わりじゃない、つまり「棚橋がんばれ!」という拍手が必要なのでそれをポーズして止めさせて、その後棚橋を応援する拍手に切り替えさせる。思わずすげぇ...とつぶやいてしまいました。

  最終的にこの試合は清宮vs岡田の構図となるのですが、まず清宮のエルボーがカテェ!しかしオカダのエルボーがさらにカテェ!!特にオカダのこの打撃の強さは明らかに通常の「オカダの試合」の範疇を超えており、清宮を明確に叩き潰す意思が見えました。その後清宮のタイガースープレックスをオカダがこらえたところに棚橋がスリングブレイドでインターセプト、そこからのフォースダウンは見事にクライマックスを表現。先ほどのエルボーと同じく、オカダの優しくないツームストンパイルドライバーがとても印象的です。

 結果としてはその後のレインメーカーによって清宮が爆散という形になるのですが、その直前の武藤の「勝負だ清宮!」の檄はとても良かったですね。戦前は散々武藤が全てをかっさらっていくと選手もファンも予想していたわけですが、ふたを開けてみればこの献身ぶり。試合後の棚橋と武藤はもはや授業参観きたおじいちゃんとお父さん。泣いた清宮に対して、涙すら枯れて出てこないと言える武藤が酸いも甘いも吸い尽くした、まさに歴戦の強者の風格でとてもカッコよかったです。

 試合後、オカダは相当厳しい態度で清宮に接していましたが、これは完全に清宮に「言わせられた」、つまり強がりでしょう。ヒカルの碁の緒方vsアキラのアレと一緒です。各自調べてください。名作です。はっきり言って単純な動きならオカダはやや清宮に負けてたと思いますし、なにより清宮と同世代の日本人の新日の選手で、清宮に並ぶ選手は現状では少なくともいません(海外を含めるとジェイがいますが)。これは明確な新日本の育成システムの敗北といわざるをえず、新日本のトップ選手であるオカダがそれを受け入れるわけにはいきません。個人と団体、この2つの敗北感が、ここまで厳しいコメントをさせたのだと解釈しています。

 全体として清宮という新たなスターを全力でプロデュースした試合でした。特に前述の通り、武藤が完全にアシストに回っていたのはファンからしても相当意外でありました。将来的に武藤は清宮に負ける役割であるのはもう間違いないのですが、その時までに清宮をもっともっと凄い・格の高い選手にして、自分の負けの価値を上げたいのでしょうか。そして一番若い清宮というレスラーに己の存在を刻み込み、プロレス界に自分のDNAを残したかったりするのでしょうか。そんなことを考えてしまいます。

 そして清宮の涙。はっきり言うと泣くような試合じゃなかったと思います。3人が清宮を立てていたとはいえそれでもダントツのクオリティでした。それでも勝ちを貰えない悔しさで泣いたのか、はたまたここで泣いといた方が後世に残るという「あざとい」判断なのか。少なくとも泣くことによってオカダのリング上での怒りを引き出したことは間違いありません。真相は本人のみぞ知り、結果は彼のより一層の成長が示すことになるのでしょう。

総括

 総括の前に、少し前からその傾向はありましたが、入場Vのクオリティがめちゃんこ高くなっています。特にノアは2020年8月の初観戦の時に、試合云々の前にまず思ったのが入場Vのチープさだったのですが、ほとんど改善されたと思います。杉浦&桜庭のがシンプルだけど抜群に良かったですね。

 色々な意見があるとは思いますが、第0-①、第1試合、メインイベント2つは対抗戦と言えたと思います。しかしながら、「負けた側が損をする」という試合でもなかったことも事実です。かつて「対抗戦に負けた団体の試合なんて誰が見にいくんだよ」という名言(?)があったようですが、少なくとも今大会はお互いの団体に見に行くきっかけとなったり、新たに好きな選手を発見できたりと、まるきり逆な場であったと思います。

 逆に言えば、何かを得た選手同士に於いては差はあったはずであり、±ではなく、+同士の差はそのままレスラーの評価につながったのではないでしょうか。もちろん試合やマッチメイクの都合で割を食ってしまった選手もいたとは思いますが。試合後に少し会場の皆さんとお話しさせて頂いたのですが、その際レンブラントさんがおっしゃっていた「対バン」とか「フェス」というのが本当に適切な表現だと思います。

 なかなか対抗戦というフォーマット自体に無理があるこの時代で、両団体が己の団体の利益を勘定に入れながら必死に考えた結果が、業界的に新たなスター2人(清宮、稲村)を作り上げるということなのであれば、そう悪い話ではないと思います。新日としても自分達のファンに対してノアを実質的にプレゼンしたことになりますが、リスクはもちろんあったと思います。では何故今回この対抗戦に踏み切ったのかと言えば、プロレス界全体の市場規模を大きくするためというのが私の見解です。新日に続く2、3の団体が活発になることで単純にプロレス界全体の露出が増える。ファンを拡大するチャンスが増える。多少のリスクを背負ってもそれが後々自分達の利益になると考えたのではないでしょうか。

 新日は昨年での発表通りであれば今年はドリームマッチ路線を継続するようで、つまりはノア以外との他団体とも交流戦ないし対抗戦を行う予定があるということなのでしょう。特に今回高みの見物されておりました全日は、お互い創立50周年なわけですからやらないわけがありません。なんなら全日本との歴史上、ノアとも確実に何らかのアクションがあると思います。そんな中で初回ともいえるこの大会が、なんだかんだ大変盛り上がったとなると後続団体のプレッシャーたるや。新日という物差しで他団体同士が比べられると言っても過言ではないかもしれません。

そして生まれた各種因縁はやはり点にしてしまうのはとても勿体無いと思います。特に新日の選手はあの新日至上主義者の内藤が、他団体に興味を持ちだすという異常事態とも言えるレベルであり、新日本ファンだけでなく、選手自身も現在のカードのマンネリや新鮮味のなさに相当危機感を抱いてるのかもしれません。長く鎖国時代だったというタメもありのですから。ぜひ、点ではなく線にしていただきたいと思います。

 実験的にやってみましたがいかがでしょうか。かなりの長文となりましたが、最後までお読みいただければ幸いです。御気に入って頂けますれば、#さなクロV でコメントや各種宣伝ツイートもRTやいいねをぜひお願いしたく思います。俺の自己顕示欲を満たしてくれ。以上、ありがとうございました。




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