番外:VITURE One 導入

前回の投稿で、VRゴーグルとARグラスの動画視聴環境の違いを書くにあたり、Quest3で使っている動画視聴アプリの設定に触れましたが、文章の構成上、ARグラスのそれに関しては触れる必要がなかったため、触れませんでした。ですが、その状態だと、まるでVITURE Oneのアプリには非の打ち所がないように読めてしまっていたかもしれません。実際は、全く持って不充分だと思います。アプリの設定以前の問題という感じで、こういったものに疎い人だと、せっかく購入したARグラスを活かせない可能性もあります。(ただし、基本的な拙さは問題ですが、設定さえできれば、使用には問題ないとも言えます。)今回の投稿では、VRゴーグルとARグラスの比較ではなく、ARグラスのみの話になりますが、VITURE Oneを使い始めるに際して、何をしたか、記憶を辿って記しておきます。

まず、VITURE Oneの本体であるXRグラスは、単なるモニターと言えます。アプリなどの環境の話は、ネックバンドの話になります。つまり、スマホやPCを繋いで使うという人には関係ありません。ちなみに、グラス本体との接続インターフェイスは、USB Type-Cですが、DisplayPort Alt.モードでの接続です。つまり、データのやり取りではなく、画面入出力用です。(データ通信も、しているかもしれませんが、知りません。)PCとの接続は試したましたが、手持ちのスマホはDP Alt.モード非対応で、持ち歩き用デバイスとして、対応のスマホを購入するか、ネックバンドかで考え、ネックバンドを購入しました。DP Alt.モード出力対応のスマホは、それなりに高価なものばかりですし、ネックバンドは組み合わせて使う事を前提に作られているので、便利そうです。首に掛けられますし、物理ボタンによる操作で使う仕様になっていますから、眼の前の画面を見ながら操作できます。
余談ですが、YouTubeのレビュー動画を見ると、充電ケースが紹介されているものが多いです。開封動画では、ネックバンドは充電ケースと一緒に梱包されているようでした。実際には、ネックバンドを購入しても充電ケースはありません。箱が小さくて不思議に思っていましたが、別売でした。そして別売の充電ケースは、日本語サイトでは売っていません。レビュー動画は、クラウドファンディング実施中とかにインフルエンサーに渡したサンプル品なのでしょうけど、製品版の情報少なすぎで不親切じゃね?

さて、そのネックバンドのOSはAndroidです。Quest3のOSも元々はAndroidのようですが、かなり作り込まれた専用OSで、最近になって、それを他社に開放する事になったそうで話題になっています。つまり、この作り込まれたOSは、製品の価値に大きく関わっているという事なのでしょう。そのOSが、VITURE One ネックバンドの場合は、スマホやタブレット用のOSであるAndroidそのままなのです。もちろん、タッチパネルではないので、その機能は削ったり、カスタマイズはされているでしょうけど、手抜き感は否めません。

具体的な話。
最初、起動して驚きました。アプリが少ない。そしてアプリストアが無い。動画視聴用デバイスとして割り切っているのか? Blu-rayプレイヤーのような専用機器として作られたものなのか? 自分が期待していたものと全く違うものだったのか? 焦りました。とはいえ、せっかく購入したのに使わないのでは勿体ないので使い始めます。YouTube。ログインできません。まじかー。設定を見て、関係ありそうなところをいじってみますが、やはりログインできません。まじかー。たいしたことは書かれていたなかったと思うものの、一応、同梱の説明書を読みますが、やはり関係ありそうな事は何も書かれていません。まじかー。仕方ない。ネットで調べます。「VITURE One YouTube ログインできない」とか、そんな感じで検索して、それっぽいところ見ますが、見当たりません。まじかー。よく見ると、記事が途中までの表示らしい。「もっと見る」をクリック。書かれてました。まじか! 説明動画もありますね。日本語は字幕だけの英語の動画が。不親切すぎじゃね? ちなみに、具体的な対処方法は、少なくとも私では、それっぽい設定をいじってみて何とかなるものではありませんでした。

ちなみに、この件とは関係ありませんが、説明書的なものはネット上にありました。

なんとか、YouTubeでログインできるようになり、同時にPlayストアを使えるようになりました。普段YouTubeアプリを使っていない私としては、使い勝手が悪いので、ブラウザも試しましたが、普段使っているBraveはインストールできませんでした。ブラウザ自体は少しだけ使えるものがありました。マウス操作の代わりはヘッドコントロールモードが比較的使い易そうです。これで調べ事くらいはスマホでなく、こいつで、というほど便利ではありません。

最初に投稿した記事に、手持ちの動画データを宅内ネットワーク越しに視聴、と書きましたが、それに関して記す前に、その最初の投稿に書いた事、少し訂正。有料の動画配信サービスは今のところ使っていない、と書いたのですが、それはネトフリとかアマプラとかの事で、ちょっと毛色の違うサービスをひとつ利用してる事を忘れてました。テレ東bizです。これは、アプリもインストールできて使い勝手も良く、毎日利用しています。何故か若い頃からテレ東の経済ニュースが大好きで、これは嬉しい誤算でした。

話を戻して、動画データの視聴ですが、最初はネットワーク越しでなく、ローカル再生を試しました。まずは、USBストレージから。残念ながら、USB Type-CのUSBメモリを持っていません。USB外付SSDを使います。たぶん駄目です。容量4TB、フォーマットがexFATなので。駄目でした。たしか、AndroidのexFAT対応は正式には13からだった気がしますが、ネックバンドのOSはAndroid11のようです。駄目なはずです。
という事で、ネックバンドの内蔵ストレージにデータをコピーしてみます。データ転送の際にはUSB接続します。これは画面出力のUSBではありません。充電用ポートのUSBです。画面入出力は実質的には高速な通信が発生しているはずです。が、充電用ポートはUSB2.0です。最大480Mbpsって事ですね。えー。PC側のポートは最大40Gbps(USB2.0の80倍以上)のUSB4を使っていますから、当然、そちらが足を引っ張ることはありません。でも、実際には480Mbpsすら出ません。便利じゃないです。遅いです。ただ、不思議な事がありました。4GB以上のファイルをコピーできました。再生もできました。exFAT非対応なら、フォーマットとしてはFAT32を使っていると思っていたのですが、FAT32ならば、1ファイルの容量上限が4GBだったはずです。どう対処しているのかは知りません。
ともかく、内蔵ストレージからの再生は問題ありませんでした。強いて言えば、想定以上に新しい時代のプロセッサを積んでいるようで、データの古さが問題になるかもしれません。これは内蔵ストレージに限った話ではありません。後述します。
ここまでの動画データ再生には、標準搭載アプリ(3D Player)を使いました。前述の使用ガイドによれば、ファイラー機能も持っているようなので試しましたが、ネットワーク共有機能やDLNAクライアント機能は無さそうです。

やっと、ネットワーク越し動画視聴の話。
私自身は、特に悩む事もなく環境構築できました。Androidタブレットで以前から使っていたアプリが、ネックバンドにもインストールできたので。別のアプリを使いたい人には難題が待ち受けているかもしれません。
私が使っているアプリは、FileManager+とMX Playerです。かつては別のアプリを使っていたこともありますが、5年以上というか10年以上かも、この組み合わせを使っていると思います。その環境をそのまま導入できました。ちなみに、再生アプリであるMX Playerにもファイラー機能はありますが、広告表示がウザいので再生にしか使っていません。FileManager+でデータを選択して、MX Playerに再生させる感じです。ネットワークはSMBファイル共有を使っています。要はWindowsファイル共有です。DLNAは使っていません。DLNAライブラリはパスワード無しでアクセスできますが、SMBはパスワードを必要とする設定が可能なので、紳士向け動画データを共有設定にする場合も、家人の白い眼を気にせず済みます。
外出時、時間つぶしに使えるようにデータを持ち出すという事は想定していますが、前述のUSB2.0接続によるコピーよりも、FileManager+を使ったコピーのほうが無線で手軽なのと、若干速いように思います。ちなみに、Wi-Fi5です。この、FileManager+を使えた事で、USB2.0接続がほぼ不要です。

あと、標準搭載アプリのファイラー機能ではネットワークアクセスができないと書きましたが、ネットワーク越し再生もできませんでした。すなわち、FileManager+で選択したネットワーク越しデータを渡す先を、MX Playerでなく標準アプリにすると、再生できませんでした。標準アプリには3D動画再生機能があるので、これが残念と感じる方がいるかもしれません。問題ないです。
VITURE One XRグラスには2Dモードと3Dモードがあって、切り替えられます。実際の仕組みは単純なようです。右眼用ディスプレイと左眼用ディスプレイが、それぞれFHD(1920x1080)で搭載されていますが、2Dモードでは、1920x1080のディスプレイ1枚という認識になり、右眼と左眼に同じ画面を映していると思われます。そして、3Dモードにすると、3840x1080のディスプレイが1枚だと認識されます。例えば、2560x720のSBS(サイドバイサイド=右半分に右眼用1280x720画面、左半分に左眼用1280x720画面を配置した状態)のデータを全画面再生すると、3840x1080に拡大されて、3Dモードにしたときに、ちょうど立体視できる状態で再生されます。もちろん、3840x1080ならば拡大縮小無しで、7680x2160ならば縮小されて再生されます(全画面再生の場合)。ですから、再生アプリはMX Playerでも問題ありません。
残念なのは、むしろ標準アプリの機能です。2Dモードと3Dモードの切り替えは、ネックバンドの機能ではなく、グラス本体の機能ですが、標準アプリは、この切り替えの命令をグラス側に送れるというメリットしか無いと思います。そして、その切り替わりに時間がかかり、ブチッという感じの嫌な信号切断のような画面の乱れを伴います。ですから、自身でグラス本体のボタンをひとつ長押しして切り替えるのとどちらが良いのか微妙なくらいです。
例えば、1280x960が2枚くっついた2560x960のSBSデータを再生する場合(画面が16:9なのに対して4:3の動画)に、右眼用と左眼用を分けて、それぞれ1440x1080に拡大し、それぞれの左右に240x1080の黒画面を追加して1920x1080にした上で、右眼用と左眼用をくっつけて、3840x1080にしたけど縦横比は正しい状態、で再生できるのであれば、そのアプリに3Dモードを任せたいところですが、標準アプリにそういった機能がありません。3D動画は16:9でなければ正常に視聴できません。何のための標準か? おそらく前述のモード切替をグラス本体に命令できるだけでしょう、という訳です。

ネックバンドを接続した時点で、グラス本体は3Dモードに設定し、全ての画面表示を3840x1080で制御する、そういったOSを用意して欲しかった。というか、今後のアップデートに期待したいです。もしかしたら、電力消費量が増えるなどの問題があるかもしれませんけど。

アプリを含めた再生環境の設定の話はこれくらいです。備忘録として記しておくべき事が、もっとあったかもしれませんが、既に忘れているかも。何か重要な話を思い出したら、また書きます。

2024年6月23日追記
標準アプリ(3Dプレーヤー)のネットワークアクセスに関して。何か環境が変わったのか、私自身が勘違いしていたのか、アクセスは可能でした。ただし、ファイル選択ができないので、PCからローカルへコピーなどは(標準アプリでは)できません。ネットワーク越しの動画再生はできました。ただし、再生能力が意味不明なほど著しく落ちます。FHDの2Dは再生できるけど、FHDの3D(情報量2倍)だと、データ形式によって再生できるものもある、くらい。情報量4倍の4K(2D)も、同様。1280x720の3Dならば、データ形式を選ばず再生できそうですが、標準アプリお得意の3Dモードへの変更は効きませんでした。
競合となるであろう XREAL BEAM PRO が、完成度は不明ながら、機能的な進化が大きかっただけに、魅力で劣りすぎな気がします。完成度だけでも、できれば機能も、アップデートして欲しいものです。
(2024年6月23日追記 ここまで)

最後に、途中に書いた、プロセッサ新しすぎ問題について。
動画データの中には、映像データと音声データ、場合によっては複数の音声データ、字幕データなど、いろいろなデータが内包されていますが、その中の映像データは、容量がズ抜けて大きくなりがちです。これはストレージ容量や、データ転送速度などに影響を及ぼすので、頑張ってデータを圧縮します。この頑張りがどんどん進化しているので、圧縮するのにも、圧縮されたデータを開く(再生する)のにも、かなりの演算が必要になります。メインのプロセッサ(CPU)にそれを任せると負担が大きく偏るので、最近のプロセッサでは、映像データを開く専門職人(回路)を携えています。ですが、圧縮技術は頑張って進化しているので、専門職人(回路)もどんどん時代遅れになります。ですから新技術を身につけている専門職人(回路)を携えたプロセッサが必要になります。私は、プロセッサに必要なのが「性能」ではなく「新しさ」になりつつある、と感じています。ちなみに、動画以外の専門職人(回路)も携える時代になりつつあるので、この傾向は強まっていくと思います。
さて、映像圧縮の進化ですが、Blu-rayはH.264というものが使われています。その次はH.265です。そして、これらが高画質を重視しているのに対して、ネットストリーミングなど、より小さくしつつ、それでいて画質をなんとかキープすることに重きを置いたのが、YouTubeで使われているVP9や、その次のAV1と言えるでしょう(私はそう思っています)。H.265を扱える専門職人(回路)は既にたくさん存在しますが、H.265はライセンス問題が嫌われています。ですから、次世代はAV1が主流になると予測する人も多いようですが、このAV1を扱える専門職人(回路)は、今はまだ少ないです。
VRゴーグルやARグラスでは、タブレットやスマホ用のプロセッサをベースに、カスタマイズしたプロセッサが使われる事が主流のようですが、そういったプロセッサ、更にはPCのプロセッサまで含め、こういった共通の傾向があります。
そして、VITURE One ネックバンドのプロセッサ(型番は、非公開なのか調べられませんでした)は、H.265はもちろん、AV1をも扱える専門職人(回路)を携えたプロセッサのようです。それだけならば良いのですが、どうやら、H.264とVP9が切り捨てられているようです。つまり、それらをCPUに押し付けているように思われます。
前述の使用ガイドにも仕様が書かれていましたが、実際にいろいろなデータの再生を試しました。仕様と若干ズレている部分もありました。私の検証結果をざっくり書いておくと、以下の通りです。
 ・H.265は7680x2160の60fpsで問題なく8192x4096の60fpsは駄目
 ・AV1は3840x2160までしか試していないが60fpsで問題なし
これに対して、
 ・H.264は3840x1080で50fpsは問題なく60fpsだと再生遅れ
 ・H.264の3840x2160は30fpsでも再生遅れ
 ・VP9は4320x2160の60fpsしか試していないが音声しか再生されず
既存の手持ちデータはH.264が中心なので、FHDのSBS(3840x1080)が50fpsまでしか対応できず、4K(3840x2160)においては30fpsでも駄目となると、それが問題という訳です。

今回は、少し技術的な話も含んだ投稿になりました。うまく説明できず、伝えられてない気もしますが、ひとまず、ここまでです。

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