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幾何学模様の向う側

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2020年6月の記事一覧

レクイエム.

 まぁ、地に足が着かないっていうのは落ち着かない事他ならない。  私が死んでからかれこれ五年は経ったけど未だに慣れない、たまに地面に足を着けて歩く振りをしてる。見た目はそれっぽくなったけれども重力を感じないってのは困りものだ。  死んですぐ出会った街角のおじさんは、まず足を透明にしろって言っていた。幽霊の礼儀だと。一理あるしああいう人が居るから日本の幽霊は足無しスタイルが一般的なのかな。それともやる事がなくなって、新人にそう言う事を伝えるのが生き甲斐になっているのかも。  今

レクイエム

 峠を越えると何だって楽になる。嵐も痛みも苦しみも後悔も。  じゃあそのてっぺんを決めるのは誰なんだろうか。誰ももう少しで終わるよなんて教えてくれない。最中にいる間はただただ痛みを受け続ける事になる。死は峠を越えたというのだろうか。登り坂の後は下り坂だと相場は決っているが、崖になっている事もあるし、穴に落ちる事もある。線が途絶える。  なんにせよ、死んだら終わり。苦しみや痛みからの解放だ。良い事なんだろう。  煙草に火をつけて石の上に置く。私は同じ煙草に火をつけて深呼吸した