『ART-ART』 創刊に寄せて

 アートとは何か。
 「アート」は通常「芸術」と訳される。原義を遡れば、ラテン語のArsに由来し、「技術、技芸、人間の手が加わったもの」などを意味していた。
私は思う。人が何かを表現するという試みは全てアートなのではないかと。
 個人あるいは集団が自己を何かしらの方法で他者へ表現する。他者とは人間であるべきだろうか。否。他者とは私たちを取り巻く世界そのものでもいい。自己表現は必ずしも他人の目に触れる必要はない。世界に対するアートは祈りにも似ている。
 「ART」。この言葉は複数形になると「人文学」を指し示す。たとえば、人文学系の学科を卒業するとBachelor of Artsという学位を授与される。俗にいう「理系」の学問、すなわち自然(Nature)を対象とする自然科学に対し、人間が作り出したもの、つまり人間の所産・営為を研究対象とする学問、それが「人文学」なのだ。言い換えれば、「人文学」とは人間の自己表現の積み重ねを研究する学問なのである。
 ART-ARTのメンバーは皆、人文学の徒である。それぞれの関心の向きは異なるが、だからこそ、違った視点をそれぞれの創作物を通して提示することができるはずである。
 アートとアートが交わる場所、自己表現同士の結節点、そんな意味合いをART-ARTという名前には込めた。そこでは新たな視点が生まれ、新たな知が獲得されると我々は信じる。我々はアーツに身を置くと同時にアートへ身を投じる者でありたい。ART-ARTは表現者たらんとする我々の最初の試みである。

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