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レンタルスペースを事業譲渡で売った話

金持ちです。

漫画を描きながらフォトスタジオやレンタルスペースを複数店運営しています。
今回は、1年以上運営していたレンタルスペースをM&A(事業譲渡)で売却した際の話です。この1年、レンタルスペースの事業譲渡の話題をチラホラ見受けているので、売却や購入を考えている人の参考になればと考え執筆しました。
実在する買い手様への配慮として、情報は多少ぼかして記載します。


事業譲渡の成果

・登録から成約までの期間:およそ1か月で完了
・交渉数:29件
・売却額:120万円以上

事業譲渡の流れ

①オーナーと管理会社への許可を取る。

大前提です。
自分は「借りている物件でレンタルスペースの運営はそのままに、運営する人を変更したい、つまり事業譲渡を行いたいが可能か?」と管理会社を通じてオーナーに確認を取りました。
この時、賃貸契約の名義変更で家賃1カ月分の費用が発生しました。これはオーナーや管理会社によるでしょう。私はこの費用は買主負担にしています。

②利用するサービスを選択する。

私はM&Aマッチングサイトを利用しました。下記の記事の様に数多く存在するので、自分に合うサービスを選ぶと良いと思います。

サイトを利用して良かったのは、多くの方に案件を見てもらえ無事希望通りの価格で売却が出来たことです。合計で5000件以上のビューがありました。

③事業情報を登録する

利用するサイトを決めたら、事業の情報を登録します。
自分は下記の情報を記載しました。匿名性を維持しつつ、レンタルスペースの運営に興味のある方がなるべくイメージをしやすい、かつ要点をまとめることを意識しました。

・譲渡希望額:価格相場と利用しているサイトでの他案件の成約金額を調べて決定する。
・譲渡対象:何を譲渡するのかを記載。運営権、家具什器、賃貸契約など。
・過去の収益:対面交渉の際に提示するので包み隠さず、だがザックリと。
・開業費用:同上。
・顧客層:誰がどの様な用途でこのスペースを使用するのか説明。
・事業の強み:レンタルスペース運営の強みと自分のスペース独自の強み。

上記の情報で、買い手に「この案件ではこんなメリットがありますよ」とアピールしました。

・レンタルスペース運営の魅力(人件費小)
・対象のスペースは安定した収益を上げている(安定収益)
・事業譲渡により、既存顧客とスペースの評価を引き継げる(低リスク)
・自分で開業するよりもお金と時間がかからない(低コスト)

登録する情報を吟味し、情報公開。いよいよ交渉スタートです。後の流れは簡単に記載します。

④ネット上での交渉

匿名交渉:買い手、売り手共に匿名での交渉。自身の情報やスペースの詳細などは知らせずに匿名性を維持して伝えられる範囲で交渉を行います。より深い情報のやりとりは次の「実名交渉」になります。

実名交渉:お互いの情報を公開しての交渉。買い手の個人名、法人名、役職などが開示されます。売り手はスペースのURLや売上台帳などの細かい情報を公開できるようになります。

⑤対面での交渉、内見

当然のことですが、殆どの買い手が内見を希望します。内見の際に対面で資料を交えて説明や交渉を行うと良いでしょう。買い手はそれらを持ち帰り、検討します。

⑥事業譲渡契約の締結

買い手から購入の意思が伝えられ、売り手が承諾すれば事業譲渡契約の締結。

⑦移行対応

最後のスキームです。ここがなかなか面倒。このタスクは管理シートを作成して双方で共有していました。

・賃貸契約の名義変更
・電気水道ガスネットの名義変更
・利用サイトの譲渡や新規開設
・運営マニュアルの作成と譲渡、作業補助


発生した問題や苦労

①文章を読まない人間がいる

案件情報のトップに
"交渉の最初に「買収希望時期」「買収希望金額」を提示してください。"
この文章を記載しておくと良かったです。

こちらが定めた書式を守らず、「興味があります!スペースのURLを教えてください!」という人からの匿名交渉のメッセージが多々来ました。

こういう文章をちゃんと読まない人とは後の交渉も上手くいかないので、ふるいにかけることできます。逆にこちらの定めた書式を守ったメッセージを送る人とは交渉はドンドン進んでいきました。

そもそも、譲渡案件の詳細な情報(URLや売上実績など)は「実名交渉」でしかできない、というのがマッチングサイトのルールで定義されています。ルールを破る、読まない人と契約は恐ろしくて結べません。

まず買い手に「買収希望時期」「買収希望金額」を記載させる。コレは本当にオススメです。

②問い合わせの数がそもそも多い

29件の交渉メッセージが来て、実際に内見と対面の交渉まで進んだのは10人前後。これだけの数を並行してメールのやりとりは非常に疲れます。

これは「レンタルスペース運営」の興味が多いことと、当初提示した売却金額が安かったことが原因だと思います。

【余談】安く売りだしてはいけない

当初、売却金額を80万円で売り出していました。あまりにもメッセージが多く来すぎたので、100万円に上げると問合せは減少。失礼だが、買い手の質も上がりました。安かろう悪かろうです。

譲渡価格の算出方法はなかなか複雑なので、ざっくりと言うと
営業利益×2~5年分
が相場らしい。

自分のスペースは営業利益が約80万円だったので、相場的にはかなり安く売ってしまいました。150万円ほどでも良かったかもしれませんが、早期売却を希望していたので仕方がありません。

また、売却額の変更は記録として残ります。高い⇒安いへの変更は簡単ですが、安い⇒高いへの変更は買い手に良い印象を与えません。
多少高めに設定して、交渉が上手く進まないなら値下げをする。それ位の姿勢が良いと思います。

④資料の作成が大変

内見を行い、対面で交渉する買い手向けに自分は下記の資料を作成しました。
過去の売上台帳:過去すべての売上と経費を記載した資料
事業譲渡資料:物件情報や売上、経費、スペース運営のメリット、デメリットを記載した資料
運営マニュアル:成約した際に渡す。スムーズな運営移行のために作成。

この資料作成が結構大変で3日~4日がかりで作成しました。ただし、後述の通り、資料を丁寧に作っていたことが成約に繋がったのだと思います。


事業譲渡のメリット

とにもかくにも売れたこと。
閉店すれば0円。家具の処分などでマイナスだったかもしれませんが、前述の通り120万円以上で売れました。開業の際の初期費用もまるまる回収。
閉店する位なら売ってしまえ。そう思います。

事業譲渡のデメリット

時間と手間がかかること。
良い買い手と出会うためには仕方がないことですが、結構大変でした。多忙な人や早期売却希望の人には結構な負担になると思います。
譲渡後もバタバタするので、良い条件で譲渡したいなら早めに動いた方が良いでしょう。

事業譲渡の際にやっていて良かったこと

①スムーズな交渉の為に下記の文章を掲載

買い手様は交渉の際に下記の情報をご記入ください
・買収希望理由:
・買収希望時期:
・買収希望金額:

おかしな買い手を除外でき、交渉もスムーズにスタートします。

スペースの売上台帳を日々記録する

買い手に提示する最も大切な資料です。売上が不明瞭だと買い手もこの事業を買って良いのか悩みます。人を納得させるだけの数字を出しましょう。
下記の画像は自分が使用している売上台帳です。売上に加えて利用用途や人数、利用時間、申し込まれた経緯を記録しています。

月次の売上台帳
稼働率や利用人数の総計、予約サイトを集計しています

事業譲渡用資料の作成

対面での交渉の際に使用します。売却するスペースの情報や運営の方法、メリット、デメリットなどを細かく、かつ明確に記載しています。

私は「売り手」の前に「買い手」として交渉を何度か経験し、事業を購入しています。その際に感じたことは、丁寧な資料を作成している売り手への安心感でした。

しっかりと原状と今後を分析された資料は売り手の誠意を感じさせます。反面、資料もろくに準備していない売り手には不安を感じました。
資料作成は面倒かもしれませんが、良い成約に繋がります。
今回、資料をお渡しした買い手からは「しっかり説明されて安心した」「資料があって助かる」との言葉をいただきました。
多少は面倒かもしれませんが、私はこうして80万円で売り出したスペースが120万円以上で売ることができました。

総括

以上が、M&Aマッチングサイトを利用した事業譲渡の話になります。記事をまとめると…

閉店(廃業)するなら売れ!
売り手は資料をしっかり作ろう!!
事業譲渡って結構面倒くさい!!!
でも儲かる!!!!

です。
なかなか大変ですが、閉店するよりよっぽど良いです。売却金額で新しいスペースや別の事業の初期費用に回していきましょう!


【余談】事業譲渡で事前にやっておけばよかったこと

最初から将来的に事業譲渡を計画してスペースの立ち上げを行うなら、スペマやインスタベースは別アカウントを作成して、そこにスペースを登録しておくべきでした。

例えば、A店・B店・C店と複数の店舗を売り手の自分のアカウントで管理しているとします。

この中のA店だけを譲渡する場合、「A店だけのページを買い手にそのまま渡す」ということが出来ません。
①BとCを削除し、アカウントを買い手に譲渡する か
②買い手が新規にページを作成する

となります。

このどちらも問題があります。
①は自分がBとCのページを新規作成するので、これまでのレビューやトップホストなどの実績が消える。
②は買い手に事業を買うメリットが薄くなる。

どちらも痛いですよね。レビューの実績は本当に大事です。
自分も同じ失敗があって、
「ポータルサイトのアカウントは譲れない」
「それならこの金額で買えない」
というやりとりがありました。どうにか上手い落としどころを見つけて、希望額で売却できましたが、もし将来的に譲渡する計画があるなら、「譲渡用」の別アカを作っておくといいかもしれません。

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