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モリゼミ オープンレクチャーvol.4 サン・セバスチャン

秘密組織?「美食倶楽部」

今回のモリゼミは、メンター渾身のサン・セバスチャン。スペインのバスク地方にある街。バスクと言って思い浮かぶのは、日本語と似てるとも言われるバスク語と独立運動、それと、子供のころテレビで見た力自慢大会、最近だとバスクチーズケーキ位しか知らなかった。サン・セバスチャン、かつてはスペイン王妃の保養地をきっかけに様々な産業が栄えるも、近代化により徐々に衰退、しかも、独特の言語・文化を抱え、それに関連する戦争やテロを経験してくるなど様々な課題を抱える小さな地域。

一方で、サン・セバスチャンは、近年、世界的な美食の街として注目され続けている。なぜ、美食なのか?
その下地として存在するのが、誕生100年を超え、地域に100団体以上もあるというる基本女子禁制の”美食倶楽部
家庭の厨房に立てないおっちゃん、お兄ちゃんが集まって、あーでもない。こーしてみたら。と、料理を作りながら語り合うそうだ。

料理愛・地元愛

そんなサンセバスチャンでは、1975年、フランス発の料理の革命「ヌーベル・キュイジーヌ」に感化された料理人たちが「ヌエバ・コッシーナ」を興し、これまで閉鎖的で秘密主義だった料理界で、自分たちが開発したレシピを共有し、地域全体で食文化を作り上げていった。今で言う、オープンデータ化だ。情報が流れ出るところに情報は集まり、進化が加速する。やがて、バスク人料理人たちはマスコミにも取り上げられ、さらに進化は加速する。レストランに料理ラボができ、料理学校が作られ、国際料理学会まで設立された。当然、地域全体のレストランの質が向上し、美食の街として確固とした地位が築かれた。

「私のレストランだけが繁盛し続けるのは難しい。しかし、サンセバスチャン全体のレストランの質が上がり、繁盛し、お客さんを分け合えば、いいだけだ。」サン・セバスチャン料理界の旗手、ルイス・イリサールの言葉だ。実に地元愛にあふれた言葉ではないか。

そして、これまで市民や料理人たちが自然と盛り上げてきた動きに、行政が加わる。市の観光局が美食文化(ガストノミー)に着目し、官民が連携する観光戦略が打ち出されことになった。ただし、闇雲に観光ビジネスを拡大するのではなく、地域文化の持つ時間やものの価値を大切にする質の高い観光を目指すものだ。その具体的な対応策として、食に対する経営や科学が学べ、料理人を応援する人や支える人を輩出する バスク・クリナリー・センター(Basque Culinary Center )(財団と大学の中間的な組織)まで作り出した。

そして、2016年には、欧州全体に文化を広げるため、1年間にわたり集中的に文化イベントを開催する欧州文化首都に選定され、このことが更にサン・セバスチャンの美食文化を世界に知らしめることになった。

サン・セバスチャンは里山資本主義なのか

ここまで、通してサン・セバスチャンの成功には、いくつかのポイントが見えてきた。それは、「危機感に裏打ちされているか」、「地域で「自分ごと化」されているか」、「関係者との連携がとれているか」であり、キーワード化すると独特な文化を持つ地域の衰退への「危機感」、自らが楽しみ、極める道を進むことで地域の課題をも発展的に解消させる「自分ごと化」、そして、民間発の盛り上がりに官が加わり力強く拡大・加速させる「官民連携」だ。
実は、この話は、里山資本主義でも有名な藻谷浩介氏が監修した「進化する里山資本主義」で地方創生の要点として元横須賀市長の吉田雄人氏が執筆したもの。

地域を愛し、地域にあるものを活かし、地域を豊かにしていく。サン・セバスチャンは里山資本主義のお手本なのかもしれない。



※トップ画像はwatanosさんによる写真ACからの写真


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