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CUBEの中でNOTEを考える

土曜日の朝は忙しい。
ジムに行ったり買い物を済ませたり…限られた時間のドライブ。
大声で歌ったりのいいドライブ。

けれどその日は違っていた。
たまたま、ほんとにたまたま薬師丸ひろ子の「Woman」が流れてきて、そこから涙が止まらない。

我が家の愛車、日産キューブを自分で運転する最後の日だったのだ。

キューブ。
へんてこな見た目。
車内のデザインも変わってた。
全席ソファシートが自慢なんだって。

買うつもりのなかったキューブを試乗して、
ひと目ボレ?ひと乗りボレ?して、はや10年以上…。

盲腸の入院手続きをした日、たまたま納車日だったので、初めましての新車を我が家まで連れて帰るというミッションを私が請け負った。ドキドキしすぎて、痛むお腹が盲腸なのか緊張なのかを判断できなかった。

そこからどれだけ乗ったのか…もう全てを思い出せない。思い出せないけど、地球を4周したらしい…。
子ども達はまだちびっこで、派手な計画は何もなかったけど、週末や休日にはよく4人で出かけたと思う。楽しい日、病気の日、なんでもない日、たくさん乗った。子ども達はじゃんけんで、どちらが先に助手席に乗れるかをいつも決めていた。(往路と帰路で交代!笑)
おすすめの音楽をかけたりしたし、みんなで歌ったり、お菓子やごはんもたくさん食べた。運転手以外、全員寝てる時もよくあった。

キューブのキャッチコピーが、
・アソブ、ハコブ、キューブ
・キューブマイルーム
とかだった記憶があるけれど、まさにそのとおりの日々となった。

「Woman」の流れる空間で、その曲が示す静かなお別れが心に溢れてきた。
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もう一瞬で燃え尽きて
あとは灰になってもいい
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と歌っている。こんなに乗ったんだから、そう思ってるよね、キューブも。

キューブはこのあと
本当に鉄の塊に戻るかも知れなかった。
さよならキューブ。
いつもの帰り道が涙で滲む。
瞳にもワイパーがあればな。
私は最後に駐車場に誰もいないことを確かめて、ハンドルを抱きしめた。

走行距離14万km。
移植手術に力を貸すことはあっても、
もうあのキューブとして誰かをどこかに運ぶという可能性は低いかもしれないらしい。
少なくとも日本では。

私たち4人だけを運んで、地球を4周して。

いよいよ次の車を納車するお別れの日。
朝の出勤時、大雨だった。
いつもは自転車で駅まで行くけれど
夫がキューブで駅まで乗せてくれると言う。
ラストキューブだ。

フロントガラスに雨が打ちつけて、ワイパーがそれを拭っている。フロントの両脇に寄せられた雨の雫が大量に流れていった。
泣いてるの?きゅーちゃん。(キューブのあだ名)ワイパーがあっても涙は隠せなかったのかな…。泣いてくれたのかな…。

夜。夫が次の車、NOTEを連れて帰ってきた。せっかくだからと近くまで夜のドライブ。次男を迎えに行ったりもしてみる。

きゅーちゃんは今もだいすき。
けれどNOTEも素敵な車になりそうだった。NOTEはこの世に舞い降りたばかり。転校生をいじめるような扱いにはしたくない。
ようこそ、NOTEさん。
今度は運転手が増えるかも知れません。
みんなをよろしくね。大切にします。

こんな最近のこと、必ずNOTEに書こうと決めていたんだ。
きゅーちゃんの中でずっと。



涙雨
心はどこまで残るのか
箱を置いた日
ノートを開く


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