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『中に挟まっているのが桃のやつはショートケーキとは認めない』の回

子どものころ、誕生日にケーキを食べられるのが嬉しかった。わたしは、誕生日のケーキは絶対にショートケーキにしてほしかった。何よりイチゴが美味しい。クリームの甘さの中に、間に挟まっているイチゴのすっぱさが冴えて美味しい。上に乗っているイチゴはズボッと外してお皿の脇に置き、ケーキを全部食べ終えた最後に頬張るのが最高に幸せだった。この文章を書いていたらショートケーキが食べたくなってきた。

ただ、そんなショートケーキを楽しみにしているわたしをガッカリさせることがたまに起きた。それは、ショートケーキの中に挟まっている果物がイチゴ以外のものになっているといったことだ。よくあるのが桃。ホールケーキを母親が切ってくれた際に現れる断面、ここに桃が見えた瞬間に下がるわたしのテンションよ。『なんでやねん! 桃やん! イチゴちゃうやん! 最悪の誕生日や!』と思っていたことを思い出す。普通に機嫌が悪くなっていた気がする。ていうか多分声に出して言ってたな、「桃やん。イチゴのやつがいい」って。桃じゃないねんなー。イチゴじゃないとなー、やっぱなー。えー、分からんかなー。上にイチゴが乗ってるとはいえ、やっぱり中もイチゴじゃないとなー。まあとにかく、わたしは中に挟まっている果物がイチゴ以外のものは、ショートケーキとは一切認めていないのだ。皆さんにとっては知らんがなって感じだとは思いますが。

こんな風に「〇〇と思っていたら、〇〇やった」というガッカリシリーズはたくさんある。ブログの方にもいくつか書いた。まずは「天王寺行だと思っていたら、桜島行やった」というもの。これはJR大阪駅発の電車のことなのだが、関西には大阪環状線なる路線があり、これに乗ると大阪の中心部周辺をぐるっと回ることができる。多分、山手線みたいなもん。多分。山手線よう知らんけど。その大阪環状線をぐるっと回れる大阪駅発の電車は天王寺行というものなのだが、これに紛れて桜島行というものも存在している。発車する乗り場は同じ1番線なのだが、行き着く先が違う。この桜島行は早々に大阪環状線から離脱し、ユニバーサルスタジオジャパン、通称ユニバのあるユニバーサルシティ駅など、大阪の人工島に行き着く電車となっている。わたしは大学生のころ、大学に行くために天王寺行の電車に乗って、文字通り天王寺駅で降りる必要があった。ある日の朝、少し遅刻気味になり、慌てて1番線のホームに繋がる階段を駆け上がり目の前の車両に飛び乗った。『はあ、なんとか間に合った。なんか車両も空いてるし座れるやん。ラッキー』と思い、腰を下ろしてまぶたを閉じた。一限に授業がある日は朝が早いから、電車の中で眠れるのは大変ありがたい。ZZZ... んっ。えっ、ここどこ? 見慣れぬホームの姿が目に入る。慌てて車窓からホームの駅名を見ると、そこには「ユニバーサルシティ」と書かれた文字が。これ桜島行やったんかいっ! 道理でガラガラやったわけよ。そう、わたしが慌てて飛び乗った車両は天王寺行ではなく、桜島行だったのだ。そして、このユニバーサルシティ駅で降りる人の大半は、ユニバに遊びに行く人たちばかり。みんな楽しそう。かたやこっちは大学に行かなければならない。全然楽しくない。さらには乗る電車を間違えて遅刻確定。この周りの人たちと自分のギャップに打ちひしがれ、もうなんか帰りたくなりました。でもちゃんと大学に行きました。真面目なんです。いや遅刻はしたけど。

その他にも「大学のテスト、プリント持ち込み可やと思ってたら、不可やった」とか、「明日の天気予報、朝から雨やから部活休みやと思ってたら、起きたら以外と天気持ち堪えてて一回学校行かなあかん感じやった」とか、「YouTubeの曲、本人やと思ってたら、全然知らん人のカバーやった」とか色々ある。人生、思い込んでいたら裏切られることばっかりだ。でもこれはあれだね、「〇〇と思ってたら、その通りだった」の場合は、インパクトがないから覚えていないだけで、こっちの方がよくあることですよね。「大学のテスト、プリント持ち込み可やと思ってたら、可やった」や、「明日の天気予報、朝から雨やから部活休みやと思ってたら、雨で休みやった」や、「YouTubeの曲、本人やと思ってたら、本人やった」なんて当たり前のこと。予想と違うことが起きた際のほうが印象に残るから、裏切られてばかりとか思っちゃうけど、普通に予想通りに難なく事の進むほうが多いよね。そう思うと、自分が食べてきたショートケーキの大半は、間に挟まっているのがイチゴのものだったんだろう。でも、たまにある桃が許せないんです。毎回イチゴがいいんです。言いたいことはそれだけです。


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