【働くおじさん2014】第6回「電話による世論調査(その1)」

みなさん、ごきげんよう。佐々木宏人です。

もうすぐ衆議院選挙ですね。私は一応名古屋大学の法学部政治学科を卒業しておりまして、政治に関心の高い方であると自負しております。今回の解散総選挙についてもいろいろ思うところあります。そんな折に世論調査業務が舞い込んできたので、喜んで志願しました。時給もよかったですし。

しかし、時間をよく確認していなかったのが甘かった!都内のターミナル駅に6時45分集合とのことで4時に起きて5時過ぎには家を出て向かいました。まだ真っ暗で新聞配達員と犬の散歩をしている人しかいませんでした。どちらかというと朝というより深夜という感じの時間帯です。電車は意外に混んでいてびっくりしましたが、通勤よりも朝帰りの人の方が多い時間帯ではないでしょうか(完全に偏見)。

そんなに早く出たにも拘らず遅刻して7時頃に到着しました(本来の業務開始時刻は8時なので余裕はありました。人としては若干問題ありますが…)。今回は人数が多く、登録している派遣会社だけで数十名のバイトがいました。そんな集団が何十とあって総勢数百名規模の大部隊です。まるで野戦に向かう兵士の群れに見えました。兵隊たちは順番に誘導されて本日の勤務地である高層ビルに飲み込まれていきました。

すでに先日簡単な研修を受けていたので業務内容はほぼ把握していましたが、朝礼で改めて説明を受けた後、スクリプトを読み上げたり、隣の席の人とロールプレイングとかして練習しました。今回は電話越しにとはいえ初の相手がいる仕事なので、いつもとは違った緊張感がありました。広義の接客業みたいなもんですね。

社員の人たちがカウントダウンをして一斉にコール開始。電話番号を間違えないようにゆっくりボタンを押しました。最近オートメーションに慣れていたので、逆に新鮮でした。てっきり今回もバーコードリーダーで自動的に電話するのかと思っていましたよ。あまり詳しいことを書くと機密漏洩になってしまうため大雑把に書きますが、いわゆる「リスト」があって電話するのではなくて、コンピューターが無作為に作った番号に電話する方式なので、当然死んでいる番号というのもあります。お客様都合で一時的に使えない回線とかファックス専用回線とか企業の回線とか(今回は一般家庭への調査が目的なので)。あと一般回線に繋がっても留守電とかコール音が鳴り響いて誰も出ないというパターンが続きました。まあ、平日の昼間ってあんまり人が家にいないですよね。自分はいますけど…。大体5本掛けて1本繋がるという感じでした。さらに名乗ったり、説明したりしている間にガチャ切りされることも多く、「この人はどんな躾を受けてきたんだろう?」と疑問符で頭が満たされました。社会的にはそれなりの地位にいるであろう中高年でも平気でガチャ切りするんですよ。最終的に質問に答えてくれる人はほぼ10人に1人でした。正直「なんて民度の低い国民だろう?」と思いましたよ。これでは世の中よくなるはずがありません。政治を批判する前にまず国民の政治への無関心が批判されるべきだと思いました。

とはいえ、最近は振り込め詐欺や悪質な勧誘もありますし、個人情報保護に慎重になっているので、この手の調査には協力しづらい状況になっているのもあるでしょうね。自分も電話をしていてなんとなく振り込め詐欺の実行犯になった気分でしたし。詳細な住所や個人名までは聞き出さないものの、選挙区確認のために大まかな住所を聞いたり、同居家族の有権者数や帰宅時間を聞いたりするんでかなりグレーだなと思いました。せっかくだから自分も便乗してリストを作ったり、霊感商法とか先物取引の勧誘とかすればよかったです(そんな精神的余裕はないですが)。

偶然繋がった不動産会社の人に「何のリストを見て電話してるんだ?」とヤクザ紛いに詰め寄られて(彼はきっとそっち方面の本職なので気になったんでしょうね)誤解を解くのに手間取ったのだけが後味悪かったですが、あとはどんなに断られても「またか」と思うだけで意外と平気でした。それどころか話好きなお年寄りと脱線して世間話をして和んだり、政治に関心の高い中年男性の方から「お疲れ様でした。頑張って下さい」と励まされてウルッときたりしてなかなかやりがいのある仕事でもありました。そんな一部始終を見ていた社員の人に評価されて面倒な案件を任され、ちゃんと調査を完了したのを褒められた時は正直嬉しかったです。売れないCDを普段からトークで無理やり売りつけているだけあって、たぶんクロージング(?)は得意みたいです(苦笑)。

朝早くから夜遅くまで働いて電車で帰宅しました。夕飯を食べる時間がなかったので、近所のコンビニに寄って幕の内弁当とビール的な何かを買って。家の玄関に着いたらちょうど日付が変わりました。今までで一番の長時間勤務&長距離通勤で疲れました。

以上、6回目の体験談でした。拙文をお読みいただきどうもありがとうございます。いかがでしたでしょうか?今回は体力も使わないし、スピードも要求されないし、とくにノルマもなかったですが、ひたすら精神を使う業務でした。自分はメンタルが強いので耐えられましたが、メンタルの弱い人は相当参っているらしく、「もう二度とやらない」と言う声も聞かれました。自分もしばらくいいかなとは思いましたが、次の選挙の時は苦痛を忘れてまた新鮮な気持ちでやるかもしれません。

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