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双子とか兄妹とか

4日目、元気ハツラツだと思ていたおでこ(双子の男の子)が、急にごはんを食べなくなった。朝イチで二人で遊んで少しごはんを食べてから、あとは寝てばかりいる。ケージの中に作った段ボールの小さい部屋に入ったまま、伸びたり丸まったりしながら寝ている。大きな目を開けてこっちを見てることもあるけれど、時間になってごはんを差し出しても少し食べたらもういらない、という。

おひげ(女の子)は相変わらずごはんには興味を示さないけれど、チュッチュが始まったら食べそうなものを指に乗せて差し出すと勢いよく食べるようになった。なんだ、こんなにおなかが減ってたの?と驚く。一度にたくさんは食べられないので、少しずつを何回も。でもよく食べてる。

この日のおひげのごはんは茹でた鰆にほんの少しペーストしたおかゆを混ぜたものだけ。匂いの強い物は基本、お気に召さないらしく、惜しみなく新しいパウチを開けても開けても、ちっとも食べない…。口につけてもそのまんまで舐めもしないので、仕方がないからティッシュでふき取る。白身をほぐしたものを差し出した時の食いつきがウソみたいだ。えー、仔猫ってこんななの?

二匹とも歯が生えていて、排泄もできるし(部屋の中で自由にしているけれど、必ずトイレでするから一度も粗相がない)、月齢的には確かに1カ月半くらいなのかもしれないけれど、こと食餌に関してはもっと小さいような感じがして仕方がない。水は自分でちゃんと飲むので、素材と食べ方の問題なんだろうと思った。保護団体の人には報告と合わせてどうしたらごはんを食べるか、聞いてみたのだけれど、返ってきた答えはすでに試したことばかりで参考にならないので(実際、見てないんだから、話しだけでは分からないことも多いだろうし)とりあえずやってみて良かったことだけを続けて様子をみることに。

体重は増えてますか、と聞かれるんだけど、食べずに遊んでいるんだから増えるはずがない。短期間に急成長していることは重々、分かっているけれど、状況としては現状維持してるだけで充分です、という感覚。定期健診で子どもの発育が順調じゃないと言われて落ち込んだり怒ったり悩んだりしている友だちの話をいろいろ聞いてきたけれど、気を付けることと同じくらい、状況を把握して対応する力がいるなーと改めて思う。

あまりに食べないのでやり方が悪いのかもしれないと思い悩みもした。預かっている子でもあるし、実は担当の方にあんまり信用されてない気もするから、いったんお返ししましょうか、と投げかけてみたけれど、弱っているようなら病院にお願いします、で、このまま預かっていていいようだった。と言っても、新しい環境に行けばまた一からになるし、保護団体の人だってそんなに簡単に判断できることじゃないのも分かる。食べてなくても寝てばっかりのようでも、チビ達の成長は著しく、おでこは来た時はできなかったゴロゴロができるようになって、爪を上手に使って少し高いところによじ登ることができるようになったし、おひげだってごはんを食べるようになってから、好奇心が倍増している。

おひげのチュッチュはお母さんが単に恋しいんじゃなくて、おなかが空いているからやってることらしい。背中を撫でるとすぐにゴロゴロチュッチュが始まるんだけど、しばらくチュッチュした後は差し出したごはんを勢いよく食べる。なんだ、うちに来てから今までのチュッチュは、おひげにとってはエアごはんだったのかも。そう思って目についたらごはんをあげるようにしていたら、一日も経たないうちになんだかしっかりしてきた。

一方、なぜか急にごはんを食べなくなったおでこ。おなかが空いているはずなんだけど、お皿のごはんも半分くらいでいらない、という。おかしいなと思っていたら、そのうちチュッチュしているおひげの横で一緒にチュッチュするようになった。

あれ?この子はチュッチュなんてこれまでしてなかったのに。

それまで一人でお皿からごはんを食べていたのに、この日、おでこはおひげと一緒にチュッチュしながらごはんを食べるようになった。

最初は指であげて、もっと食べそうだったら薄く切ったお豆腐のケースの底にいれたごはんを差し出す。おでこははじめ、おひげと同じ白身をがっついて、同じお皿に首をつっこんで食べていたけれど、途中からパウチごはんを食べるようになった。おひげがパウチの時はまた同じお皿に首を突っ込む。とにかく二匹一緒に食べたがるので、この日は両手でごはんをあげ続けた。

もうひとつ、二匹一緒にチュッチュごはんを食べた後に、おでこがおひげの毛づくろいをするようになった。おひげはまだ自分で毛づくろいすることがほとんどなくて、おでこがやってあげていたから、これは別に珍しいわけではなかったけれど、気がついたらおでこは自分がごはんを食べた後、必ず自分の毛づくろいをするようになっていて、どうやらごはんを食べた後のおひげもきれいにしてくれている感じ。折り重なるように寝ている様子も、お互いにお母さんに寄り添っているつもりでいるみたいに見える。そう言えば最初の頃、ごはんを食べないおひげの興味をひくようにおでこが食べ始めて、おひげもつられて食べたことが2度ほどあったっけ(って3日前の話だけど)。

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おでこもまだ硬いものは食べにくいようだから、食餌としてはおひげと同じく柔らかくて小さいものが良さそうだったし、おでこは人懐こくて甘えん坊だから、最初はおひげに触発された幼児還りなのかな、と思ったけれど、見ているうちにどうやらそれだけでもなさそうだと思うようになった。

おでこが一緒だとおひげも前に出ようとするのでエネルギッシュなることが多い。ぐったりはしていなくてもおひげのごはんが足りてないのは確実で、全然食べないわけじゃないからひとまず様子をみているわけだけど、それはつまり、少しでも気になることがあればすぐに病院に行こうと考えているということだ。判断としてはギリギリな気持ち。人間の私たち家族ができることなんて知れていて、おひげになにかを促すことができるのは圧倒的におでこだった。

ふと、あー、おでこはおひげのために自分も同じことをしているんだ、と思った。小まめに食餌していたこともあるけれど、実際、おひげの食欲はこの日以降、わかりやすく出てきて遊び方も時間も一気にパワーアップした。一日一日、劇的に変化していく乳幼児よ。

できるようになった方が、幼い方をカバーする。性格なのか、本能なのか、理由は分からないけれど、この二匹はとにかくシンクロしながら大きくなってる、と思った。うちはいま、知らないところに放り込まれた二つのいのちが響き合って成長してる、その現場になってる。そこには別に感情もドラマもなくて、ただ、響き合いがあるだけ。まだ生まれてから40日ほどで、こんなに小さいのにね。

そしてこれは別に特別なことでもなんでもない、いのちにとっては当たり前のことだっていうのを、すぐに忘れてしまうんだけれども。生き物すごいぜ、改めて。

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