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双子パワー

最近、仕事をご一緒している家具職人さんに双子のパパがいる。男の子が一人、女の子が一人。2歳になった。オシャレな人なんだけど、子どもが生まれてから話題のスポットにいく暇がない、と言っていた。赤ちゃんってただでさえ大変なものだけど、双子となると輪をかけて。そのエネルギーたるや、足し算も掛け算も通り抜けちゃって、幾倍にも膨れ上がる。

職人氏の子育て談は面白い。歩き始めてすぐの頃に動物園に連れて行ったら、二人でひらすらスロープを上り下りして飽きることがなく、ちっとも動物を見てくれなくて寂しすぎるので、せっかく来たんだから!と帰るギリギリになってとりあえずキリンの檻に走った話とか、洗濯物をたたんでもたたんでも散らかされる話とか、赤ちゃんあるある、が、倍になっていて笑える。オシャレな職人の彼がそんな話をする、というのがまた面白い。聞いてる方は笑ってばかりの楽しい話だけれど、えらいこと大変だろうなーという想像が、嫌でもつく。

でも、うちにもエネルギー爆発系の双子がいるのだ。しかも、男の子と女の子のペアで。まあ、うちのは猫だけども。

それぞれの性格をみるに、もしも一匹ずつだったらもう少し大人しかろうなあ、と思わなくもない。二人で一緒に成長していく様は目をみはるような素晴らしさがあるけれど、その分、騒がしさも半端ない。多頭飼いでも、年の差があるのとはきっと違う。双子って実はすごい状態なんだな、と思うことが、体重が1㎏をすぎた先週あたりから増えてきた。先代の猫も小さい時はたいがいだと思っていたけれど、上には上がいる(二匹いるから当たり前か)。

先代の猫は、まだ哺乳瓶でミルクしか飲めない頃にやってきた。たぶん、チビ達より、もう少し小さかったと思う。先代は病院の前に捨てられていた。拾った人から引き受けた時、掌に乗るほど小さくて、やたらめったら元気だった。

やっぱり兄妹で、大人しい方が女の子だった。二匹一緒に、と言われたけれど、うちは一匹しか飼うつもりがなくて、じゃあせめて、と元気な男の子を預かった。大人しい子の方が、貰い手が多そうだったからだ。真っ黒なチビは、あっという間にすごいスピードで走り回るようになり、人の足に平気でぶつかっても止まらなかった。仔猫って弾丸みたいだと思っていた。

だからまあ、あの子を基準にすれば、と思っていたのだけれど、二匹いることのすごさって足し算でも掛け算でもなかった。子どもは子どもの中で育てるのがいいとよく言うけれど、二匹いるということの相乗効果は、今のところ、想像を遥かに超えている。毎日、ハイスピードのスパイラルで成長していく。見てるだけでエネルギーを吸い取られそうだと感じるのは、猫も人も大して違いがない。

特に朝は爆発的なのだけど、その早朝を一緒に過ごしている母が、ここにきて根をあげだした雰囲気を醸し出しはじめた。ちょっとした会話の中に、もう猫たちって大変!というのが交じるようになった。起きるのが早いので、自分の時間を過ごす間に猫のお世話もしてくれているんだけど、とにかく元気ハツラツ、やんちゃでやんちゃで大変らしい。容易に想像はつくけれど。どんどん大きくなっていくし、一カ月くらいでお預かりは終了の予定だと言われていたのに、長引いているのが気になり始めたみたい。

たとえばここ数日で新たに始まったことと言えば、知らない間にカバンに入っていたり(持ったら重い)、引き出しの細い隙間から中に入っていたりする。閉めようとするドアから出ようと猛スピードでツッコんでいくし、棚に上がろうとするし、できることが増えた分、活動的な時間は危険と隣合わせになってきた。カーテンも大好きで近づいたら注意して、とか、気が休まらない時間もできてきた。物かげでこっそり寝ていて呼んでも出てこないから、もしかして外に出て行ってしまったのかと慌てて探しまくったり、なかなか大変だ。

先代もやんちゃだったけれど、ここまでだったかな、と両親が言い出したのは当然で、実は私もそう感じている。それぞれがすごい、というよりは、やっぱり二匹一緒だからじゃない?一匹がやったらもう一匹もやりだして、もぐら叩きみたいよね、と言い出した母の気持ちも分からないでもない。

なるべく伸び伸びさせてあげたいけれど、危ないと感じる時はゲージにいれる時間もできてきた。特に外に出ちゃうのだけはなんとしても避けなくてはいけないのに、最近、外の世界にも興味津々だから、危うくて仕方ない。

文句を言われているわけじゃないけれど、家族の気持ちも気にかかる。いろいろ言われるのを仔猫だって聞くわけだし、母は密かな身びいきタイプだから、二匹が預かりっ子だというのがどこか引っかかっているのかな、と思っていた私。でも、おでこが抱っこして、と母のところに行ったのを見ながらふと、母は先代の猫を思い出して寂しいのかも、と思った。

母にとって先代の猫は特別だった。帰ってきたら玄関でお迎えするのはもちろん、おいで、と言うと肩に飛び乗ってきたり、夜の散歩についてきたり、とにかくお母さんLOVEがすごかった。深く考えたこともなかったけれど、いなくなって10年近く。久しぶりに猫と暮らしてみたら、母の中に思いもしなかったような気持ちがいろいろと湧き上がってきているのかもしれない。あんまり長くいてほしくないようなニュアンスで猫の予定を話すのは、母の無意識の調整なのかも。

うちは今年、夏前に祖母がいなくなって、しばらくしてワンコも里帰りしてしまったし、私はできる時に小さい命と暮らしたかった。だから、短い間なら預かれる、と思い切ってボランティアに手を挙げたのだけど、この小さい猫たちのエネルギッシュさは、母に先代の猫を思い出させるているのかもしれない。たぶん、成猫だったらここまでじゃなかったと思う。先代の思い出はたくさんあるけれど、やっぱり赤ちゃんの時のことは印象深い。小さい子って、いろんなことを揺り起こす。ほんとにほんとに特別なのだ。

今週の日曜日、二匹は里親探しの会に参加する。9:30に会場に連れてきてほしいと連絡があったのでそれを伝えたら、母も一緒に来ると言う。二匹いるから大変だろうと思ってのことなんだけど、意外でもあった。そうか、一緒に来てくれるのか。ちょっと心強いかも。

普通に家族として迎えたら、よほどじゃない限り家から出て行くことはないのに、やる前に思っていたのと実際とでは、やっぱり感覚も時間の密度も想定外だ。別に考えてるわけじゃないけれど、二匹がいなくなったら、また思いもしなかったことを感じたり、何かに気がついたりするのかな。ハイカロリーはきっと、いなくなった後のカロリーも高かろう。どうなるか分からないけれどあと少し。とにかく、怪我なく外に出ちゃうことなく、のびのびスクスク、ほどほどやんちゃに過ごしてください。

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