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今日がどんな日でも何をしていようとも

米津玄師を聴き続けている。もうほんとに聴き続けている。忘れちゃったけれど、たぶん3年は聴き続けてる。

私の場合、聴き続けるというのはひたすらエンドレエスでその曲やアルバムを流し続ける、ということで、数時間でも徹夜でも、集中して作業してる時はその曲だけを聴いている。一人で運転している時は考えをまとめる時間になることが多いんだけど、片道1時間近く使っている通勤もエンドレス。他の人がいると嫌がられるから、できれば車には一人で乗りたい。

同じ曲やアルバムをひたすら聴き続けるのは、そのリズムの中にいると集中できるからだ。その音の中にいれば集中のフィールドから大きく外れることはない。外れそうになってもいつでもふんわり、集中の中に戻ってこれるし、そっと意識を外してまた戻ることもできる。曲をちょっとしたきっかけに新しい考えを思いついたりもする。イメージとしてはレコードの針になったみたいなもので、無理なく自分のリズムの中にいることができる。繰り返される音って集中にはほんとによくって、サポート力が強い。

先週から、私の車の中はBremenルームになった。これまでなんとなく若いなーと思って聴きこんでなかったアルバムなのだけど、なんだか急に気持ちが向き出して、一回流したらピタッとはまってしまった。ぼちぼち木々が色づいてきて赤や黄色が胸にしみるようになってきた、2021年の秋から冬にかけては、私にとってBremenの季節になった。

でもはて、なんで急にこのアルバムがしっくりくるようになったんだろう、と思う。いや、若いのよ、このアルバム。米津の曲は歌詞やメロディで好きになるというよりは、曲全体が自分に合っていて、興味の先はアレンジやサンプリングにあるんだけど(素人の耳では全然、聞き取れないし理解できないから知りたくなると余計にエンドレスになる)、それでも不思議、なんでこのアルバムが今の私の呼吸に合ってくるのかなと思うくらい、いろんなことがやっぱり若い。

で、思い返してみたら、私の感じていたBremenの『若いなー』が一気に至近距離になったのは仔猫が二匹やって来たころだった。そうか。仔猫を媒介にして、自分の中にあった「将来」への感覚が変わったせいかもしれない。去年から新しいプロジェクトを抱え始めて、そこからは意図的に自分軸で将来を考えるようにしてきたつもりだったけれど、飽かず仔猫を観察しているうちに、小さいこれからの命の目線で感じるようになっているのかもしれないな、と思い当たった。感覚としては全然違うもんな。

仔猫の預かりを始める前、そのうちかわいくて仕方がなくなって、もう手離したくなーい、となるかもしれないな、と思ったことがある。一カ月なんてあっという間。しかも勢いよく成長して懐いて可愛くなった時にサヨナラって、寂しくなるかもなー、と思っていた。でもいざやってきたならば、私が感じているのは、音を立てるように成長しているこの子たちが妨げられることなく大きくなって、安定して家族に迎えられる状態になっていこう!という並走感。この子たちを未来から預かってるんだ、という気持ちだけがいろんな瞬間に湧いてきて、それはちょっとした驚きでもある。未来からの預かり、というのは子育てでもよく言われることだけれど、ほんとにそうだなーと思う。

偏食が強くてごはんには工夫も悩みもあるけれど、仔猫たちは元気だ。がっつかないけれど、タイミングを見て促すと少しずつ食べて、ごはんを食べると急にエネルギーがいっぱいになって、動きが活発になるし好奇心も発動し始める。気がつくとケージから出て、小さい冒険に出かけたり、ふと見たら足元に丸くなっていたりする。ごはんを食べない数日間との違いがあまりにも顕著だったから、ただそれだけのことで、成長の途上にある小さい命は食べて寝て遊んでを繰り返して繰り返して大きく強くなっていくのだ、とつくづく実感するようになった。すごい。そしてたとえ何らかの理由でそういう状態になかったとしても、抜群のバランス感覚で自分にとって最善の方法を選ぶ力があるんだな、と感じる。

もちろん、小さい小さい、ほとんどのことが未経験の状態だから、手厚いサポートが充分すぎるくらいに必要ではあるのだけれど、サポートとは枠にはめ込むことではなく、要求していること、発動しているものを細やかに察知して極力、それぞれの子たちを邪魔しないように手助けしていくことなんだな、と思う。成犬になってきてから迎えたワンコとは体と哲学みたいなことを考えることが多かったのだけれど、仔猫はもう単純に生きるエネルギーそのまんま。生まれた命が体と共にどう成長していくか、ただそれだけでむき出しだな、と思う。繊細なむき出し。

まだまだ貧弱だけどやたらエネルギッシュなチビ猫を見ていると、Bremeから感じる若さが、(猫なんだけど)いずれこの子たちが経験する時代に先取りしてリンクしていくのかな、と思う。過去に創られたものはなんでも、未来からの手紙になりうるもので。まあとにかく、しばらくはBremenを聴きながら、猫たちの成長と並走したいと思います。

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