見出し画像

ミサを味わう

田中 昇(カトリック東京大司教区司祭、
     上智大学神学部・大学院神学研究科非常勤講師)


新しく、田中昇神父様のミサについての解説「ミサを味わう」が始まります。十数回にわたって、ミサについて、わかりやすい説明で学ぶことができます。どうぞお楽しみに!(Salt 編集部)



今年、日本のカトリック教会は、新しいミサの式文の使用を開始します。この機会に、私たちは、新しくなった式文に慣れるだけで終わるのではなく、ミサについての理解を深める時とすべきだと思います。特にミサにおける言葉や所作について、その意味を理解し直す機会とする絶好のチャンスだと思います。

第1回 はじめに

私たちは、ミサに参加するということを、ただ習慣通りに教会に行き、定型の言葉や所作を、それらの意味も理解せず、ただ漫然と繰り返すことで満足してはいないでしょうか。ミサにおける「ことばの典礼」も、聖書を通して語られる神様への応答としてのあらためて信仰を宣言して、それを生きる決意を持てているでしょうか。「感謝の典礼」においては、神の神秘というよりも、単なる人間的な次元での集会という感覚でいないでしょうか。あるいはミサというものを、単に漠然と参加すればそれでお恵みにあずかれる機会的な宗教儀式のように考えてはいないでしょうか。しかし、ミサそのものには、間違いなく私たちの心の奥深くに働く神秘的な力があります。それは目に見えるもの以上の何かです。それはまさに神様との交わりの体験、教会の体験なのです。

ミサでの言葉や所作の中には実に重要な意味があります。多くの人はそれを無意識のうちに見落としているように思います。それはとても残念なことですし、ある意味で大きな損をしています。ある人にとって、教会の祭儀は、自身の生活にとってさして重要ではない、どこか退屈なもの、習慣的ないし義務的なものでさえあるでしょう。もし信仰が実生活と乖離している、祈りが生活に結びついていない、信仰者として福音の喜びもない生き方をしているという人は、自身の信仰生活の中で何か重要なことを見失っているのです。

ところが、ミサの神秘的な意味を理解し、深い体験をできればできるほど、それは人生にとって素晴らしい体験の積み重ねとなります。そのような人は、たとえいかなる困難な境遇に置かれていたとしても、神様の神秘によって前進することができます。ほんとうに神様との交わりの体験ができていれば、その人は自ずとより善い生き方へと変えられていきます。そうしてはじめてキリスト者は真に福音を証することができるようになるのです。福音宣教とは、キリスト教の教理を漠然と伝達することでもなければ信者個人の才能やカリスマを伝えるもの、信心業の促進などでもありません。福音宣教はもっと生き生きとした情熱的なものです。それは自ずと湧き出る神様を知る恵み、その愛に生きる喜びを伝達することです。神様との交わりを生きる者は、これが自然とできます。

ミサの意味を理解するひとつの鍵は聖書の御言葉です。よく見ると、ミサの式文は、実に多くの御言葉からなっています。私たちが聖書の御言葉を味わい、理解し、御言葉にそった信仰を生きているなら、ミサでの祈りの言葉や、ひとつひとつの動作、そして祭儀全体に御言葉の意味が含まれていることに気付くでしょう。たとえば、聖堂の中のろうそくや香、祭壇、祭服といったものから、立ち上がったりひざまずいたりする動作、そして「主はみなさんとともに」、「主よいつくしみを」、「いと高きところには神に栄光」、「アレルヤ」、「神に感謝」、「神の子羊」などの祈りの言葉に至るまで、全て聖書からの直接的な引用或いは聖書に書かれた出来事が聖堂で再現されていることに気づくはずです。それはまさにミサにあずかる私たちが、聖書の神秘、神様と信じる民の交わりを体験することに他なりません。

これから十数回にわたって、みなさんとミサの中で用いられる言葉や所作の意味を聖書に基づいて理解する歩みを始めたいと思います。

次回、第二回は「ミサとは何か」です。 お楽しみに!

つづく


第二回 ミサとは何か


天の国の祝宴であるミサ

ミサとは何かと問われて、「天の国の祝宴」
全ての神の民の業であるミサ
神の愛の記念であるミサ
信仰の源泉であり頂点であるミサ


<プロフィール>

 

田中 昇(たなか のぼる)
カトリック東京大司教区司祭

カトリック北町教会主任司祭、東京管区教会裁判所副法務代理

上智大学神学部・同大学院神学研究科、南山大学人文学部(在名古屋教皇庁認可神学部)、東京カトリック神学院にて教会法の教鞭をとる

[最近の主な著訳書]

『ミサ聖祭 聖書にもとづくことばと所作の意味』(エドワード・スリ、湯浅俊治共著、2020年、フリープレス)

『カトリック教会の婚姻無効訴訟 ローマ控訴院の判例とその適用』(ダニエル・オロスコ、髙久充共訳、2020年、教友社)

『ゆるしの秘跡と内的法廷 免償を含む実践上の課題と指針』(2021年、教友社)

『2020年の教皇庁国際神学委員会文書における信仰の欠如と婚姻の無効』(2022年『南山神学』45号)

 



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!