【紹介・感想】題名のないゲーム理学会
はじめに
◆作品ページ
◆制作
taro 様
◆プレイ時間
30分~
◆ジャンル
アドベンチャー、ノベル
◆特徴
Secret
◆筆者プレイ日、プレイ状況
2022/5/14、読了
◆一言紹介
Secret
◆サクッと紹介
このゲーム、とある理由により、できれば何も見ないでプレイするのがいいです。1か月でゲームを制作するチャレンジで作られた作品です。作者様のTwitterで制作過程のツイートをまとめたモーメントが見られます。どうしても概要を知りたい方は↓へスクロールして「紹介」欄を見てください。
◆サクッと感想
1か月で作ったとは思えない緻密なシナリオです。凝った設定ですが、本作は情報の見せ方がうまくて腑に落ちました。グラフィックはポップな雰囲気。すべて自作のため統一感があり、モーションが付いているので臨場感もあります。Live2Dが生きているように見えるのと同じ理屈かも。知的なお話が好きな人にとっっっっってもおススメです!
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↓ 少しだけネタバレを含みます
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紹介(ネタバレ小)
※諸事情によりキャラクタ名などの固有名詞や細かい設定を間違える可能性があるのでご了承ください。
あらすじ
主人公シンリには最近大きな悩みがある。親友タダオミが転売に傾倒しているのだ。転売を続ければ、巷で多発する転売ヤー闇討ち事件の標的になるだろう。各々の思惑が交錯する果てに事態は思わぬ方向へ。彼らの迎える結末は、あなた次第だ。
おススメポイント
上ではSecretにしていた項目をここに書きますね。
◆特徴
大学生、SF、ゲーム、認知、哲学、バーチャルリアリティ、周回要素あり
◆一言紹介
マルチエンドが嫌いな主人公は好きですか?
ズバリ、認知や哲学に関する内容を含みます。胡蝶の夢、水槽の中の脳、スワンプマンなどを題材にした知的な議論はさながら学会発表。ですが、ポップなグラフィックのおかげで堅苦しさはありません。
なんとなく内容が想像できましたか? ご安心ください。おそらくその予想の一歩上を行く展開が待っているはずです。
SFというのは、現実では起こりそうもない事象を扱うので、そこに説得力を持たせるのがミソだと思います。本作では、ラストシーンの展開を納得させる理論的な布石がしっかりしていて、完全にやられた!という気持ちが味わえるのが醍醐味です。
途中の情報収集パートを真面目に読んでいるほど面白いこと間違いなしなので、ゆっくりプレイするのをおススメします。
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↓ 多大なネタバレを含みます
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感想(ネタバレ大)
本気で1度しかプレイできないので、これを書くにあたって再プレイできません。記憶が都合よく改ざんされて変なことを書いていたらごめんね!
(タダオミのばかーーーー!!!)
ダウンロードファイルはもちろん、普通のアプリならデータを保存していそうな場所は調べたけど、私の知識じゃわからないので、彼らの世界をそっとしておくことにします。
閑話休題。
ゲームを始めてまず印象的だったのは、背景が舞台セットのようにスライドして構築されていくこと。素人目には、結構シンプルな背景に見えるのですが、この演出があるとずいぶん印象が違うなと思いました。
それから、吹き出しがビヨンビヨンと動くのも良かったです。動きがあると、臨場感がぐっと増しますよね。
タダオミの第一印象は、ひねくれているけど根はいいやつ。カズナリの第一印象は、自己陶酔しすぎたかなりやばいやつ。シンリは自己主張しない感じなので、プレイヤーの分身のような気持ちでした。
まずい。この時点でかなり術中にはまっていたようです。
タダオミかカズナリか。たっぷり1分くらいは悩みました。親友タダオミを助けたい気持ちは山々ですが、カズナリを見捨てるのも寝覚めが悪い。でも悩んでいたら2人とも助からないかもしれない。
タダオミを助けることにしました。万が一タダオミが助からなかったらシンリは一生後悔するからね。その後の展開は拍子抜けするくらいあっさり。
エンディング後、選択の統計も見て満足。トロッコ問題的なアンケートを取るための実験作だったのかなと終了しようとしました。タダオミが死ぬかもしれないエンドは見たくなかったですしね。
そこでふと手を止めました。そういえばツイッターで本当のエンディングがうんぬんという呟きを作者さんがしていたな、と。
もうひとつの選択肢も見ておくか、と「はじめから」を選ぶと、あれ、別の物語が始まった? タダオミの目が死んだ魚の目からハイライト入りになっているような? 何ということ。ここからが本番だったのか!
ちょうちょ率を高めるとプレイヤーを認識できるようになるという理論づけがとっても面白くて、もうこのあたりからは夢中でした。ミズホとの会話形式で進むおかげですごく読みやすかったです。
オトナ〇国の父ちゃんの靴下に説明がつく完璧な理論も披露されましたね! 海馬の説明も面白かったです。それは海馬〇人。
ちょっとタダオミさんいいですか。マルチエンドが好きというのは決してその結末を軽視しているわけではなくてですね、すべての結末を心に刻んでいるのですよ。望む通りの結末を見たいからロードするのではなく、あらゆる角度からキミを知りたいからロードするのだ。(早口)
とはいえ、ロードはしないで欲しいというタダオミの願いは心に響いたので、ロードしないつもりだったのですが……
いや、ロードするしかないじゃん!? なんという卑劣な罠!
ロードするかしないか5分くらい悩んだのですが、シンリを助けていないのに終わるわけにいかないだろ!とロードを決意。
怪人ケタケタの正体がこの物語のハイライトでしたね! ケタ、ケタと、確かに私の耳にも怪人ケタケタの声が聞こえたので、私のちょうちょ率も100%だったようです。
最近プレイした作品だと、メタ的な意味ではこれ、セーブ&ロードの概念的な意味ではこれを連想しましたが、プレイヤーの体験に直接訴えかけてくるという点で一線を画していて非常に新鮮でした。
そしてこの布石がラスボスを倒す展開にもきれいにつながっている。うーん。お見事です。
最後に少しだけもやっとしていたのは、このゲームは実質一本道であることです。プレイヤーに選択させているようでいて、その実は「物語の結末」というエサをぶら下げて決められた通りの行動をさせられるという。まるでこちらがゲームのキャラクターにされたかのような不自由さ。
でももう一度会いに行ったタダオミに「ばーか」って言われたらすごくスッキリして何もかも許せる気持ちになったので不思議です。
最後まで一貫してとても素晴らしい物語をありがとうございました。
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