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【感想】扉は君の鍵で開く@ウディコン#12

【一言紹介】玉石混交の情報から核心を突く一言を紡ぎ出せ!
【タイトル】扉は君の鍵で開く(DLリンク
【制作】暗闇行灯 様(HPリンク
【プレイ時間】中編(6時間~)
【ジャンル】探偵ADV、探索、推理、謎解き(入力、対話型)
【傾向】現代、高校生、コメディ、シリアス
【制作ツール】WOLF RPGエディター
【配布形態】ZIP(67MB)、単体で動作
【筆者プレイバージョン】1.10
【筆者クリア状況】全エンディング閲覧
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~お薦めポイント(ネタバレ抑え目)~

作り込まれた奥行きのある世界観が魅力的な探偵ADVです。
全12話構成で、1~10話までがチュートリアルを兼ねた学校編(仮称)、11~12話が制作者様の真価を見ることができる町内編(仮称)です。
舞台となる田舎町の歴史や風土が細部まで考え抜かれており、膨大な情報が書物だけでなく、ふとした言動に散りばめられています
実在感のある世界を体感できる大作です。
この感覚が好きな方には、同作者様のファンタジーRPG&ADV「落葉の大地を走れ」も超おススメです。

情報を元に自分で推理して、単語を手入力するシステムが画期的です。
推理がピタリと当たったときの達成感は他では味わえません。
主要な単語は、履歴から質問できるので、操作性も良いです。
心情を汲んだ推論が必要だったり、推理を選択するのではなく、言語化する必要があるので、ミステリとは違う趣向で楽しめます。

学校編は、簡単~やや難しめのADVといったところ。
町内編は、普通のADVの感覚でプレイすると手詰まりになる難易度です。
共通して、謎解きに直接関係のない情報がありますし、複数の方面から謎が解ける仕様なので、情報量は膨大です。
「何について考えれば良いのか」「誰に質問するべきか」という段階から自分で決めていくのが、たまらなく遣り甲斐があります

学校編では、お菓子を食べながら仲間とおしゃべりできるのですが、これがまた良いです!
本編とは関係ない情報の多さ、楽しさも本作の魅力です。
これが世界観に奥行きを生んでいますね。
もちろんスルーも可能な親切設計です。

イラストも非常に美しく、作り込まれています
シナリオのNAN様とイラストのくらい様が何度もすり合わせをしたというキャラクタの表情は、それだけで性格が分かるくらい見事です。
ベストエンドで見られる2枚のスチルも必見

手前味噌ですが、ネタバレ抑え目の攻略wikiを作ってありますので、ヒントを見ながらでもトライして欲しい!



~良かった点など感想(ネタバレ全開)~

過去作が好きなので、今回も世界観と歯ごたえある謎解きには期待しておりました。
謎解きで言うと、4話、9話あたりがそれなりに歯ごたえあるかな、でもちょっと物足りないと感じていたところへ11話!
コレコレ!とテンションが上がって一気にプレイできました。
ひとつの町の歴史と風土が目の前に広がっていて、情報収集にも謎解きにも全く作業感を感じさせないのが凄いの一言。
※もちろん、煮詰まって総当たりになると作業ですが、そうならないヒントの配分が絶妙なのです。
漫然と読んでいると散りばめられたヒントをスルーしてしまうので、少しでも違和感を持った部分はメモを取りながら進めました。
探索にも観察力と気づきが必要な仕様も歯ごたえがありました。
ノーヒントでベストエンドまでは行けたのですが、もうひとつの重要な攻略要素である探し物は自力では見つけられず。悔しい!
分かってみて振り返ると沢山のヒントが散りばめられていて脱帽しました。

ストーリー面では、前半のほのぼのとお悩み解決はすごく好きです。
会話も、校舎のマップも良くできていて、学生時代を懐かしみながら探索するのが楽しかったです。
端的に言うとくだらない依頼ばっかりなんですけど、面白い!
きっと、詩織や宗助の反応がリアルで、楓は突っ走る、主人公は楓ラブというキャラの掛け合いのバランスが良いからなんでしょうね。
ヒントなしにこだわっていたので、お菓子会話はクリア後にたっぷり楽しませて頂きました。
と言っても、クリア前に見ておいたほうが良かったくらいの充実ぶり(30種類以上はある?)で、奉仕活動部の皆がもっと好きになりました。

後半は、現代劇でこれほどの歴史ロマンを感じられるとは夢にも思いませんでした。70年越しの決着に感動しきり。
あまりにも昔のこと過ぎて、一見何の手がかりも無いようでいて、調べるほどに点が繋がっていく感覚はとても楽しい。
本筋に全く関係ない情報はほとんどなかったんじゃないでしょうか。
謎解きに使わなくても、動機や背景の推測材料として重要だったり。
領主が仕掛けた罠に、一度はそれと気づかずに引っかかって、二度目でやっと原因に気づいて、三度目で突破するという作者様の掌の上で転がされているようなプレイをしてしまいました。楽しい。
某イケじじの存在感が凄かったですね。これほど重要キャラだとは。
12話に至るまで全く気づきもしませんでした。
これもちゃんと伏線があるから凄い。

システム面での大幅な進化もありました。
「落葉の大地を走れ」ではかなり不便な文字入力システムだったのですが、今作では履歴機能などが強化されて非常に遊び易くなっています。
ある意味最大の欠点を克服して、唯一無二の斬新さを獲得したと言っていいんじゃないでしょうか。
自分の推理をシンプルな単語にまとめるというのは、相手の質問を理解し、ほぼ完全な推理ができていないと難しいことです。
この体験は暗闇行灯様のゲームでしか味わえないですね。
30分以上悩む場面もありましたが、解けたときの爽快感が良い!

イラストも美しい!
NAN様の絵も好きですが、くらい様の絵はめちゃ精密で可愛いですね。
キャラクタの個性がばっちり伝わる表情の数々が素晴らしかったです。
詩織の喜と怒の落差が一番好きです。
ベストエンドのスチルが素敵過ぎて、クリアして良かったと思いました。
他のゲームがイラストというよりグラフィック面で凄くて、ゲームコンテストの点数的にはそちらを高くしてしまったのが悔やまれる。すみません。





~気になった点など感想(ネタバレ全開)~

私の最推しゲーなので、基本的には些細な点ばかりです。

操作性に関してはやや難ありです。
かなり頻繁に使うスマホ、会話履歴、地図がワンボタンで呼び出せないのはストレスに感じる人もいるでしょう。
校舎の階段などで、マップ切り替え後の配置と向きの都合で、ボタン押しっぱなしだと元のマップに戻されてしまうのも難点です。

リアリティの演出などの理由があるのでしょうが、ほぼ使われない連絡先やカレンダーが最初から表示されているのは、プレイヤーを不必要に惑わしてしまう気がします。
使う段階で表示されるほうが親切で、謎解きにも集中できると感じました。

また、ゲームデザインと制作負荷の関係上、避けられない問題ですが、一応述べておきます。
イベント管理が複雑であるため、居ないはずのメンバが話すなどの細かいバグはあったようです。
その場面に関係のない質問で少し受け答えがおかしいということも稀にあります。
普通にプレイしている分にはほとんど遭遇しない問題ではありますが、万一遭遇すると熱中度が下がる恐れはあります。

ストーリー面では、町長からの依頼がやや強引な印象を受けます。
口止めという名目であれば、町の最大の秘密に関わる依頼をするのは不自然です。
学内で少し影響力を発揮した+α(ある人物への警戒心)程度で、70年未解決の問題を任せるのは、冷静さを欠いた判断という印象です。
他にいくらでも口止めのやり様はあるので。

いずれ辿り着いてしまうならば、いっそこの機会に知らせてまとめて口止めということかと解釈していますが、直接的な描写はなさそうでした。
プレイを進めれば、町長の人柄などを加味して理解できますが、11話開始時点では唐突感は否めないかなと感じます。

もう1点は、探索不足の可能性はあるのですが、地下施設の虫は他にくらべてファンタジー色が強い割には、何の伏線回収もなされないので、もやっとしてしまいました。
過去作のような真相編があるのかと少し深読みしてしまいました。


~考察(ネタバレしかない)~

別記事にて。考察というか駄文ですが。クリア後の閲覧推奨。
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