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【自作小説】さよならバス ①

自作のコトバ達をこちらに少しづつ
まとめて乗せてゆこうと思います。

あなたとひびきあえたら嬉しいです  

mimiko

数年前のある立春前の旅先でのこと。

自然豊かな山あいにある小さな古い街並みの中、
片隅にひらけた、バスや車が
ぐるりと旋回できるくらいの広場で、
かろうじて屋根と行き先の看板だけが
あるだけのバス停のベンチで
日も傾いてきて少しだけ心細くなってきた。



どれくらい時間が立ったのだろう?
気づくと1人のお年寄りがどこからかやってきて、
私の隣に「よいしょ」、っと腰を下ろした。

モヘアでふわふわしたきれいな網目に
仕上げられた手編みのニット帽をかぶった
少し丸くなった小さな背中が隣で揺れ、
顔を上げると星が瞬くようなキラキラと好奇心いっぱいの大きな目で
ふと私を覗き込んで、「こんにちは」、と、笑った。

小柄でかわいらしい、おばあちゃんだった。

わたしはその目やスッと伸びた背筋や腰に回した手や、
寒さにほんのり桜色の血管が透けるような真っ白な肌を
「きれいだなあ」と時々盗み見ながら、
会話を楽しんでいるうちに
さっき感じた寂しさも忘れてしまっていた。


そうしているうちに小さなバスがガタガタとバス停にやってきて、
乗り込んだ私たちの後から病院帰りの足を引き摺ったお年寄りや
学生服を着た二人連れの女子学生が次々とどこからか現れては
小さなおばあちゃんと挨拶を交わしながら
県境の温泉地に向かうバスに乗り込む。

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