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短編小説

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読み物。君と僕の日々の物語。 どこからでもいけますが、古い方から順番がおすすめです。
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#春

『四月の朝の出来事』

朝の自主練。 いびつな五角形の校庭を、フェンスに沿って走る。 バックネット、サッカーゴール、テニスコートと、次々と移り変わる見慣れた景色。 それぞれの掛け声に、排水溝の蓋の上を走る自分の足音が重なる。 ガタリ、ゴトリ。 ガタンッ。 不意に後ろからかぶさる音と声。 「おはよ。」 はずむ息と跳ねた鼓動を抑えながら、私は斜め後ろを向き、返事をする。 「おはよ。」 汗ばんだ頬に張り付く髪を直す頃には、声の主はもう真隣だ。 「今日暑いよね。」 「ねー。汗凄いわぁ。」 「