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ショートショート、瞬間の切り取りが多いです。 お花や空の写真を眺めるだけでも…楽しんでいただけますと幸いです。
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#忘れられない恋物語

『コントラスト』

抜けるように青い空。 「おはよー。」 クリーム色の歩道橋から、 君が手を振る。 「おはよう。」 右手を上げ返事をし、 橋の下をくぐる。 足取り軽く降りてくる音を抜かして、 一足先に下で待つ。 真っさらなワイシャツと 君の笑顔。 キラキラ眩しくて、 切なかった。 #詩 #散文 #空 #写真

『カーペット』

寝そべる僕の横に、 珍しく君もゴロンと並ぶ。 「あー、じんわりー。」 いつもよりそばで聞こえる、 幸せそうな君の声。 肌寒さがとろけていく。 ちらり、目が合う。 「ぬくまるねー。」 返した言葉よりもずっと熱く 火照る耳を隠したくて、 読みかけの雑誌を頭に被った。 #詩 #散文 #恋愛

『無力な涙』

雨はちゃんと土に染みて 静かに川となり 海に辿り着いて いつかは空に還るのだろう 私の涙はただ頬を 伝ってシャツに にじむだけ 拭ってくれた君の手の ぬくもりはもう 思い出せない きっとあの日の雨と一緒に 空に還っていったのだろう #詩 #写真 #空 #雨 #散文

『歩み』

「昔からこの花好きなんだけど、 ちっちゃいから上手く撮れなくて。」 一生懸命にシャッターを切る君 この先も春が来るたびに そんな君の優しい背中を 僕は立ち止まって待っているよ #詩 #散文 #創作 #花 #写真

『白バージョン』

「この花、ピンクバージョンもあるよね。」 連休前の帰り道 歩道橋脇の駐車場 君が指差す足元に 真ん丸な黄色と細やかな 無数の白い花びら達が 互いに寄り添い ゆったりと 夕暮れの風に揺れていた 「じゃあこの子達は、  白バージョンだね。」 私の答えに君は微笑み こくんと小さく頷いた いくつかの春が過ぎたけど そんな会話が忘れられず 今も昔も私のなかで その花の名は"白バージョン" #詩 #散文 #創作 #イラスト #花

『君の横で』

陽射しと緑の濃くなる季節 あの日 君の横で 「せーの!」で触れた 湧き水の冷たさを 今年もまた思い出す 指で弾いた水滴越し  君の笑顔が大好きだった #詩 #散文 #イラスト #色

『揺れる色』

三限あとの休み時間 誰かが窓を開けている 大きく膨らむ 日に焼けたカーテン 「黄緑色が柔らかそう」 頬杖の君は寝ぼけ眼で 陽の当たる柵の向こうを見つめる 座席の間を吹き抜ける薫風 捲れた英語のノートを抑えて 君の眺めた色を追う #詩 #散文 #新緑 #空 #写真

『重ねたもの』

繋ぐ 握る 掴む 絡める 爪の先すら 愛おしく 指の付け根の 深さに怯える #散文 #詩 #イラスト

『声にならない』

4月 この心に 芽吹いた花と吹き抜ける風 目の前を駆ける背中 その汗も 体温も 眩しすぎて 声にならない #散文 #詩 #イラスト

『青く燃ゆる』

あまりにも青く 時に爆ぜ 時に燻り あなたとわたし がんじがらめ 振り解いても また掴み取る 振り放されても 僅かに繋がる わたしとあなた ひとりとひとり 本能のまま 青く燃ゆる #詩 #イラスト #散文 #創作 #illustration #色

『色』

燕脂の袖で 紺の裾をつまむ 混じる肌色 あたたかく