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ショートショート、瞬間の切り取りが多いです。 お花や空の写真を眺めるだけでも…楽しんでいただけますと幸いです。
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#恋愛

『やっぱり君の方がいい』

「好き。」 僕が言うよりも 君が口にした方が 素敵な言葉になる なんか こう 咲き掛けの薔薇の蕾のような 可愛らしさがね そんな言い訳を付けて 今日も僕は 君からの着信を待つ 眠る前にもう一度聞かせて 「好き。」 やっぱり君の方がいい #薔薇 #詩 #散文 #恋愛 #写真

『もう少しだけ』

素直になれていたら 思いやることができたなら もっと長く そばにいられたのかな "他のいい人と幸せになってね" お前がそう言うのはわかっていたのに 試した僕に刻まれた罪は ケロイドのように消えないままで もう少しだけ 欲張りで わがままでいて欲しかった #詩 #散文 #恋愛 #空

『相合傘』

ねぇ 相合傘って 隣に並んで歩くんだよね? 君が真正面に居たら ちっとも進めないんだけど 傘の柄ごと握られた手が熱い 「もう少し寄らないと濡れちゃう。」 そうは言うけど これ以上 くっつけないよ 世界には ぽつぽつと当たる雨音と あたたかい胸の音だけ 恋の音が 響いていた #詩 #散文 #恋愛 #相合傘

『知らない空』

今にも降り出しそうな風が 半袖のブラウスをひやりと撫でる なんとなく今日は ミルクの甘さで温まりたい 「一緒に飲む?」 狭い路地で 蓋を開ける 先に飲んだ君の吐息は 柔らかな笑みと溶け合って 私の一口目をさらに甘くする 車が来たのか 思いがけず 肩を抱き寄せられた 君越しに見えた知らない空に 不安と期待が入り混じる ふわりと漂う 同じ香りを頼りに 目の前の胸元に 頭を預ける 君の優しさが 白く じんわりと 私を包み込んでくれた #詩 #散文 #イラスト #恋

『声』

気怠さに緩む 月曜日の六限終わり 音楽室からの5分足らず 君の左横で 歩調を合わせる 授業中のソプラノに比べて 恋のフレーズを口ずさむ声は なんとも楽しげで 僕の肩を軽く跳ねて 耳から胸にトトンと響く サビの二小節だけ 声を重ねる 嬉しそうに揺れる前髪 息継ぎさえも愛おしかった #詩 #散文 #恋愛

『交差点』

もう繋がることもない 声 指先 心 それでもまだ見ぬ未来の交差点で すれ違う事があるのなら あなたは気づかなくていい 忘れることを諦めた私に 気づかず通り過ぎて欲しい あの晩 共に見上げた星達が どうかあなたの足元を照らして ただただ何処かで幸せに 誰かと生きていて欲しい #詩 #散文 #恋愛 #イラスト #星

『カーペット』

寝そべる僕の横に、 珍しく君もゴロンと並ぶ。 「あー、じんわりー。」 いつもよりそばで聞こえる、 幸せそうな君の声。 肌寒さがとろけていく。 ちらり、目が合う。 「ぬくまるねー。」 返した言葉よりもずっと熱く 火照る耳を隠したくて、 読みかけの雑誌を頭に被った。 #詩 #散文 #恋愛

『重ねたもの』

繋ぐ 握る 掴む 絡める 爪の先すら 愛おしく 指の付け根の 深さに怯える #散文 #詩 #イラスト