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一皿のお寿司に隠された、労働と経済の仕組み

その日の夕方、さくらのスマホが鳴った。画面には「兄」の名前が表示されている。さくらは少し驚いた。兄から電話がくるよりもこちらから電話をするほうが多いからだ。

「もしもし、どうしたの?」さくらが応じると、電話の向こうから兄の元気な声が返ってきた。「久しぶりに一緒にご飯でもどう?お寿司食べに行こうよ。俺がごちそうするからさ!」

突然の誘いに驚いたが、さくらはすぐに顔をほころばせた。「お寿司?久しぶりだね、行く行く!ありがとう!」

その夜、さくらと兄は近所で評判の回転寿司店に向かった。兄と二人で食事をするのは久しぶりで、さくらは少し緊張しながらも、目の前を流れていく新鮮なネタに自然と笑顔がこぼれた。次々と皿を手に取り、さくらは久しぶりの贅沢に舌鼓を打った。

「やっぱりお寿司って最高だね!」さくらは満足げに兄に話しかけた。

兄は頷きながら、「まあ、たまにはいいだろう?」と優しく微笑んだ。

しかし、ふとした瞬間、さくらは考え込んだ。目の前にあるお寿司が、自分の手元に届くまでの過程に思いを馳せる。漁師が朝早くから海に出て、魚を捕り、それを運送業者が安全に都市部まで運び、寿司職人がその魚を丁寧にさばいて美しい握りにする。すべてが見えない労働によって成り立っているのだと。

「お寿司って、本当にたくさんの人の手を経て、私の前に来るんだよね。漁師さんが魚を取って、運送業者さんが運んで、寿司職人さんがそれを握って…。これって全部、労働の結晶なんだよね」と、さくらは静かに言った。

兄は少し驚いた様子で彼女を見た。「さくら、そんなこと考えてたのか?」

「うん…最近、自分の仕事をしていると、お金とか労働ってなんだろうって考え始めちゃってさ。自分が働いて稼ぐお金も、こうやって誰かの生活や楽しみを支えているんだって気づいたんだよね」

兄はしばらく考え込むようにして、真剣な表情で口を開いた。「それはその通りだよ。お金は単なる紙や数字じゃない。背後に必ず労働があるんだ。実は、歴史を振り返ってみても、労働とお金の関係はずっと変わらないんだ。昔の物々交換の時代も、労働の結果を交換していたわけだし、貨幣が生まれてからも、労働の価値を可視化するためにお金が使われるようになったんだよ。だから、経済活動の根本は、常に労働だって言えるんだ。」

さくらは驚いたように兄を見つめた。「そうなんだ…物々交換の時代から?」

「そう。例えば昔、農民は小麦を作って、それを鍛冶屋の作った道具と交換していたんだよね。これも労働力の交換だ。今はそれが貨幣を介して行われているだけ。現代の経済も、企業が商品やサービスを提供するのも、すべて労働力を基にしている。お金は、労働力の価値を数字に変えたものに過ぎないんだ。」

「なるほど…じゃあ、私がデスクで一日中パソコンに向かっているのも、誰かにとっては価値があるんだね」

兄は微笑んで頷いた。「もちろんさ。君が入力しているデータがどこかで使われ、それが他の人のビジネスや生活に役立っている。すべてはつながっているんだよ。それに、労働がなければ経済は回らない。企業も成り立たないし、私たちが今ここでお寿司を食べることもできない。労働力っていうのは、実は見えないけど、すごく大切な要素なんだ。」

さくらは、その言葉を噛みしめるように聞いていた。「じゃあ、お寿司も、私が普段使っているお金も、全部誰かの労働で成り立っているんだね…」

「その通りだよ。経済ってのはみんなの労働力の集合体だから、私たちが何を買うかっていうのも、誰かの生活を支えることになるんだ。だから、お金を使うときは、その裏にある労働の価値を少し意識してみるといいかもしれないね。」

さくらは頷いた。兄の言葉が胸に響き、自分の仕事や日常生活が少し違って見えるような気がした。そして、普段何気なく使っていたお金や、手にしていたものすべてが、どれだけの労働の結晶であるかを改めて実感した。

その後もさくらと兄は話しながらお寿司を楽しんだが、さくらの中では、労働力とお金の関係についての理解が一層深まっていた。経済活動の背後には、常に人々の努力があり、それが支え合って社会が成り立っているという事実が、心の中で強く根付いたのだった。

食事の後、店を出ると、さくらは夜空を見上げながら「自分の労働にも意味があるんだ」と、これまで感じていた不安が少し和らいだ気がした。仕事に対する見方も、少しだけ前向きになれたのだった。

これからも投資頑張るので、皆応援よろしくね😚
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