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大人がマスクを外さないと子供が外せるわけない


「2歳以上はマスクしなさい」、という流れになった。

国民の大反発を受けて2歳という年齢部分だけ曖昧になったが、「保育所でマスク着用推奨」という方針は変わっていないので、結局は幼児でもマスクつけろということである。

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「推奨」なので強制ではない、という受け取り方もできるが、そもそも日本では大人もマスクは義務ではなく推奨(内閣官房サイトの表現では「お願い」)である。
しかしその大人への推奨は、「あくまで推奨ですよ? あくまで推奨ですけどマスクをしないと飲食店にもあらゆる店舗にも公共の施設にも病院にも入れず娯楽にも参加できず買い物もできず乗り物から降ろされ非常識病原菌扱い人殺し呼ばわりされます、でもあくまで推奨なので強制ではないですよ?」……という推奨であり、日本社会での推奨は強制とおおむね同じだと言える。

さて。
この「2歳以上にマスク推奨」のニュースが出た時に、世の中のほとんどの人は、猛反対していた。
記事につくコメントやSNSの反応では、一斉に「やり過ぎだ」「2歳児がおとなしくマスクつけてられると思うのか」「幼児がマスクするデメリットを考えろ」「心身の成長に悪影響だろうが!」という意見が並んだ。

それは大人として、当然な反応である。実にもっともだ。
2歳の幼児にマスクをつけさせるなんて、虐待である。そんなことを国の方針として推奨するなんて、あまりにも無茶苦茶だしおぞましいし、狂っている!

……まあでも、日本は2年前からずっと狂っているので、今の日本としてはそれが平常運転だとも言えるのだけど。
社会全体が異常になっていると、おかしいことをおかしいと思う感覚も鈍ってくるものだ。たとえば普通の世界にドラキュラが登場したら「うわードラキュラだ! なんておぞましい!」となるだろうが、仮にウォーキングデッドの世界にドラキュラが現れたら、「おお、ドラキュラか……! まあ、別にいてもおかしくはないよね」と許容する気分になるだろう。
今の日本は、どちらかと言えばもはやウォーキングデッド寄りである(涙)。

そう言えばウォーキングデッドではゾンビへの感染を防ぐために噛まれた人の足を切り落としたりしていたが、我が日本も感染を防ぐために小学生にマスクで持久走をさせて死なせたり、陽性の妊婦さんが病院に受け入れ拒否されて赤ちゃんを死なせてしまったりしている。
ウォーキングデッドの方がまだマシな気もしてきた。


オホン。
いきなり話が逸れてしまったが、まあそれくらい、狂いがデフォルトになってしまっている国家・我が日本である。

ところが、意外や意外この「2歳児(保育園児)にマスク推奨」の件については、大人みんなが団結して「それはやり過ぎだ!」と反対していた。みんな、怒っていた。
さすがにその推奨はこの異常な世界においても1周先を行くくらい無茶苦茶なことだと、多くの人が思ったのだろう。
まあ普通の感覚なら怒って当たり前なのだが。

しかし……、一方で私は思ったのである。

いや、本当に思ったわけではないというか、ちょっと思ったけど事実私がそう思っているわけではない、という紛らわしいことをあえて書くのだけど。

マスクは、なんのためにするのか?

もちろん、感染を防ぐためだよね?
恐ろしい未知の感染症が流行っているのだから、飛沫およびそれに含まれるウィルスを飛ばさないためにマスクをするんでしょう?
たとえ波が収まっていても、いつしかインフルエンザより致死率が低い病気になってしまっていても、わずかでも人にうつして殺す可能性があるのだから対策をするのは当然、という理由でみんなマスクをしているのではないのですか? 
子供や若者にとっては普通の風邪くらいの脅威でしかないとしても、実際マスクなんかで感染を防げる確率は低いのだとしても、大事な家族や友人にうつして殺してしまう可能性がごくわずかでもあるのだから、個人のリスクの度合いも大人子供も関係なく全員マスクをしなければいけないのだ、という理屈でみんなマスクをしているのではなかったですか?

私はよくPodcast(ネットラジオ)やSNSでマスクについて懐疑的な発言をするのだが、その度に散々そのような理屈で罵りの言葉をぶつけられたものだ。

とにかく感染してはならない、回り回って誰かの大切なおじいさんおばあさんを殺すかもしれない、だから、絶大な効果があるというワクチンを2回も3回も打った後ですら野原を歩く時もみんなマスク、レストランでひと口食べたらすぐマスク、ひと口食べたらすぐマスク、みたいなとっても意識の高いマスク生活を、みなさん続けてらっしゃるのではないか。

……だとすれば、幼児にマスクをさせるのも当然ではないか?
だって、もし2歳児から大事なおじいちゃんおばあちゃんにコロナがうつって殺してしまったらどうするのだ? 
今や、高校や中学や小学校でも生徒は全員マスクをしているだろう。幼稚園でもそうではないか。
それについては多くの人が「普通のこと」として受け入れていると思う。小中高のマスクに反対を表明する人は少数で、今回の「2歳児・保育所でマスク推奨」についてだけ、突然多くの人が一斉に反対し出したように思う。

なぜなのだ??
なぜ2歳児ならマスクをしなくていいのか。
2歳児なら、大事な人を殺してもいいというのか。
17歳がコロナをうつすのはダメ、14歳がうつすのもダメ、8歳がうつすのもダメ、5歳がうつすのもダメ、でも2歳や3歳からうつって大事な人が死ぬのはいいのか。
マスクをしていない2歳児を発端に感染が広まっていくつもクラスターが出て医療崩壊して大量に死者が出るかもしれないじゃないか。それはいいのか?

「ごくわずかでも、限りなくゼロに近いわずかでも、他人を殺す可能性があるのだからマスクをしなければいけない」という理屈でこの2年間マスク強制社会、ノーマスクはろくでなしの人殺しだからみんなで石投げて罵っていい、の社会を日本の大人は作って来たではないか。
それなら、大人として筋を通すならば、2歳児にも0歳児にもマスクをつけなきゃいけないだろう。2歳だって、人を殺しちゃダメじゃないか?
「2歳児はおとなしくマスクなんてつけてない」と言うんなら、皮膚にマスクを縫い付ければいいではないか。それで外せなくしてしまえばいい。
顔にたくさん穴は空くしマスクのせいで健康被害も心身の成長への悪影響も出るだろうけど、人を殺すよりマシではないか。
大事な家族を殺すこと、回り回ってクラスターを出して医療崩壊で大人が大量死することを考えたら、その可能性を防げるのなら顔に縫い跡ができたり心身の成長が妨げられたりするくらい我慢するべきだ。
子供が大量殺人鬼になるよりは、その方がずっとマシじゃないか??

…………と、
私は、もちろん本当にそうした方がいいとはまったく思っていないが、「今までの筋からしたらそう言い出すのもおかしくない気がするのに、なんで2歳児にはみんなそんな寛容なの?」と、思った。

だって、それに近いことをずっとやって来ているじゃないか!! 日本の大人たちは。
今もなお、やり続けているじゃないか!
子供にマスクをさせたら酸素量の低下による健康被害や心身の成長への悪影響が出る、それがこんな、保育所のマスク推奨にみんな一斉に反対するくらいよくわかっているのに、小学生や中学生には平気でマスクをさせているではないか。
小学生は心身が成長しきっているとでも言うのだろうか??
保育園児の健康や成長に害があることは、小学生の健康や成長にも害があるのである。
保育園児の健康や成長に害があることは、少しずつ影響の度合いは下がろうが中学生の健康や成長にも、高校生の健康や成長にも、大学生の健康や成長にも害があるのである。大人の健康や成長にだって害があるのである。

「メラビアンの法則」というものがあって、人が他人とコミュニケーションを図る時に、重視されるのは言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%だと言われている。
つまり、話の内容が7%で、音の情報……例えば話すスピードだったり声のトーンだったり大きさだったり、が38%。そして、相手の表情や動作を見て受け取る情報が55%。これが、誰かと話をする時に、我々が無意識に頼る情報源の割合だ。

マスクをすることで、その多くの部分が失われることになる。
表情はわからない上に、声すらも正常な状態では伝わらない。お店のレジでマスクとパーテーション越しのため言葉を聞き取れず「え?」「なに!?」「あんだってぇ!?」と何度も聞き返しているおじいさんおばあさん、最近ではよく見る場面だろう。
大人はもう基本的な会話のスキルは身につけているかもしれない。
しかし子供は、赤ん坊から始まって大人になるまで長い時間をかけて「表情を使ったコミュニケーション」を学ばなければいけないのだ。
その、人が学ばなければいけない他者とのやり取りの基本、人間としての根本的な技術を身につける機会を、日本の子供は全員、マスク社会によって奪われているのだ。
それに加えて、もはや日本の子供は「クラスメートの顔を見たことがない」「友達や先生に顔を見せるのが恥ずかしい」という、日本の教育史上……いや人類史上初めてであろう歪んだ環境、痛ましいメンタルの状態になってしまっている。

子供たちの心の破壊である。他の感染対策も含めて、これから未来を作って行ってくれる、国を背負って行ってくれる世代である子供全員の心を、もう2年間、大人たちが徒党を組んで一生懸命破壊しているのだ。
しかも、これからも続けようとしている!

ところがそんな虐待を平気でやって来た大人たちが、なぜか「保育所でマスク推奨」となったら途端に「やり過ぎだ!」「幼児がマスクするデメリットを!!」なんてことを言い出している。
いやなんで今さらっ!!! その前から言うべきでしょうよっ!!! なんで2歳児の心身の健康は守らなきゃいけなくて10歳児や17歳児は守らなくていいのか!!!

※実際にその前からちゃんと言っている人もいて、そういう人たちが今回も憤るのは当然です。でも前から言っている人は悲しいかな少数派なのです。


「2歳児にマスクさせるなんてひどい」が多数派の意見になるならば、「小学生にマスクさせるのはひどい」も多数派になるはずである。今回2歳のマスクに反対した理性ある人なら、遡って「あれ、そうなってくると、小学生にマスクさせるのもおかしいよな?」と気付いたのではないかと思う(もしくは前から気付いている)。
小学生がおかしいならば、中学生も高校生も含めて「子供にマスクさせるのはおかしい」、これも多くの大人が賛同する意見なのではないか?

だったら、大人がマスクをしている場合ではないのだ。

大人の社会が実質マスク強制であり、ノーマスクの人間を悪人非常識人殺し扱いする環境の中で、子供がマスクを外せるわけがないのだ。
子供は、自分の意思でマスクをつけているわけではない。
子供にマスクをつけさせるのは大人なのだ。「学校ではマスクをつけましょう」「通学路でもマスクをつけましょう」「保育所でもマスクをつけましょう」「家から一歩でも出たらマスクをつけましょう」、そのルールを決めるのは、大人なのだ。
大人が「まともな人間はマスクをするものだ」という思考に染まりきってしまっているから、そういうルールができるのではないか。
たとえルールではなく子供が自分の意思でつけているとしても、それは大人の社会の空気がそうさせているのである。こんな空気の中で、「自分の意思でマスクをつけない」なんていう子供が育つわけがない。

じゃあ、子供の心身の健康を第一に考えて、「子供だけはマスクしないでOK」にすれば? と思ったとしても、それは不可能である。


………………。


長くなったので、2回に分ける。後編へ続く



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