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「誕生日の雨傘(柊子著)」を読んで・・・


私がこの小説の著者である「柊子さん」の存在を知ったのは2015年に放送されたNHKの連続テレビ小説「まれ」を観てでした。
とは言っても実はリアルタイムで視聴していたわけではなく2018年に夫婦で石川県の輪島市に旅行に行った際に訪れた「輪島ドラマ記念館」で知った次第です。(家内は放送当時に断片的には観ていたようですが)
それから輪島がお気に入りのスポットになったこともありDVDを購入して「まれ」を全編観てみました。
ドラマ自体も大変楽しいものですが、ケーキ職人を目指す主人公の先輩パティシエを演じる柊子さんの存在は一際光るものでした。

そんな柊子さんの筆による小説「誕生日の雨傘」・・・四編の短編小説集ではありますが主な3人の登場人物を物語ごとに順に中心に据えながら描くのは私にとっては新鮮なものでした。
読む前は学校の「いじめ」や「校内序列」などが描かれているとのことで平凡なおじさんがどこまで理解できるのか・・・と思いましたが、柊子さんの作品を読んでみたくて開いてみるとその文章は優しくサラリとした印象で刺激的な描写は無く出来事を淡々と描いている印象でしたが、読み始めて直ぐに登場人物の苦悩が強烈に伝わってきて気が付くと各物語の主人公を応援していました。
しかし何故世代も性別も違う、自分の置かれている環境とは大きく異なる様に感じる状況を描いた物語がこうも抉ってくるのか・・・
それはきっとこれらの物語が「社会」そのものだからなのでしょうね・・・
最初の2編で描かれる学校での「いじめ」や「序列」の問題も学校だから、十代の世界だから・・・ではなくて大人社会の反映であり大人が社会でやっていることを子供が真似しているのでは・・・
そんなことを考えながら一気に読み進めてしまいました。

出版にあたって行われた柊子さんのインタビューも拝見しましたが柊子さんはこの小説で「頑張れば何とかなる・・・と言うメッセージを送るつもりは無い」と話してました。
確かにどの物語も主人公が凄く強くなったりはしない、スーパーな誰かが現れて解決してくれるわけでもない、立場が逆転したり仕返しをしてやったということもない・・・問題は解決したのか? と言う印象はありますが、その後直ぐに何というか、雨は降り続いているが嵐は去ってくれた様な、キツイ上り坂が平坦になった様な・・・そんな瞬間が訪れた様でホッとしました。

厄介な問題は何時でも存在してどうすれば解決するとは言えないけれど何とか歩いて行って欲しい・・・そんなメッセージを私はこの小説から感じました。

最後までありがとうございます!

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