「ビジネスと人権」が問われています


またも週刊文春の報道を機に、「ビジネスと人権」が問われています。
いや、勇足でしょうか?

いまだスキャンダル扱いで、これを機にビジネスにおける人権保障の徹底へ、という機運が高まっているといえるのか、心許ない。思えば旧ジャニーズ事務所問題の際も残念な展開でした。

吉本興業は旧ジャニーズ事務所のように第三者委員会に調査を委ねることすらなく、12月27日事実無根と否定した上、文春に法的措置を検討すると発表しました。そしてメディアは当該芸人が出演するお正月番組を放映しました。本人が活動を停止すると発表するまで、メディア側から人権侵害が行われてきたかを検証することはおろか、放送を続けたのです。国連の作業部会が昨年、日本ではビジネスにおける人権遵守が徹底されていないと指摘しましたが、またそれが露呈しました。

国際社会を意識してか、吉本興業は活動休止について日本語だけではなく英語と中国語でも声明を発表しました。しかしいまだ第三者委員会も設置せず、否定し続けています。

報道によれば本件も長年繰り返されてきた行為である上、後輩芸人たちも加担してきたことが疑われています。
「誰ひとり取り残さない」SDGsを掲げる吉本興業が、所属芸人の人権侵害の検証に着手せず、被害者救済への取り組みを表明しないで、海外進出の展開は果たして可能なのでしょうか。

ビジネスにおける人権侵害について他人事のように傍観していた政治の責任も改めて問われています。いや傍観どころか、吉本興業がかかわる事業に官民ファンドが多額の出資をするなど、自民党や日本維新の会とさまざまな関係が指摘されてきました。

https://gendai.media/articles/-/66199?page=1&imp=0

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/259149

国連の作業部会は、8月の訪日調査で「メディアとエンターテイメント業界における性的なハラスメントや虐待を不問にする文化」を問題にした際、放送局が一切救済措置を取らないことについても触れました。

さらに、国連ビジネスと人権に関する指導原則UNGPsに沿うためには、あらゆるメディア、エンターテイメント業界が救済へのアクセスに便宜を図り、透明で迅速な苦情メカニズムを確保することが必要と指摘しました。

なぜメディア、エンターテイメント業界における人権侵害が放置されてきたか。
政府も責任がないわけではありません。
企業の取り組みを促進し、強化する。企業人等への研修を行う。
人権侵害について調査し、救済する。
国内人権機関ならできます。
ところが、国連や日本弁護士連合会が繰り返し要請してきた国内人権機関の設置について政府は沈黙し続けています。

https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/issues/development/wg/statement/20230804-eom-japan-wg-development-japanese.pdf

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/kokunaijinkenkikan10FAQ.pdf

こうした企業や政府の姿勢を批判し、国内人権機関の設置の必要性まで指摘し掘り下げたメディアはあったでしょうか。

個別のスキャンダルとして取り上げられ、いつしか風化する…。
それではいつまで経っても人権侵害からの救済も果たせず、防止もできません。

政府の文書でも「ビジネスと人権」をよく見かけるようにはなりました。
しかしこの言葉をはやりのキャッチフレーズで終わらせず、真に人権保障の徹底に向かう気なら、政府は国内人権機関の設置に本腰をいれるべきです。
一議員として、国会からも求めていきたいです。

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