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『センチメンタル・チェリー~呪いの願掛け~』

秋の夜長にセンチメンタルな気分に浸る童貞「センチメンタル・チェリー」こと錯乱坊★迅迅丸です。

毎度お馴染み三十路チェリーボーイで毎日楽しく生きておりますが、チェリーボーイというのは無論異性との性交が無い人の事を表現しているわけです。

しかしワタクシ、性交以外にも未だ経験のない物があります。

それは、、、、

実はワタクシ「クレープ童貞」なのです。

この世に生を受けて以来、クレープを口にした事がありません。

というのも、この理由は単純明快、願掛けです。

時は遡る事高校時代…

冴えない思春期を過ごしていた高校生のボクは、ある日曜日に部活仲間(ボクは当時男子ソフトボールというヘンチクチンな超弱小部に所属していました)と一緒に出掛けました。たしか部活の大会の手伝いとかでそこそこ遠い所に行かされていたんだと思います。

手伝いも終わりさてみんなで帰ろうという時に、仲間の一人が言いました。

「コイズミー!(※本名です) クレープ食おうぜー!」

そんな中島に野球誘われるような感じで言ったのです。

クレープか…いいな。

ホットケーキは食べた事あるけどクレープって食べた事無いし、疲れた身体には甘い物が欲しくなるし、高校生が部活帰り的な感じでクレープを買い食いするなんて、まさにアオハルじゃねえか。

そう思った矢先、脳内にこんな考えが。


「いや、クレープってカップルで食うもんだろ?」

たしかし思ったのです。

クレープという食べ物は、女子高生同士か恋人同士で一緒に食べる事で成立する食べ物だという謎の概念がボクの中にはあったのです。

だってそういうイメージじゃないか。クレープって。反論された時にちゃんと言い返せる言葉はないけど。

なので、今ここでチェリトモ(童貞の友達)とクレープを食べてしまってはダメだ。クレープという料理を未完成のままで味わってしまう。

クレープを究極的に美味しく食べる為には、まずは恋人を作る事。

つまりクレープを食べる上でのドレスコードがボクにはまだない。

そのドレスコードをしっかり身に付けた未来に、しっかりクレープを味わおう。

そう決意したボクはチェリトモに、

「すまないが、今のボクにクレープを食べる資格はない。正確には君にもないんだけど、これはボクの問題だから君は気にせず食べたまえ。」

チェリトモは不思議そうな顔で、「ああ」と言い残し、一人クレープを買って頬張っていました。

「愚かな。君は本当のクレープを知らないんだな。ボクも知らないけど。」

そう感じながらボクはシナシナのタイ焼きを食べました。

そして15歳の夏に「恋人が出来るまで、ボクはクレープを食べない」という願掛けを始めました。

あれから15年が経ち、未だにクレープの味を知らないチェリーになっているとは当時のボクも流石に予想出来なかったでしょう。

今まで何回か女性とデートをしてクレープ屋の前を通った時に「今こそクレープを食べる時か!」と思った事もあったのですが、「いやいや、今はまだただの男女の友達という関係。しっかり恋人関係になってから、じっくりクレープチェリーは捨てさせて戴こう(ゲスイ顔)」と思い直して敢えてのスルー。そして結局その子にフラれてクレープにありつけず。

ふと高校時代に思いつきで始めた「クレープ願掛け」ですが、今ではそれが願掛けというよりも呪いのようにボクに伸し掛かっています。

あの時クレープを軽い気持ちで食べていれば、ボクはクレープの味を知る男になれたのにという後悔でいっぱいです。

「願掛けと性交は軽い気持ちでやるな」

肝に命じました。

錯乱坊★迅迅丸

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