【読書記録】一気にわかる!池上彰の世界情勢2020 自国ファースト化する世界編

タイトル:一気にわかる!池上彰の世界情勢2020 自国ファースト化する世界編

著:池上彰

世界各国で起きている事件や社会現象について分かりやすく解説してくれている。問題の根本はどこにあり、それがどういった形で今ある目の前の問題に繋がっているのか。そうした背景も合わせて解説をしてくれている。この本から得られた知識として以下2つの項目を記しておく。

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1. なぜ台湾では民進党の支持が高まってきているのか?

台湾は親中国寄りの国民党(=中国共産党に負けたが元々は中国は一つという考え方をしている人達)から民進党の支持が高まってきている。

その背景には香港の中国返還問題を目の当たりにしたことによる影響が大きい。鄧小平が50年間は香港の自由を保障すると言ったにも関わらず、香港の行政長官は中国共産党の言うことを聞く人物しかなれず、その行政長官が"犯人引渡し条例"を作ろうとしたために大規模なデモが発生した。まだ22年しか経っていないのに次第に自由が奪われてきている危機意識が芽生えてきている。香港で混乱が続いた場合「治安を守る」という名目で中国から武装警察が入ってくるかもしれないことが心配されている。

2. なぜイスラム国は誕生したのか?

イラクにはアラブ人・クルド人が住んでおり、アラブ人はスンニ派とシーア派に分かれている。アラブ人のうち、シーア派は6割でスンニ派は2割。フセイン大統領はスンニ派でシーア派をいじめていた。イラクで大量破壊兵器が作られているという名目の元、イギリスとアメリカがイラクを攻撃。フセイン政権は倒れる。その後、シーア派を中心としたマリキ政権が誕生。フセイン元大統領の死刑動画を撮影していた人がおり、その動画が拡散。一部の人にとってはシーア派が仕返しのためにやったのではないか?という風に見え、スンニ派の人たちが怒り始める。またイラク国内にはアメリカを恨んでいる人たちがいる。なぜなら、アメリカはフセイン政権を倒した後にバース党(スンニ派)の公職追放を行ったことにより職を失った人たちからの反感を買ったからだ。

選挙を行うとマジョリティを占めるシーア派が勝ち、要職もシーア派が占めるようになる。形勢が逆転したことによってシーア派からスンニ派への復讐が始まった。スンニ派の住民がシーア派の警察官から銃で打たれるなどの事件も起きるようになった。これによりスンニ派の中で武装勢力が生まれることになる。さらにこの中で過激派が生まれ、これが「イスラム国(IS)」となった。

これに加え「アラブの春」が飛び火したシリアでは、独裁者のアサド大統領が軍隊を使って民主化を求める市民を弾圧。シリアの多数派はスンニ派。アサド大統領はアラウィー派(≒シーア派)。やがてシリアの「アラブの春」はアラウィー派対スンニ派に変わっていく。またシリア軍の中で自国民に銃を向けることに不満を持った人たちが「自由シリア軍」を結成。これによりアサド政権(アラウィー・シーア派) VS 自由シリア軍(スンニ派)の構造が出来上がった。民主化を支援するアメリカ・イギリス、スンニ派のサウジアラビアは自由シリア軍を支援。一方、シーア派のイランとシリアに軍の基地があるロシアはアサド政権を支持した。「イラクのイスラム国(ISI)」はシリアの内戦を好機と捉えて「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」と名前を変えてシリアに進出。ISIS(スンニ派)はアサド政権(シーア派)だけでなく、自由シリア軍も攻撃して、自由シリア軍からアメリカの最新兵器を奪い取って、再び「IS」に名前を変えた。ちなみにイラクはシーア派だが、体制としては反米になっている。サウジアラビアはスンニ派で親米。

3. その他

トランプ大統領の政策:アメリカ大使館をエルサレムに移した・非常事態宣言を出して、メキシコとの国境に壁を作った・他国に対して関税を強化した・パリ協定から離脱した・北極圏の利権を取りに行こうとしたが乗り遅れた。

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