9回目のお遍路

9月9日(土)

 異常に暑かった夏もようやく過ぎ、お遍路の季節がやってきました。今回は、JR予讃線の伊予亀岡駅からのスタートです。
 いつものように、土曜日の営業を終え、京都駅へ向かいました。これまでは、新幹線で岡山駅まで行き、岡山で特急のしおかぜ号に乗り、松山というルートでしたが、今回は、今治寄りのスタートなので、いつもとは違うルートを使ってみました。新幹線で福山まで行き、そこでしまなみライナーという高速バスで今治へという行程です。福山駅前からの最終バスに乗って、しまなみ海道を渡りましたが、夜で海の様子も島の様子も見ることはできませんでした。
 22時30分頃、今治駅前のビジネスホテルにチェックインして、すぐに休みました。

9月10日(土)

 一日を有効に使おうと、この日は朝3時起床。予約していたタクシーで、ホテルを4時に出発しました。今治から10㎞ほど松山寄りに戻った、伊予亀岡駅が今日のスタート地点です。朝4時過ぎの駅はひっそりとしていました。
 4時15分から今治市内の54番延命寺へ向かって歩き始めました。駅からの距離はおよそ10㎞です。雨にも降られず、平坦な道を遍路し、6時15分に延命寺へ到着しました。御朱印などは7時からの受付なので、それまでにお参りを済ませ、境内で待っていると、受付の方がお見えになりました。そして、御朱印を頂き、予定よりも早い7時過ぎに、お寺を後にすることができました。なかなか幸先の良いスタートです。
 今治市内には6ヶ寺が集中していて、お遍路もスムーズに進みます。次の55番南光坊には8時に到着しました。お参りを終え、8時30分出発、56番の泰山寺までは約4㎞です。こちらも、スムーズに到着することができ、9時40分にお寺を後にしました。
 3㎞先の57番栄福寺は、10時46分に出発、さらに3㎞離れた58番仙遊寺へは11時30分到着し、12時にお寺を後にしました。今治市内最後のお寺59番国分寺までは、今日一番の最長区間、およそ10㎞の遍路です。お寺への途中に、やまびこうどんという手打ちうどんのお店があったので、お昼を頂きましたが、店内は一杯で、待っておられる方も多く、とても流行っているお店でした。私は「冷やしスタミナぶっかけうどん」を頂きましたが、人気店だけあって、とても美味しく頂きました。
 腹ごしらえを済ませ、13時30分、お店を後にして、59番国分寺には14時に到着。今日の遍路はこのお寺で終わりです。
 今日は、明日の60番横峰寺に向かう途中にあるホテルで宿泊です。いつもよりも早い16時にホテルにチェックインしました。時間も早く、温泉もあったので、今日はゆっくりくつろぐことができ、ぐっすり休むことができました。

9月11日(日)

 昨夜はいつもの遍路より、ゆっくり過ごすことができ、しっかり英気を養えたので、今朝は2時起き3時出発。いざ出発と、ホテルを出てみると、結構しっかりした雨が降っていて、急いで雨具を取り出して、60番の横峰寺へ向けて出発。大雨の国道には、ときおり走って行くトラックの姿しかありません。でも、早朝真っ暗の中を遍路するのは、歩く事だけに集中することができるので、なかなか良いものです。
 まずは、山のふもとまでの平坦な道を歩き、およそ15㎞ほど歩いたところで、いよいよ山へ向かって少しずつ登っていきます。雨もまだ降ってはいましたが、歩き始めた時よりもやや弱くなっています。そして7時、いよいよ頂上へ向かう道を歩き始めました。
 予め、この区間は上昇が800mあることは確認していたので、ある程度の覚悟はしていましたが、ここからが今回の遍路中、1,2を争う厳しい遍路の始まりとなりました。
 ダム湖である黒瀬湖に向かう道を登ることおよそ30分、大きな湖に着きました。そして湖を左に見ながらさらに登ります。およそ3.4㎞で100m上昇、ひたすら登ったところに、お寺へ向かう有料道路の料金所がありました。この有料道路を登り切った先がお寺です。
 しかし本当に大変だったのは、ここからでした。坂の勾配はさらにきつくなり、時々車などが通り過ぎていく道を、ひたすら歩きました。この記録を書くために、この料金所から横峰寺までのルートを調べてみると、4.2㎞の距離で510mも上昇している事になっていて、今更ながらビックリ。どうりできついはずでした。大まかなルートは調べていましたが、山の中腹などにあるお寺へ向かう際は、もっと詳細まで調べなければいけないと、今頃反省しています。
 とにかく、歩いても歩いても急坂が延々と続き、いつまでたっても終わる気配が感じられません。ずいぶん周りも明るくなってきたので、いくら何でももう頂上だろうと思っても、相変わらず登りは続きます。この遍路を始めた頃に出会った、11番藤井寺から12番焼山寺までの区間も、非常に厳しい区間でしたが、それに十分匹敵する今回のルート。もう歩くのを止めたい、止めたいと何度も心が折れそうになりましたが、それでも、一歩ずつでも前へ進まなければ遍路は終わりません。自分に言い聞かせたり、時には何も考えず頭を空っぽにして、一歩また一歩と歩き続けました。
 9時22分。念願のお寺に到着した時には、安堵感や開放感で全身が満たされたのでした。
 荷物を置き、飲み物で喉を潤し、気持ちを整えてお参りを済ませました。お参りを終えた頃は、もう疲労困憊で、果たして下まで降りられるだろうか、本当に心配で、また帰りも、あの登ってきた道を戻らなければならないと思うと、心が暗くなりましたが、境内を出て、元来た道へ向かおうとしたところ、山道を歩く遍路道の標識がありました。次のお寺までの距離もずいぶん短縮されています。山道を下らなければならず、それはそれでまた大変なのですが、先ほどの道を帰る辛さを考えると、これほど有難いことはなく、すぐにその道を歩き始めたのでした。
 下りの遍路道は、この地域のボランティアの方によって、しっかり整備され、標識も分かりやすく、安心して歩く事ができました。そして、思っていたほど道も悪くなく、しっかり歩くことができました。そして驚くことに、登り切った時に疲労困憊していた足の筋肉たちが、楽になっているのです。土の地面で、体への衝撃が優しいということ、変化に富んだ地面を歩くので、体や足の様々な筋肉を使い、またストレッチできていたようです。このルートのお陰で、体もずいぶん癒され、12時40分、61番香園寺に無事到着。
お参りを済ませた後は、62番宝寿寺、63番吉祥寺と、各区間も短く、順調に遍路は進みました。
 そして今回最後のお寺64番前神寺へは15時23分到着。予定よりも随分早くすべての行程を終える事ができました。16時に前神寺を出て、最寄りの石鎚山駅から電車に乗り、次の伊予西条駅で特急に乗り換え、今回も無事に京都へ戻ってくることができました。
 



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