3回目のお遍路

1日目

 暑かった夏も終わり、またお遍路の季節がやってきました。前回は17番井戸寺を終え、そこからJR二軒屋駅まで歩みを進めました。第4回目となる今回のスタートは二軒屋駅です。
 無理を言って、9月24日(土)を臨時休業させて頂いたお陰で、今回は4日間連続での遍路となりました。9月22日(木)は、これまで通り、店を終えて、着替えをし、荷物一式を持ち家を出ました。19時10分の徳島行バスに乗り、22時10分頃、徳島駅に到着。夕食は、予め準備していたお弁当をバス車内で頂きました。次の日からは3連休で、これまでよりも乗客が多かったようです。

 駅前のホテルでシャワーを浴びた後、すぐに就寝。明日に備えます。

 23日(金)前日に持参したパンとインスタントコーヒーで朝食を摂り、6時46分徳島発の電車に乗りました。台風が接近中で、ホテルの窓を開けると、既に雨。今日は終日、傘をさしての遍路となりそうです。二軒屋は徳島から二駅目の駅ですが、祝日朝の列車は人も少なく、閑散としていました。
二軒屋に着き、いよいよ遍路開始です。
 ここから18番恩山寺へは、南へおよそ10㎞、国道沿いのほぼ平坦な道を歩きます。順調に歩き、2時間ほどで恩山寺へ到着、お参りを済ませてすぐに19番立江寺へ向かいました。19番まではおよそ5㎞。相変わらず雨は降り続いています。
 19番へ向かい、淡々と歩き続けること1時間、もうすぐお寺が見えてくるという地点に差し掛かった時です。あるお店のガラス扉に、「ういろようかん」「きびだんご」という貼り紙を発見。朝食は5時過ぎに摂っていたので、そろそろお腹も減ってくる頃です。そこで、お参りが終わったら頂こうと、そのお店で和菓子を頂くことにしました。お店へ入ってみると、すでに「ういろようかん」は売り切れていて、ならば「きびだんご」と思ったところ、私たちが店に入った時に既におられたお客さんが「きびだんご」を2パック買われ、それで売り切れとなってしまったのでした。
 残念でしたが、これもご縁、仕方ないと思って店を出たところで、先ほど店におられたお客さんから声をかけられました。
「あの、もしよかったら、1パックどうぞ…」と。でもせっかく買われたのだからと、最初は遠慮したのですが、私たちの遍路姿を見て、お接待のつもりで言ってくださっているのかもしれないと思い、きびだんごを1パック分けて頂くことにしました。
 きびだんごをリュックへ入れて、立江寺の境内に入り、お参りを済ませました。さほど広い境内ではありませんでしたが、雨がよけられるベンチを見つけ、「きびだんご」を頂きました。1本に3個、1パックに5本、きな粉がたっぷりかかったお団子は、見るからに美味しそうです。さっそく1本を手に取って口にしたところ…「甘い、甘すぎる」。
 お団子自体も甘く、さらに甘いきな粉がかかっていて、想像以上に甘かったのです。いつもなら、この手の団子をパクパク食べる夫も、2本食べたところでギブアップ。持ち歩くこともできず、私が3本も食べることになってしまいました。京都で頂く和菓子の感覚で食べると、こんな事態になってしまうことがよーく分かったのでした。
 反省し、気を取り直したところで、今日のお宿「みかんの宿」へ向かって歩き始めました。宿まではおよそ10㎞の遍路です。次の20番鶴林寺は山の上にあるお寺で、回りには宿泊施設も無いため、もう少し歩きたいのですが、今日は2ヶ寺だけの遍路で終了です。宿までの道は平坦な県道でしたが、車道の水はけがとても悪く、すぐ傍の歩道を歩く際には、水たまりの水をかけられはしないかと、びくびくしながら歩き続けました。
 歩くうちに、先ほどの「だんご」で一杯だったお腹も癒えてきたので、宿の少し手前にあったレストランを目指すも、休業。仕方が無いので、宿からすぐの道の駅で、しばしコーヒーブレイクをとり、ほっこりしたところで、今夜のお宿へ向かいました。宿到着は16時、なかなか良い時間となりました。
 「みかんの宿」というこのお宿は、老舗の遍路宿で、女将さんお一人できりもりされているため、1日1組しか予約は取られていないようです。すぐにお風呂の準備もしてくださって、1日雨に打たれた体には何よりのお接待でした。
 夕食は天ぷらに、焼ちくわ、煮物、ソーメンサラダにご飯、みそ汁、フルーツのデザートまでついて、もうお腹一杯。レストランが休業で良かったと思いました。また、洗濯機や乾燥機も使わせて頂けたので、非常に助かりました。とても気さくな女将さんで、楽しいひと時を過ごすことができました。


2日目

 昨日の雨もすっかり上がり、朝食を頂いて、7時20分宿を後にしました。今日は阿波の国の3大遍路転がし第2位、3位の山頂付近にあるお寺が続きます。前回の遍路転がし第1位の焼山寺が大変厳しい行程だったので、今回もかなり気合を入れて歩き始めたのですが、およそ1時間程度で、あっけなく20番鶴林寺へ到着。お参りを済ませ、21番太龍寺へ向かいました。
 鶴林寺から一旦山道を下り、那賀川にかかる水井橋を渡り、太龍寺への山道を登り始めます。こちらも、穏やかな山道が続き、最後1.5㎞辺りから少し急坂となりましたが、それでも、山道はとても整備されていて、非常に歩きやすく、11時45分頃にお寺へ到着することができました。
 お参りを済ませた後で、女将さんがお接待と言って持たせてくださったおにぎりを頂きましたが、最高の握り飯でした。
 昼食後、今日の遍路宿「ほたるの宿」へ向かって下山します。最近では、山頂までのロープウエイが出来ているからでしょうか、今日の遍路宿方面へ向かう人は減っているようです。山道をひたすら下り、加茂谷川に沿ってさらに歩き、民宿ほたるの宿に15時過ぎに到着しました。遍路転がしが2つも続くというので、山から下りてすぐの宿を選んだものの、足にはまだ余裕があり、もう少し先へ進めたのになと思いましたが、これもまたご縁。
 宿には誰もおられず、しばらく玄関で待っていると、向いの喫茶店からご主人が出てこられました。喫茶店も経営されているようです。すぐに部屋へ通して頂き、早速お風呂にも入り、ほっこり。備え付けの洗濯機や乾燥機も自由に使ってよいとのこと。助かります!!お風呂から上がって、部屋で休んでいると、ご主人が「コーヒー淹れたのでよかったらどうぞ」と仰ってくださったので、お言葉に甘えてコーヒーを頂き、色々とお話をさせて頂きました。

 大変だったのが夕食です。昨日のお宿でも、夕食のボリュームが半端でなく、今日もある程度は覚悟していましたが、今日の夕方はその比ではありませんでした。20代のスポーツ選手であればちょうど良いボリュームの内容で、分厚いトンカツはあるは、野菜は山盛りだは、魚の煮つけはあるは、副菜も2~3品、ご飯は山盛り、汁も具沢山、デザートのフルーツには、季節のフルーツ以外に、これでもかとバナナ…。これまで信条として、食事を残すのは論外としてきた私としては、せっかく用意して下さったものを残すなんてありえません。ようやく出された食事を平らげることができました。
 ところが、胃にはかなりの負担だったようで、その夜は眠りも浅く、一晩中苦しみ、朝になってもまだ食欲は戻りませんでした。

3日目

 今日は30㎞を歩いて、いよいよ海岸線に出る遍路。ご主人に無理を言って、朝5時に朝食を準備して頂きました。昨夜の反省から、自分の食べられる量を守り、いくら食べても大丈夫な夫に、自分のおかずを譲りました。朝食も相変わらず、大変なボリュームでした。
 朝食を終え、6時に宿を出発。まずは22番平等寺。およそ9㎞の行程です。平坦な県道を歩き、国道195号線と交わった辺りから、遍路道へ。大根峠を越え、ほどなく平等寺へ到着しました。
 お参りを済ませ、8時20分、いよいよ23番薬王寺へ向けて出発です。ここからはおよそ20㎞の長い行程で、気合を入れて再び歩き始めました。薬王寺までは、国道ではなく、遍路道を歩くため、距離は26㎞ほどの長距離です。まずは、海岸線を目指して歩きます。黙々と歩くこと3時間、ようやく海が見えるようになりました。海が見えてくると、気持ちも高揚するようで、歩みも速くなります。そして、11時40分、海岸線に到着、田井ノ浜で一息入れることになりました。宿で作って頂いたおにぎり、私はまだお腹が一杯だったので、夫に私の分まで食べてもらい、しばらく休憩。海岸からの景色は、気持ちもおおらかになるようです。ここまででおよそ13㎞、あと半分あります。休憩を終えて、再び歩き始めました。
 14時30分、阿波の国最後のお寺、薬王寺へ到着しました。薬王寺のある日和佐は、こじんまりした港町で、うみがめの産卵などで全国的にも知られている町です。薬王寺の川を挟んだ対岸には、日和佐城跡も望めます。
 お参りを終えて、この日の宿へ向かいました。宿はJR日和佐駅すぐにあるビジネスホテル・ケアンズです。部屋で重たい荷物を下ろし、この日は薬王寺からすぐの温泉へ行くことになりました。今日も良く歩いたので、大きな湯船に手足を伸ばして浸かれることは、最高のご褒美です。
 温泉は人影もまばらで、しばらくゆっくり湯船に浸かり、この日の疲れも汗も、きれいさっぱり流すことができました。
 体がさっぱりすると、突然お腹の減りも感じ、今日はビジネスホテルなので、日和佐町内でご飯を頂こうと、ホテルを出て、まずはコンビニへ向かっていた時、その事故は起こりました。
 道からコンビニの敷地に入るところが少し段差になっていて、その段差を乗り越えたつもりだったのが、あろうことか、足が上がっておらなかったようで、その場に「ドタッ」と倒れてしまったのです。「ああーやってしまった」と思うも時遅し。私の異変に気付いた夫が戻ってきてみると、足からは派手に出血…。
 せっかくお風呂でさっぱりしたばかりなのに、こんなことになってしまって…。しかし、有難いことにコンビニの駐車場だったので、傷のお手当グッズをすぐに買いに行ってもらうことができました。薬用ウエットティッシュを使って、傷口を何度もふき取ります。そのうちに出血も収まってきたので、傷が見えないように、大きな絆創膏を貼り付けました。意外なことに痛みは感じません。
 コンビニ駐車場でお手当を終えると、気を取り直し、何事も無かったかのように、再び歩き始めました。目的は夜ごはんを頂けるお店。何軒か回りましたが、予約で一杯とか、臨時休業などで店は無く、仕方がないので、ホテル近くのスーパーでお惣菜と次の朝のパンを買い、すごすごとホテルに戻ったのでした。こんなことなら、最初からこうしておけば良かったですね。
 今回は今日の23番までが遍路の予定で、明日はその次の遍路に向けて、歩けるだけ歩いておこうと、朝4時の出発を予定しています。ご飯を頂いて、早々と休みました。

4日目

 最終日。予定通り3時に起床し、パンとコーヒーの朝食をとり、3時45分出発。辺りは漆黒の闇。この日は国道55号沿いを南下する予定ですが、さすがの国道も真っ暗です。歩き始めて空を見上げると、頭上にはオリオン座に満天の星。ヘッドランプの光だけが唯一の灯りで、真っ暗闇の中をひたすら歩きました。暗闇を歩いていると、自分と暗闇が一つに溶け込んだような、とても不思議な感覚を感じました。5時30分を過ぎると、ようやく辺りが少し明るくなり、夜が明けたばかりの国道をさらに南下します。
 ホテルを出てからおよそ15㎞、山沿いの国道から、牟岐という海岸線へようやく到着。今日の最初の目的地は、遍路別格のお寺、鯖大師本坊です。鯖大師さんまであと5㎞。お日様もすっかり上がり、気温も高くなってきた国道をさらに遍路します。
 8時、ほぼ予定通りに鯖大師本坊へ到着しました。23番薬王寺から24番室戸岬の先端にある最御崎寺までの道のりは82㎞と長く、鯖大師さんは、その途中のありがたい存在です。お参りをした後、落ち着いた佇まいの境内でリフレッシュさせて頂きました。

 鯖大師からさらに6.8㎞、今日のゴールはJR牟岐線の阿波海南駅です。阿波海南駅まで遍路を進めることができると、24番まではあと50㎞。50㎞でも長いのですが、それでも随分気持ちが楽になります。歩くペースを維持し、無事に阿波海南駅には10時に到着することができました。

おまけ

 4日間の遍路をこの駅で終え、帰りは14時8分発徳島行に乗り、徳島に16時過ぎ着、17時台の京都行き高速バスに乗る予定をしていますが、実は帰りの時間に余裕があれば体験しようと思っていたことがあります。
 それは、DMVという乗り物に乗る経験です。DMVはDual Mode Vehicleの略で、線路と道路のどちらもを走行することができるという乗り物です。この車体での本格営業運行は、世界発ということで、徳島の海陽町から高知の室戸にかけての大きな観光資源となっているようです。さほど時間も無いので、ただ行って帰ってくるだけなのですが、今回の遍路のおまけとして、DMVを楽しむことができました。

最期に

 無事に今回の日程も終えることができ、ようやく阿波の国の遍路が終わりました。が、まだ全行程の1/4。これからが本番です。次回は、11月の4日間を予定しています。さて、次回はどんな遍路になるのやら。11月も後半なので、寒さの対策も必要かもしれません。次回までに、準備をしっかりしたいと思います。
 

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