2回目

1日目



 前回からおよそ1カ月。時間があまり空いてしまうと、何となくモチベーションが下がってしまうような気がして、スケジュール的にはややハードだったのですが、お遍路を再開しました。まだ梅雨入りはしていませんが、梅雨間近の怪しげな空。週末の天気予報は雨。さて今回はどんな遍路になるでしょう。

 前回同様、仕事を終えた土曜の夜、19時台の徳島行バスに乗車、徳島へは22時過ぎに到着。車中でお弁当を頂き、腹ごしらえ。前回も宿泊した、駅近の「ひわさ」というビジネスホテルに宿泊しました。

 次の日は午前4時半起き。予め買っておいた菓子パンをかじり、お遍路支度を整え、5時30分駅へ向かいました。前回最終となった、11番藤井寺の最寄り駅となる徳島線、鴨島駅へは6時41分着。車内には人もまばらで、遍路姿も見当たりませんでした。時間節約のため、駅前からタクシーで藤井寺へ。前回、藤井寺から鴨島駅まで歩いた際は、とても長い行程に感じましたが、タクシーでは880円程度。以外に近かったんですね。

 そして午前7時、お寺の境内横から続く、「遍路ころがし」と呼ばれる難所道を歩き始めました。焼山寺までの行程は、1200年前、弘法大師が歩いたという道が現存している、歴史的にも価値のある道です。それだけに、これまでの遍路道とは違い、この行程は「遍路」というよりも「山歩き」と表現した方がぴったりの難所。事前に耳にはしていましたが、実際に歩いてみると、想像していた以上に厳しい道程となりました。

 山道を歩き始めておよそ60分で長戸庵に到着、さらに登り道を進むと、柳水庵、ようやく行程の半分ぐらいの所です。柳水庵から少し登ると、一本杉庵。ここでは、非常に立派な杉の木とお大師様が迎えてくださいます。ところが、ここからが最後の修行が始まり。急な斜面を一歩一歩、まさに這うようにして歩き、それが終わるといよいよ最後の登りです。

 今回のお遍路では、店で扱っている靴の耐久性も見ようと、私は「アサヒメディカルウォーク003メッシュタイプホワイト」を、夫は「アサヒフットケアシューズ002ホワイト」を履いています。前回は、全行程アスファルト道だったので、何の問題もなく歩けましたが、今回はまともに「山」。私の靴は、正真正銘のタウンシューズであり、さすがのメディカルウォークも、想定外の山道には対応することができず、特に下りは滑る事この上なく、いくらお遍路であっても、山道に限っては、やはり山靴を履くべきであると、思い知らされたのでした。

 ところが、夫の方は予想外に「アサヒフットケアシューズ」が良く、山道で白い靴が汚れる程度で、地面もしっかりグリップし、安心して歩くことができたそうです。ちなみに、アサヒフットケアシューズの開発コンセプトは、糖尿病足病変やリウマチなどの足病変に対応した靴。今回、山道にも対応できることが分かり、その守備範囲の広さに感心したのでした。

 歩き始めておよそ5時間、ようやく12番焼山寺に到着。いつものようにお参りを済ませたところで、天気予報通り、雨がパラパラ降ってきました。この後はしっかりした雨になるらしいので、雨具も着て、準備万端。後は今日の宿、植村旅館を目指すのみです。ところが、さすがに朝から何も食べていないので、目が回りそうなほどお腹がペコペコ。しかし、こんな山の上には何もありません。自販機があったので、とりあえず飲み物でも買おうと近寄ると、ありがたいことにカロリーメイトが入っています。普段は、絶対に食べたりはしないカロリーメイトとコーラを買って、腹ごしらえをしたのでした。

 木々に遮られているので、少しはましですが、それでも結構本格的な雨のようです。下りの斜面では、とにかく滑らないように、細心の注意を払いながら歩きました。山道をおよそ3時間、今日の宿、植村旅館に到着しました。

 到着すると、すぐに女将さんがドボドボのカッパを預かってくださいました。そして濡れた靴はというと、玄関の靴乾燥機にかけ、濡れた靴下などは洗濯カゴへと、テキパキと手慣れた様子で、早々に部屋へ案内してくださったのです。さらに、すぐにお風呂の用意もしてくださって、疲労でズタボロになった私たちには、神様のように見えたのでした。

 今回この宿で驚いたことがありました。お風呂から上がったら、女将さんが「こちらへ洗濯物をどうぞ」と、先ほどの洗濯カゴを持って来られました。洗濯機を使わせてもらえるのだと、その日着ていたものを洗濯カゴに入れ、洗濯をさせて頂いたのですが、その後、洗濯していたことなど、すっかり忘れていたところ、「洗濯ができました」と、洗濯物が乾かされ、おまけにすべて畳まれた状態で、部屋まで届けて下さったのです。これには、驚きました。というか、申し訳なく思ったのですが、後で本を読んでみると、遍路宿などでは、洗濯のお接待というものがあると書かれていました。

 朝7時から約9時間、歩き続け、雨に打たれた体に、熱いお風呂が染み渡りました。お風呂から上がり、しばらくすると夕食。こちらも、お昼を抜いていただけに、待ちに待った食事です。ボリューム満点の夕食を頂いて、久しぶりに動けない位お腹がパンパンとなり、歯を磨いて布団に入ったのは、8時頃でした。それでも、あっという間に熟睡。充実し過ぎの1日目でした。


 

2日目

昨夜は早々と布団に入ってしまったので、朝は4時ごろに目覚めました。まだ雨は少し降っているようです。なるべく早く出発したかったので、朝食は6時にお願いし、予定通り7時に出発しました。まずは、ここから12㎞ほどの13番大日寺へ向かいます。昨日と打って変わって、少々雨は残っているものの、平和なアスファルトをひたすら歩きました。大日寺まであと2㎞という辺りで、おじさまから健康ドリンクのお接待を受けました。

 それにしても、「お接待」という風習が、今も四国に残っていること、本当に素晴らしいと思います。前回もそうでしたが、白装束を見かけるとすぐに何かしらの気持ちを渡す、あるいは伝える。四国を歩いていると、「お接待」は今も人々の中に息づいていることを感じます。他の国々でも、聖地巡礼というものがあり、ただただ聖地を目指して歩き続ける文化や慣習は残っていますが、「お接待」は、見返りを求めたりしない「pay forward」の気持ちであり、恐らく他を見回しても、こんな文化を持っているのは日本人だけではないでしょうか。日本人のアイデンティティが、失われつつあるのではと感じることも多い昨今ですが、日本人もまだまだ捨てたものでは無いと、嬉しくなりました。

 大日寺でお参りを済ませ、先ほど頂いたドリンクを飲んで、14番常楽寺さんへ。14番から17番までは、それぞれのお寺は比較的近いので、一気に17番まで歩きました。今回はここ17番までの予定で、まずは無事に予定終了。ですが、次回の行程を少しでも先へ進めておこうと、18番恩山寺へ向かって歩き始めました。恩山寺へ向かう途中、地元のうどん屋さんへ立ち寄ると、うどんはもちろん、おでんも魅力的で、うどんとおでんで腹ごしらえ。よくよく煮込まれた大根、卵、すじ肉をおかずに、コシのあるおうどんを頂きました。

 15時30分、うどん屋を出て、さらに歩くことおよそ7.5㎞、JR二軒茶屋駅に到着しました。ちょうど、眉山という徳島駅前の山裾に沿って歩く感じです。山裾を歩いている途中、いくつも神社があって、この山が地元の人にとても愛されていることを感じました。

 予定通り、17時過ぎにJR二軒茶屋駅に到着。駅の待合室でさっと着替えをして、徳島駅へ戻りました。先ほど、うどんとおでんを食べたばかりだったので、さほどお腹も空かず、駅前のカフェで時間を過ごし、19時15分のバスで京都へ戻りました。

 今回は、3つの峠を越える山道を伴う行程で、足はパンパン。普段、ランニングで鍛えているからと、それなりに自信があったのですが、それを上回るような厳しい遍路となりました。それでも、2日間を終えた後は、それ以上の充実感を味わうことができ、また一つ、お遍路の魅力を知ることができたようです。次は秋ごろの予定をしていますが、体力も健康も、次回に備えて維持しておきたいと思います。




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