4回目のお遍路 11月20日~23日

1日目

 今年最後のお遍路は、前回終了した徳島県、阿波海南駅からのスタートです。11月19日(土)店を終え、いつものように19時10分発徳島行の長距離バスに乗りました。先月あたりから、京都にも多くの旅行客が来られていますが、徳島行のバスも、これまでならば2~3割程度の乗客が、今回は7,8割詰まっていて、人の動きが戻ってきていることを感じました。
 バスの車内でお弁当を頂き、徳島には22時過ぎに到着。今回も駅前のホテルです。チェックインを済ませ、部屋へ入ったら速攻ベッドにもぐりこみました。
 20日(日)は、朝4時起床で、パンとコーヒーで簡単な朝食をとり、5時にホテルを出発し、5時31分徳島駅発の牟岐線で、阿波海南駅に向かいました。辺りはまだ暗く、車内には私たちを含めて5名のみ。各駅停車のこの列車で、のんびりと目的地へ向かいます。列車が南下するに従って、緑の山々が目立ってきます。京都では紅葉真っ只中ですが、こちらでは紅葉はまだ先のようです。
 今日は終点阿波海南駅から歩き始め、およそ30㎞地点のロッジおざきさんまでの行程で、お寺はありません。室戸岬までの長距離区間の始まりです。山道を縫うように列車は走り、8時過ぎに阿波海南駅に到着しました。
 気温は13℃、快晴です。8時13分に駅をスタートしました。まずまずのコンディションです。10時、道の駅宍喰温泉で小休憩をとり、再び海沿いの国道55号線を南下します。10時30分、高知県に入りました。
 少し歩くと、生見というサーフィンスポットにやってきました。この辺りはサーフィンのメッカのようで、たくさんの車からサーファーたちが浜辺へ繰り出していました。私にとってサーフィンは、全く未知のスポーツですが、根強いファンがおられるのですね。
 さらに55号線を南下しますが、お昼近くになり、気温も徐々に上昇、じりじり照り付けるお日様で体力は消耗、また変化の無い岬回りの国道が延々と続き、気持ちもめげそうになります。お腹も減り、どこかで休憩を取りたいと思いながら歩いていると、12時30分、ようやく淀ヶ磯休憩所という小さな遍路小屋に辿り着きました。
 お昼ご飯は特に準備していなかったので、朝の残りのドーナッツを頬張り、水で喉を潤し、気持ちを切り替えて歩き始めました。
 16時、今夜の宿「ロッジおざき」さんに到着しました。

 宿に着くと、お風呂がもう沸いていますとのことで、すぐに入れて頂きました。長時間歩いたあとのお風呂は最高です。お風呂から上がって、しばらく部屋で休み、夕食。この日の泊まりは、私達を入れて3組。そのうちのお一人は、ここまでの道中、先になったり、後になったりしながら、同じ行程を歩いておられた男性で、お伺いすると、「通し」で周っておられるとのこと。12月初旬までの日程と仰っていましたが、無事に遍路を続けておられるでしょうか。この宿は、若い女将さんが、お一人で切り盛りされているようです。この界隈の名物、金目鯛を使った料理を堪能させて頂きました。

2日目

 海に面した宿の、海に面した部屋で、窓の外は大海原。6時前に起床すると、もうすぐ昇るお日様で、地平線はオレンジ色に輝いています。夜明け前の何とも荘厳な景色です。今日の遍路行程を考えると、今朝はもっと早くの出立を予定していたのですが、どうしても1軒寄りたい所があって、そこのオープン時間に合わせるため、比較的ゆっくりした朝になりました。6時30分に朝食を頂き、8時に宿を出発しました。10分ほどで、鹿岡の夫婦岩というスポットを過ごし、9時10分前に、今回、寄りたかった「むろと廃校水族館」に到着しました。以前は小学校の校舎として使われていた建物を上手く利用して作られた水族館で、近海で捕れた魚などを中心に展示されています。プールには、サメやカメ、魚たちが悠々と泳いでいました。あまり長くなると、その後の行程に影響するので、予定通り30分で切り上げ、9時30分に室戸岬へ向かって歩き始めました。歩き始めて3分ほどして、杖を持っていないことに気づき、慌てて金剛杖を取りに戻りました。
 相変わらず海の景色しかない国道を歩き、室戸岬の少し手前にある「御蔵洞(みくろど)」へ到着したのは11時30分。空海さんが修行をされている時に、明けの明星が口に飛び込んできたという、神聖な場所です。大きなお大師様も立っておられました。
 御蔵洞を出て、室戸岬のほぼ先端に差し掛かった辺りから、歩き遍路の登山道があったので、そこを登って行くことにしました。岬をぐるっと回ることを思えば、行程はやや節約できますが、短い距離を一気に登るので、そこそこの山登りになりました。
 12時過ぎに24番最御崎寺に到着しました。徳島辺りを歩いていた時、国道でしょっちゅう見かけた、「室戸岬まで100㎞」の道路標識。いつになれば室戸岬へ辿り着けるのかと思っていましたが、遂にその室戸へ辿り着くことができ、喜びもひとしおです。お参りを済ませ、13時にお寺を出発し、次の25番津照寺さんへ歩き始めました。約5㎞先の津照寺さんへは14時に到着、お参りを済ませ、15時にお寺を出発しました。次のお寺までもおよそ5㎞の行程です。16時に金剛頂寺へ着き、お参りを済ませ、今日の宿であるお寺の宿坊を尋ねました。こちらでも、お風呂がもうすでに準備されていて、部屋へ入ってすぐにお風呂へ入れて頂く事ができました。歩き遍路にとって、ゆっくりお風呂に浸かれることほどありがたいことはありません。足を伸ばして、熱いお風呂で一日の疲れを癒すことができました。
 食事は18時からと聞いていましたが、いつまでたっても食堂が開かず、19時にようやく食堂へ入ることができましたが、とてもお寺の宿坊とは思えないぐらいの豪華なお料理の数々です。たくさんのお刺身、天ぷらにお魚の煮つけ、酢の物、茶わん蒸しなど、お腹一杯食べさせて頂きました。何でも、この日予定されていた3人の方がお見えにならず、それで食事の時間が遅くなってしまったとのこと。どんな事情があったかは分かりませんが、お遍路の宿坊ではあるまじき事態ですね。
 この日もお腹いっぱい頂き、すぐに床に就きました。

3日目

 3日目の今日は、4時起床、4時30分の出発です。このお寺から次の27番神峯寺までが32㎞、さらに10㎞先の安芸市内のホテルが今日の目的地です。昨夜、宿坊の方に聞いた通り、ヘッドライトをつけて、真っ暗な山道を国道へ向かって歩き始めました。山の上から眺めた空は、実に満天の星。今日も良い遍路になりそうです。
 国道に出て、夜明け前の道を歩いていた時のことです。軽トラックに乗っておられたおじさんが、突然やって来られました。「何やろ??」と思っていたら、「これでお茶でも飲んで」と、差し出されたのは「1000円札」。
「!!!!!」これまで飴ちゃんやオロナミンCなどをお接待で頂いた事はありましたが、現金というのはこれが初めてです。それも1000円。驚くとともに、手を合わせて、大切なお接待を頂戴したのでした。
 その後も国道をひたすら遍路し、途中、幾つかの漁港を過ごし、




 国道をひたすら遍路し、途中幾つかの漁港を過ごし、8時、羽根岬灯台の休憩所で、ミカンとお饅頭を頂き、さらに国道を遍路し、9時40分、奈半利という町のなはり駅に到着しました。重要建築k仏奈半利は、「ごめん・なはり線」という電車の始発駅がある町です。安芸郡の奈半利駅から南国市の御免駅を走る、土佐くろしお鉄道というのが正式名称です。この鉄道の各駅には、やなせたかし氏によるキャラクターが一駅ごとにいるそうで、この区間の観光列車になっているようです。安芸も、古くからの港として栄えた町で、奈半利にもその面影が残っているように感じました。
 10時、なはり駅すぐの喫茶店で、モーニングを頂きました。みやおコーヒというこじんまりした喫茶店でしたが、ホットサンドもスープもコーヒーもどれも美味しく、お接待としてフルーツなども付けてくださいました。一番感激したのは、店主さんがノーマスクだったこと。道を歩いていても「マスク」をしている人ばかりなのに、こちらは店内でもマスクフリー、消毒液も置いておられません。嬉しい限りでした。
 モーニングでリフレッシュし、あと10㎞のお寺まで歩き始め、11時45分に山の入口へ到着、そこからひたすら山道を歩きます。12時52分にお寺へ到着し、お参りを済ませ、13時30分にお寺を後にしました。
 お寺を出てから、美味しいと聞いていた「うどん屋」さんに入り、山菜がたくさん入ったうどんを頂いた際、そのお寺で有名な「病気平癒の清水」をお接待として頂きました。
 14時に、今日の宿がある安芸市内を目指して歩き始めました。15時30分、大山岬の休憩所で小休止し、先ほど頂いたお水を、一口二口飲み、最後の気力を振り絞って歩き始めました。しばらく歩いたところに、「お遍路さんのために育てたみかんです。採って行ってください」と書かれていたので、最後に一つ残っていたみかんを有難く頂きました。
 17時ホテルに到着。この日はホテルタマイというビジネスホテルが宿だったので、安芸市内に銭湯でもあれば行こうと、前もって探してみましたが、なんと安芸市内にはお風呂屋さんがありません。しかし、このホテル内に大浴場があるとのことで、この日も有難いことに、手足を伸ばしてゆっくり大きな湯船に浸かることができ、およそ40㎞の遍路疲れも、一気に吹っ飛んでしまいました。明日朝のパンと飲み物を購入し、お風呂の後、ホテル近くの白牡丹という居酒屋で食事をし、21時に床に就きました。明日は朝から雨の予報です。

4日目

 この日は高知へ向かっての遍路で、予定起床時間は午前3時。ところが、夜中、私は2回、夫も2~3回、お腹が痛くてトイレへ通っていたことが、起きてから判明。夫によると、昨日頂いた「ペットボトルの水」がどうも原因のようです。何度かトイレへ通って、一旦は腹痛は収まったものの、何かを口にするとまた、催してきそうな様子です。朝ごはん、飲み物、一切何も口にせず、予定していた時間より30分遅れでホテルを後にしました。すでに雨も降っていて、傘を差しながら、黙々と国道を歩きました。ところが、心配していたように、歩くうちにまたお腹が痛くなってきました。しかし、夜明け前の国道には、休憩所も見当たらず、できるだけお腹の事を考えないようにしながら、淡々と歩き続けました。およそ3時間ほど歩いたところで、ようやく待望の休憩所があり、急いでトイレへ駆け込みました。しかし、またお腹が痛くなったら嫌なので、ここでも食べ物は口にせず、歩き始めました。雨も徐々に激しくなっています。
 8時30分、道の駅やすに到着したころは、ほとんどお腹の調子も回復していたので、パンを一つ食べました。次のお寺までは、あと10㎞ほどです。
しかし、雨はさらに強く、体の調子も今一つ優れず、歩く速度がどんどん落ちて行きました。意識ももうろうとし、惰性だけで歩いているような情けない様子です。28番大日寺へは、ヘロヘロな状態で、10時30分に到着しました。最終日の今日は、少なくともあと2ヶ寺を廻る予定でしたが、この様子ではとても辿り着けそうにありません。それでもせめてあと1ヶ寺だけは廻らなければと、気持ちを入れ替え、10㎞先の29番国分寺を目指して歩き始めました。先ほどと比べ、雨も小降りになっています。
 歩く事だけを考え、淡々と足を進め、14時に国分寺さんへ到着し、お参りを済ませました。今回の遍路は国分寺さんで終了となりました。
 帰りは高知空港から、ANAの最終便19時10分で戻る予定です。国分寺さんの近辺は、バスも鉄道も何もなく、タクシーを呼んで、最寄りの御免駅へ行ってもらいました。15時3分発の高知駅行きの電車に乗って、高知駅へ到着すると、すぐに16時30分発の空港行のバスが有ったので、飛び乗りました。
17時に空港に到着、時間は十分あります。空港内のベンチで、白装束を脱ぎ、着替えをし、荷物を預け、ようやく身軽になってホット一息。高知空港内には、お遍路さん用の更衣室が用意されていました。
 19時55分、無事に伊丹へ到着し、空港バスに乗って我が家に戻ってきたのでした。
 これまでのお遍路では、体調を崩すことも無く、ほぼ予定通りに歩けていましたが、今回は、たった一口の水で、予定が随分変更になってしまい、大きな教訓となりました。遍路最中には、生ものはご法度ですね。
 次回は、いよいよ高知市内に入ります。なるべく間をあけず、次の遍路へ出かけたいと思っています。

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