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短編小説

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これまでに書いた短編小説をまとめています。
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#恋愛小説部門

ショートショート | 夜をながれて

その国はずっと夜だった。 人々は、夜の星とランプのあかりだけを頼りに生活した。 しかし、ランプはずっと灯っているとは限らない。 ランプが切れると、人々はカーテンを開けて空を見上げた。 外に出て、少し散歩をする者もいたし、広場で追いかけっこする子どももいた。 老人は古いバイオリンで寂しい音色を響かせて、恋人たちは手を繋ぎながらお互いの温もりを感じとった。 リアムは、町を見渡せる丘へ出ると、いっぺんに落ちてきそうな夜の星々をしばらく眺めた。 星のあかりに照らされた薄

ショートショート |ピエールとエリス

隣の家に住む若い夫婦がいつものように喧嘩をはじめた。 どうやら夫がミルクを買い忘れたらしい。 「だからメモを書いてと言ったじゃない。」 と妻が苛立ちをあらわにしている。 「人間忘れることだってあるじゃないか。」 と夫も負けていない。 毎週のように隣で繰り返される口論はもう恒例行事となった。 自身も、昔は妻と何度喧嘩したことか。 一週間口を利かないこともざらにあった。 怒った時のあの妻の表情。 思い出すとピエールはおかしくて笑った。 妻のエリスと出会ったの

ショートショート | あの人

その人は、いつも片手をポケットに入れていた。 姿勢はいいように見えたけど、 視線はいつも下のほうを向いていた。 その人がその道を通ったのは、風が涼しくなる 夕方の時間だ。 ピアノの練習をしていると、私の お気に入りのその小窓からその人のことが見えた。 その人には聴こえないかもしれない。 でも私はその時刻になると、ピアノをいつもより 丁寧に弾いた。 気づいてくれるかもしれないんだから。 嫌いだった練習曲も、そのおかげで 上手に弾けるようになった。 「いつも鍵盤を

【短編小説】『ロボットのアニエスが好きになったのは、頭がはげたおじさんだった。』

ロボットのアニエスが好きになったのは、頭がはげたおじさんだった。 頭が綺麗にはげていたから、人混みの中でもおじさんのことを目で追うことができた。 そのおじさんの頭は、きれいにはげていた。 毛は一本もなく、太陽の光が当たるとだれよりも光った。 ときどき人混みに紛れて見失いそうになる瞬間もあったが、その日はお天道様が空高く照っている日だったから、おかげでおじさんの頭はピカッと光って、アニエスはいつでもおじさんの位置を把握することができた。 アニエスは、孤独な博士が生み出