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封地遺跡の土偶(縄文時代)

 一般的に、長野県内では縄文晩期の遺跡は少ないが、佐久地域北部では、小諸市氷遺跡や七五三掛遺跡など、重要な遺跡が点在する。また同じく小諸市石神遺跡からは、遮光器土偶の頭部が見つかっており、東北地方との繋がりを感じさせる。
 同じような理由で、佐久穂町封地遺跡の土偶にも注目したい。封地遺跡は、2003年に発掘調査されたが、左岸の千曲川低位段丘にあり、主に後期から晩期の遺物が出土している。特に晩期では、関東の安行系、東北の大洞系といった土器が見られ、各地との交流点としても注目されている。
 取り上げた土偶は、長さ11.5㎝ほどの中空で、目と鼻の表現があり、口に見える穴もある。左右には手、あるいは耳の張り出しがあり、2本の足も付けられている。それは確かにヒトガタであるが、実はそれぞれの要素の多くは、北海道美々4遺跡などに代表される中空の動物型土製品に求めることができ、遠く当地に伝わる過程で、本来のものからヒトガタに変化してしまったのではないだろうか。比較的よく特徴を残した、石神遺跡の遮光器土偶とは対照的とも言える。
 佐久の縄文晩期も侮れない。
(藤森英二)

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