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柑橘を食べる

いつか、「お風呂上がりに全裸で柑橘を食べることによって僕らは宇宙に行ける」ということを提唱してはや数ヶ月(たぶん)。それについて言及する時が来た。

そもそも人間として、「食べる」ということは至極動物的である。食べなきゃ死んでしまう、他の命を奪わなくては死んでしまう、そのくせ命を奪うことを良しとしない、自分らのことは目を瞑り、今日もとある命をとって生きている。

まあこれをdisりたいのではない。一般に、命や魂というのは「心臓」と呼ばれる部位にあるとされている。

はて、果物などの植物は魂は無いのか?

そんなことをお風呂で考えながら眠りに落ちる。目が覚めてもろもろ済ませて全裸のまま、テーブルの上にある柑橘を発見する。

服は自室にあるからわざわざとってくるのはめんどくさいな、とか思いつつ、橙色のそれを口に運んだ。

そこから私は宇宙に飛べるのである。いや、正確に言うなら、口内を宇宙にできるのである。果実から噴き出る果汁をただ一枚の粘膜で受け止め、爽やかな酸味に包まれたまま、飲み込んでいく。

日々我々はたわいのないことで喧嘩しあったり、仲直りしたり、距離が離れたままになったり、いろんな関係の中で生きている。しかしその瞬間だけは、一人のヒトとして、食という業に向き合うのである。その瞬間は、さまざまなしがらみから解放されつつ、自分の愚かさをひどく実感させられるのである。

(効果には個人差があり〼。)