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残る記憶 残らない記憶

山形から母が遊びに来た。

足も腰も痛いけれど

気が強い母は弱い所を見せない。

足腰のサポートに手をひこうもんなら払いのける。

まだまだ老人扱いさせないわよ!

という意気込みを会う度に感じる。

母は子育ての記憶がほとんど無いと言う。

仕事も忙しかったから忘れちゃったのかしら~と。

確かに彼女は検査技師として病院に長年勤め

いつも忙しそうだった。

家でゆっくりしているのを見た記憶がない。

彼女は最後は、技師長にまでなった。

病院で見る白衣姿の母は格好良く、

誇らしかった。

でも、

私は「子育てのこと何にも覚えてないの。」という

言葉を母に言われる度に傷ついていた。

自分も子育てしている中で、私が小さい時は

どうだったか参考にできないのは

残念で悲しかったし。

それと、記憶≒愛情(どれだけ覚えているかが愛情の度合いに比例する) という意味合いも

持つんだと思っていたから。

彼女は何を覚えているんだろう。

今回も「忘れちゃったわ~」「全然覚えない」

と言われた場面があったけど

今まで程は傷つかなかったな。

この世に誕生させてくれただけで有難い。

みたいな気分になって…。

私自身、子育ても落ち着いてきて

自分の内面もだいぶ耕されたからというのも

あるだろう。

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義母は、100歳を越えた自分の母親が

5人も子育てしたのに

自分の女学校時代のことしか覚えてない。

ということを寂しそうに語る。

彼女にとって一番輝いていたのは

女学校時代なんだわね。と。

義母の母は、娘のこともほぼ忘れてしまったらしい。

何となくは分かるけど、「私は誰?」と聞くと

答えられないことがもどかしいのか

怒るのだそう。

だから義母はもう聞かないことにしたと

だいぶ前に語っていた。

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母に、最後に残るのはどんな記憶だろうね。

と聞いたら

私は、ボケないと思うわ!

といつもの強気な調子で言っていた。

私の最後に残る記憶はなんだろう。