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29年前、息子(1歳半)を亡くしました。

インフルエンザ脳症というものでした。

あれ?熱い…
少し様子を見て…と、
普通の風邪のつもりで抱っこしていたら、
突然ぐったりとして…

そこから泣くことも声を出すこともなく、
26日間、意識が戻らないまま
亡くなりました。


それからしばらく私はどうやって生活していたか、断片的にしか覚えていません。

3月10日になくなり、桜の季節がやってきました。
あちこちの桜を見に行きました。
仁和寺、芦屋川、そして…


姑が
「あんたのこと見ていられへん!どこか暖かいところにでも旅行しといで。」

夫は必死に旅程を考え、三泊四日の九州旅行をしました。

飛行機からの日南海岸の眺め、高千穂峡、湯布院の宿、車窓からの桜やハナモモ、博多駅。
断片的にしか記憶がありません。

この中でも1番印象深かったのは湯布院の宿『夢想園』。

ここに泊まったとき、息子が帰ってくるような予感がしたのでした。

亡くなる2日前、「もうこんなに何日も頑張ったからいいよ、もう一回お母ちゃんのお腹に戻っておいで!」
声にならない声だったと思います。

意識が無いために色んな事がおきます。
色も変わってくるし、腸も出てきてしまう。
もう可哀想で可哀想で…
そんな言葉が出てしまいました。
すると、
それまで意識がなかったのに左手がポンと上がったのです。
まるで『はいっ!』と、元気に返事をしてくれたように。
息子は意思表示するときはいつも左手でした。
びっくりしました。

慌てて主治医を呼びました。
でも、意識は無いまま。
けれど、私たちはちょっとだけ前向きになれました。

ー帰ってくるって約束してくれたのかなー

そんな不思議なことを受け入れてくれるような床間の掛け軸の絵。
優しくこちらを見おろす由布岳。

守られている気持ちでした。

旅行から帰ってきて数ヶ月後、妊娠していることがわかり、
予定日より早く、12月10日に娘が産まれました。

大きくなったらいつか3人で『夢想園』に泊まりたい。
ずっとそう思い続けて、やっと今回実現したのでした。


29年前はホテル側の都合で、離れに泊めて頂きましたが、
今回は、前回予約していたロッヂ風な方に泊まりました。
由布岳を眺めながらの露天風呂は最高です。




cafe天井桟敷
ここも29年前とあまり変わっていなくて
とても落ち着いた、良い時間を過ごすことができました。



金鱗湖
小さな湖だけど、水の流れや魚もいっぱいいて、心を落ち着けるのにはちょうど良いです。

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