【試し読み】石田幸丸×鈴木三子 『彼/私/ 』
文学フリマ東京38にて頒布予定の合同誌「Quantum」から、編集部員が二人一組で前後半に分かれて「共作」を行った作品について、前半の一部を試し読みとして公開します。続きはぜひ雑誌をお求めください。
石田幸丸×鈴木三子 『彼/私/ 』
私がカッターで鉛筆を削る音がする。細く、長く、芯を削り出して、天窓から降る灰青色の光にかざす。マルス・ルモグラフの光沢のない黒が、その瞳の縁に溶ける。
彼はコートを脱いで、台に上がった。私がじっとこちらを見ている。
「よろしくお願いします」