小説2、 2
「君は何を読んでいるんだい。」
そう誰かがそう言った。
手記を読むのに熱中していたから、誰かが前に来ていることに気づかなかった。
「あぁ、えーっと、文章ですけど、気になります?」
「そうだねぇ、気になるか気にならないかと言えば気になるかなぁ。君を見ていると何年前の出来事を思い出すんだ。君位に若い頃、僕は友人と遊びに行ったのさ。
合唱している人達を見かけたんだ。友人は遅れるとかいうからねぇ、少し覗いてみたんだよ。
歌って素晴らしいものだよねぇ、君は生の合唱を聞いたことがあるかい?」
「そうですね、少し音楽に触れていたので聴いたことありますよ。」
「そうか。それはいい経験を得たものだ。君は今一人かい?」
「そうですね、本に熱中していたもので。普段は本しか読まないし、本を読む友人なんていないですから。」
「そうだろうね。君は賢い子だ。僕はそうだ、そこまで本は好きではないんだよ。このタイトルは雪っていうのかい、楽しそうな本ではなさそうだなぁ、君はこんな本を読むのかい」
少し寒気がした。
「そうですね、最近はこれを読んでいます。
ここ座りたいなら、どうぞ、僕は家に帰ってすることがあるので、」
と足早に帰ることにした。
あの人怖い人だ。全く優しさを感じない。そう、外面はとても優しそうなのさ、どこか殺意を感じる。
僕は森を抜けた、ここは森の奥深くに存在する公園なんだ。湖が広がっていてね、家が一軒建っている、そんなところだった。
ベンチに座って本を読んでいたんだよ。確か誰もいなかったはずだと思うんだけれどなぁ。僕が本に熱中していたから、気づかなかった、きっとそうだろうな。
彼について考えるのは、今はあまりよくない気がする。
僕が森を少し抜けたところを歩いている時に少女が僕を眺めていた。
じっと見つめているので、話しかけてみようと思ったんだ。
「僕の顔に何か付いているかい?」
彼女は静かに首を振ってこう話した。
「お兄さん、あの人にあったでしょう?」
彼女は何か知っているようだった。
「あの人って誰だい?」
「森の中で逢うことができるあの男の人のこと。」
「あぁ、会ったけれど、それが何かあるのかい?」
「えぇ、彼は恐ろしいわ。本当に、話しかけられたら、、、。もう、貴方はもう、狙われているわ。あぁ、これ、これを持っていたら、貴方確実に狙われるわ。」
「雪?これかい?これは僕の家に存在してね、何故存在しているかは知らないけれど、ずっと置いてあってさぁ、殺人事件の被害者が手記として残したんだよ。彼はまだ若かった。」
「これは彼が一番隠したがっている真実よ。彼は人を殺したことを隠したがっている。」
「何故そんなに彼について詳しいのかい?」
「さぁ、教えられることは無いけれども、貴方は彼に積極的に関わらなくてはいけないのよ。何も気づかれずに殺すのよ。」
「殺す?僕が殺すのかい?僕は彼が人を殺したとしても、彼を殺す資格はないよ。何故彼を殺さないといけないんだい?」
「殺さないと、貴方がおかしくなる、おかしくなるから、貴方は早く、殺さないといけない。」
「僕が、おかしくなる?どうしてだい?彼は人間じゃないか?」
「そうね、また必ず、現れるから、それまでおかしくならないでいるのよ。
私にはそこまでしか言えない。そしてその手記を読み切った方がいいわ。
彼についての情報や彼の友人の情報が詳しく載っているはずだから。」
彼女は颯爽とビル群の奥底へ去っていった。
僕がおかしくなる?何のことだ。彼に恐怖を感じたが、それ以外に何か彼に感じるのか?いや、僕は彼に殺意を抱かないし、そして彼から早く逃れたい、そう感じるんだ。僕が一方的に突き放せば、貴方は、僕を見逃してくれますか?
僕は貴方を殺したくないし、そして僕自身がおかしくなるのは嫌なんだ。
どうすればいいんだ。彼女は殺せと言うし、言うのは簡単でも殺すのは簡単じゃないよ。殺して僕は褒められることなんてないのに、殺せというのかい。何のために彼を殺すんだい?彼女がそういうからか、彼女の利益のためかい?僕の利益を放っておいて、彼女の利益を尊重するのかい?おかしいじゃないか?僕はこの事件の真相を知りたいだけなのに。
僕と彼女に何の関係があるんだ。僕は僕の道を歩くべきだろう。
何故、僕をこんなに侵食して離さないんだ。僕はさっきまで自由だっただろう。何故彼女の意見に囚われる。誰かを殺したなんて言いがかりをつけて、彼を貶めようとしているだけじゃないのか?
あぁ、僕を貶めようとしているのかい?
何故こんなに疑っているかも分からない、彼女も彼も怖すぎるんだ。
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