短編1



そこには海が広がっていた。

僕はただそれを桟橋の端に座って眺めていたのさ。

寒い地域に思いを馳せてみたりしたのさ。
僕は最近寒い地域に疑問を抱いてばかりだ。
蟹を食べたいとかじゃないけどさ。

僕は何年かたって、この寒い地にいる。だいぶ落ち着いた。
あぁ、どうすれば真相に近づけるのか、そしてどうすれば、自分がスケートを滑れるようになるのか。海が氷になれば毎日練習できていいのかとかそんなことを考えていた。

まぁこんなあったかい、暑い?地域じゃそんなこと起きないけどね。

僕は手紙を読んでは、ため息をついた。
僕は死ぬ可能性が高いことをしようとしている。もしくは限りなく、無謀な戦いに巻き込まれそうになっている。


ここに何年か前にさ、有名な人が来たんだ。
本を書いている人なんだってさ。

僕らの街とは違って、寒そうな地域に住んでるんだってさ。

バカンスかなんかなのかな、本をくれたんだ。

まぁ多分売れてなかったんじゃないかな。配るなんてそうそうしないよ。

全然読めない字で書いてあってさぁ。
その人は凄くすらすらと僕たちの言語を話してはさぁ、楽しそうにしていたけど、渡すものは翻訳版じゃないんかいと思ったね。

まぁ言語の勉強になるかと思ってね。僕は読もうと決心したんだよ。

その人に頼んだんだ。「どうしたら、この本読める?」って、そうしたら、まぁ少し教えてくれたけど、最後には、ばっと辞書を渡すだけだった。すぐに去って行ったよ。
自分の国の言語好きじゃなかったりするのかなぁ、いやそんなことはないな、そうしたらちゃんと翻訳版をくれるだろうからさ。

結構前にその人は亡くなったんだ。

帰って何年か経ってるからさ。そしてまだ若かったんじゃないかなぁ、僕は知らない。彼のことは何にも知らないんだ。

彼は分かっていたように、手紙をくれた。

君がこの本の内容をすっかり理解した時に、僕の街に遊びに来ればいいと

まだ全然読めてないのにそういうからさ、自分が死ぬまでには読んでみよう、そう思った訳さ。

もうすっかり理解してしまったよ。
僕も頭が良くなったみたいだね。


そろそろ行った方がいいのかな、どう先生?
僕も分からないよ。だって先生のこの本怖いから、内容はちゃめちゃだし、意味分かんないし、僕はこの本に、先生に選ばれたってことなの?どうなの?


僕はまだ決心はついていないみたいだ。

最近はこの言語について教える、またはその言語を使う人を案内する仕事をしている。
何しろ先生、彼がここについて文章を書いたからね。
先生の最期の作なんだ。これでここも有名になることだろう。
別に前から有名だったんだけどさ。
本当、先生のブームって凄まじいんだね。
普通の人じゃないんだね。影響力絶大だね。

僕はまたまた何年も訪れずに時間が経過しそうになっていた。

ある日彼のことを研究している人が来たんだ。
僕はその人を全く知らなかったけれど、先生とお友達なのかぐらいにその研究者は僕のことを知っていた。

そうだね。君のことはよく知っているよ。先生の最期の作の「蒼」に出てくる少年は君だって、考えられているからね。本当に逢えて嬉しいよ。先生が亡くなった時は驚きと衝撃で半年ぐらい寝込んだんだ。世の中では大ニュース、僕は本当に悲しかった。僕が会ったのは一回だけなんだけどね、会いにいくのも烏滸がましいぐらいで、まだお若いから、またいつでも会えるだろうと思っていたら、こんなことになってしまってね。
僕が会った一回というのは、先生の代表作「砂」、君が持っているその本なんだけれどさぁ、とてもいい作品だよね。僕は本当の代表作だと思っていてね。何回も何十回も読んだ。僕はこの翻訳版を出しているんだ。君は、翻訳されてない彼の本を読んだね。僕はそれと同等に、限りなく近いものに訳したんだ。是非君にも読んでほしい。僕は先生の登場人物みんな好きだからね。君にも先生の世界を楽しんでほしい。是非読んでくれ。そうそう、僕は彼との出会いを話していたんだね。そうだね。彼はもうその公園に行くのをやめたんだ。このシーンは本当に皆が見ておくべきだと思うんだけれども、ここの場所、本当に存在するんだ。僕はずっとそう、存在すると確信していたんだけどさぁ、行くととてつもなく、寒いんだよ。僕は何も起こらなかったし、何も悪い霊には取り憑かれなかったんだけどさぁ。君、君は熱心に聞いてくれるね。君と話せてとても嬉しいよ。
これから長い話になるからね、あぁ、そこのベンチでも座って話そうじゃないか。僕は君と話せて、いや君にその先生との話を共有できてとても嬉しいんだ。
僕が訪れたのは10年前、君はまだ若かっただろうが、彼も同じように若かった。僕は先生より2歳位若い、本当に早死にをして、もっと作品を残せたのに、君知っている?彼は死ぬ間際に発表してない小説を書いていたんだ。その作品はもう出ているんだけどさ。僕もまだ翻訳していないのだけれど、君にも見せてあげたいなと思って、持ってきたのさ。
君は読めるだろう?
で僕はある日嬉しくなって、そこの地を訪れたんだ。
そこには本当に何も無くて、だけれど洗練されていて、僕は涙を流した。ここがその土地かと。とても嬉しかった。僕は水を買った。結構買った、10本買った。
でベンチに座って、ちょうどこれぐらいだよ。独りで舞い上がってしまってねぇ、多分君も嬉しくなってしまうと思うよ。それくらい楽しい場所だった。
少しして、誰かがいることに気がついたんだ。湖を眺めている人を見つけた。彼だった。本当に死んだ人みたいだった。
死んだというのは失礼だが、とても青白い顔をした彼がいたんだ。僕は話しかけられそうに無かった。僕は彼の時間を邪魔してはいけないと思って帰ることにしたんだ。
後に調べた結果、そこに住んでいた、彼の知り合いが亡くなったそうだった。
話によるとここの事件に関わっている人は全員早く亡くなっているようなんだ。
やはり呪いみたいなものがあるのかなぁなんて思っていたりするんだ。彼もその事件に深く関わっているんじゃないかという見解が学会でなされていてねぇ。
僕もそろそろ死ぬんじゃないかという気がしている。

「あのそういえばなんですが、僕、先生からこんな手紙を貰いました。
ここには、君がこの「砂」の本を読めたなら、僕の街に遊びに来るといいと書かれていたんです。僕は本を読み終わってから戸惑っていて、僕はこの誘いに乗るべきなのか、でもさっき貴方が言った話だと、死ぬんじゃないかと思われているんでしょう。
僕も正直言うと早死にするのは嫌です。
先生もあんなに死ぬの嫌がってたのに早死にしちゃって、僕に未練を託しているのかなぁなんて考えたりして、僕どうしたらいいですか?」

そうだねぇ、僕も僕が死ぬかもしれなくて、誰かに託さなければならないとしたら、君に託すかもしれない。
君はそうだ。大学の生徒のように真面目だろう。君は大学に行っているのかい?

「いいえ、専門学校です。それでここの街は十分なんですよ。そして、僕もそこまで深く学ぶ必要がないと思っています。
だって僕の街、魚とかそう言う話とかの方が重視されるし、観光地域だから沢山他の国の人来るから、どちらかというと言語の方が大事なんですよ。」

そうか。僕も死にそうになったら、君に手紙を送ろう、そしたら君は何も思わず、先生の土地を訪れ、そして先生の心残りを改善させるんだ。それは先生が望んだことだろう。そうじゃないのか?君にしか頼めないと言っているのに何故君は行かないんだ。君が行かなくては一生達成することはできないし、君がそうやって、ずっと戸惑っていては、先生も報われないし、僕たち学会の研究も進まないんだ。君は行かなくてはいけないよ。きっといいことが起こるさ。先生が付いているのだから、信じなさい。そして僕も君の健闘をずっと祈っている。

彼は僕と1時間会話をした後に去っていった。

僕はそれから1年後に彼が亡くなったことを聞く。それから迷わずに僕は彼の土地を訪れ、先生と先生の研究者のためにもその謎を改善しようと考えたのだった。

駅から、出てすぐに美術館を見つけた。ここには多分、彼が持っていた青い皿が展示されているんだろうな。あれは珍しいんだ。
本当に大発見だったらしいよ。
彼はそれに関して非常に驚いたらしい。

僕はそう、その皿を見ては、達成しなくてはならないなという気持ちに絶えずさせられたんだよ。研究家の死は結構みんなにとって衝撃だったんだ。彼は僕の土地出身なんだけどさ、色々と渡り歩いているっぽかったからさ、どこに、結局どこに帰るんだろうとか思った。

この寒さは異常だった。多分僕にとっての地獄そのもののようだったね。僕の地域の暑さを思い出したいぐらいだった。

森へ近づくともっと寒くなってさ。僕は非常に厚着してきたんだけど、ダメだったね。温かいものを飲みたくなった。

公園に入ると誰か座っていた。
後ろを向いて、僕が寒そうに凍えているのを見つめていた。

「君は何しにきたんだ?僕はさぁ、ここの管理人をしているからさ、珍しい顔は分かるのさ。」

「貴方は、ここが怖くないのですか?僕は知り合いが絶えず死んで少々どころか、酷くここの空間に怯えているし、そして、ここは酷く寒いです。」

「ずっとここに住んでるからさ。怖くないんだよ。僕はここが好きだから。知り合いって父さんのことだったりする?父さんはここの管理人やっていてな、結構前に死んだんだ。
それか、父さんの友達だったりする?有名な小説家で同じくらいに亡くなっちまったよな。
まぁ確かにさ、みんな死んじまったけどさ、ここは何にも関係ないよ。父さんもそう言っていた。
小説家の人もそう言ってた。みんなそういうんだよな。何か隠したそうにしてるのさ。それで死んじまったら未練もタラタラだよな、ははは、で君は誰の遺言で来たのさ?」

「その有名な小説家の人だよ。彼が遊びに来いって言ってくれたんだ。」

「そうなんだ。じゃあ好きな分だけここにいればいいと思うよ。僕はまだ、勉強しなくちゃいけないからさ、僕も意外と好きなんだよ。その小説家、僕に本をくれるから、なんでいつもあの人本配ってるんだろうな。売れてないとか疑ったりするんだけどさ。話聞くと名作だって言うからさ、もっといい売り出し方あるんじゃねと思ったりするんだけどさ、小説家さんが良ければいいんだよな。もう会えないし、でもさ小説開けばいつでも会えるんだぜ。僕はそれがとても嬉しいよ。父さんはここでキャンプしているだけだったからさ。しかし稼ぎはたんまりあったんだぜ。何処から湧き出た金なんだろうな。御曹司だったりすんのかな?」

「貴方も先生が好きなんだ。貴方にも本を渡していたんだ。僕だけじゃなく、色々な人に渡しているんだ。僕ももっといい売り出し方があるんじゃないかと思うよ、、、あぁごめん、時間を取らせて、貴方がいい人生を歩めますように。」

「なんか、僕が死ぬみたいじゃん、やめてほしい。別に何度でも遊びに来ればいいんじゃん?どう?そうだと思わない?」

「ははは、そうだね。遊びに来るよ。その時は挨拶に行くよ。」

彼は帰って行った。

僕はそのあともずっと湖を眺めていたんだ。
少し歩いてみたりしてね。転んだ。

物凄い滑るんだ。僕焦っちゃってねぇ。
でも壊れなくて、感動した。

僕は転んで座った状態から、前の森をずっと眺めていたんだ。人影が、「彼」がこちらに来る。

歩いてくる、彼は滑ることもせず、転ぶこともせず、ただ淡々と歩いてくる。

ねぇ、君は、そうだ、あの時の、懐かしい、僕は、20年前もここに来たんだっけ?

僕は何故か震えが止まらなかった。
寒さもあったんだけど、僕はそう、彼を知っている。彼は人間じゃない。

「貴方は、何処から来たんですか?」

「えっ、僕かい?君はあの時の彼とは違うみたいだね。でも何処かそっくりだね。
僕はさっき帰って来たんだよ。僕の昔の名前は蓮だったかな?もう覚えていないんだ。
君の昔の出来事を覗くとさぁ、彼に会ったみたいだね。彼は恐らく今は、そうあの地にいるのか。いつか会いにいこう。で君は彼に託されたのかい?そうだろうね。彼は分かっていたのか。僕がまた現れることをそして、彼がもうここにはいないということを。
僕は完全に死んだりしないんだ。
死んだらまた再生すればいいだけだからね。君は僕に何を見せてくれるんだい?
彼は君を見込んでここに来させたみたいだけどさぁ、見当違いだったら殺されるのにね、やはり来るべきでは無かったんじゃないかなぁ。本当彼も容赦ない人間みたいだね。そして、君は今日ここで殺されるかもしれない。それで君は何を見せるんだい?」

「僕は、、、。」

僕は彼が全ての元凶であるということがよく分かった、そして帰って来た。
僕はあれから何をするにも思考回路がめちゃくちゃなんだ。

まぁ確かに、死のうと思うなら死ぬんじゃないかと思う。
先生も何年か前に会ってしまったのではないかと思った。彼はとても青白かったと話していたからだ。

まぁしかし悪い悪魔と言えばそうなのかもしれないが、見た目はどうも、下界の人間という感じでは無さそうだ。

僕は全てをグチャグチャにされて、終わりになるのかもしれないし、先生の世界に飛び込んだようになるのかもしれないし、どちらにしろよく分からない。

殺すというよりも何もかもグチャグチャにするが正しいと思う。そして僕を何処かに早く葬ってほしいとさえも思う。

で僕は海を眺めていた桟橋から飛び込んでやろうと思ったんだ。

で飛び込んだという訳さ。


あの研究家からの手紙なんて書いてあったか知ってる?

「先生の知り合いの子どもが何か知っている可能性が高い」ってさ。

まぁそうかもしれないと思ったのさ。



























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