小説2、  1

僕はいつかある話を聞いたんだよ。
ここで死んだ男の話をさ。
そうだなぁ、二人を殺してしまったんだってさ。
で何も分からずに死んだらしいのさ。
何故彼がその二人の友人を殺してしまったのかは分からないんだよ。
何を考えているかも分からないんだよ。

殺された男の手記が残っていたから、それについて話してみようと思う。
彼は気づいていたのかもしれないんだ。
犯人の男、彼のことはそうだなぁ、Пと呼ぼう。Пはとても優しく、紳士的で、そして親身になってくれていた。彼に殺意など感じられなそうじゃないか?あぁ、それは誰だってそう思うよ。とても殺すようには考えられない。
そして何故殺意が沸いたのかも分からない。

手記を書いた男のことをЛと呼ぼう、そしてもう一人の男をЯと呼ぼう。
Яは殺意を抱いていた。Пに懐くЛが許せなかったし、Пのような紳士的な対応ができない自分も責めていた。殺意はЛにも向かったがПにも向かった。
Лはこう述べている。「彼は、そう僕を殺そうとしていた。ひっそりとそして奥からふつふつと湧く嫉妬を感じざるを得なかった。彼はとても嫉妬深いんだ。見せないように、そうっと、そうっとして何もないようにして見せるけれど、本当に怖いよ彼は。僕はオドオドはしていなかったと思う。彼は僕が死ぬことを求めている。そう分かったんだよ。だからもう一思いに死んでやろうと思ったのさ。でも彼は正気に戻ったみたいだね。殺意がスゥーッと無くなったように感じられたんだ。僕は驚きを隠せなかったが、まぁ死ぬのが少し怖かったからよかったよ。」

彼は嫉妬深かったようだ。そうだなぁ、努力家そうなのは確かだ。何かにつけてよく働いているように感じる。誰かより勝ろうとしているのもとても感じられる。そして人への執着も感じられるようだ。
彼はとてもまともな人間なようだ。少し度が過ぎただけなんだろうなというのが感じられるよ。

Пに対してはこう述べている。「とても優しいようには感じられるんだよ。でも何処かに暗い部分が存在していて、僕を何かに利用しているように感じられるんだよ。僕をもしかしたら殺そうとしているのかもしれない。その時は僕は確実に生き残ることはないだろう。彼はЯよりも嫉妬深く、上に立ったものを確実に排除しようとするんだ。僕を絶えず疑っているのはそういうことだよ。疑って異端な人間だと認めさせて優秀な人達を殺そうとしているんだ。僕は優秀かどうか自分自身では分からないけどね。」

怖いなぁ、こんな人が存在するなんて、彼は死んだみたいだけれど、生きていたら相当、毛嫌いをしていただろうさ。
僕はそのまま熱中して手記を読み進めていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?