小説2  5

僕は早くから、家を出た。
少し怖い気がする。あそこはもう廃墟になっているのではないかな。
見た感じもう古そうな建物なんだけれど、彼の家だったのか。
ただの物置だと思っていたさ。
僕の家とこの森は結構離れているんだ。
彼女と会ったビル群を通って、少し都市感が薄れたところに住んでいるんだ。まぁ、ある程度離れていた方がいいだろう、そう思っていた。
誰もそこに近づかないけどさ。立ち入り禁止にはなっていないから、そして湖がきれいだから行くのさ。

森の奥地に進むとやはり澄んだ湖が広がっていた。ここに何故か自動販売機が存在しているんだ。人が補充しているようには見えないけれど、もしかして、もう何も入っていないんじゃないか?古い何十年か前のが入っているんじゃないか?とりあえず、水を買ってみることにした。水、お茶しかないけれど。冷たいのしかないな。期限はいつ?あぁ、一年後だ。誰かが補充しているのか。

ここから、あの家までどれくらいあるだろう。近いけども、遠いかもしれない。まずこの公園どこまであるんだ。結構整備されているみたいなんだよなぁ。誰かが管理しているから、こんなにきれいなんだろうけど。
人がいる感じがしない。

一時間はかからなかった。意外と廃墟って感じはしなくて、小綺麗な民家だった。ここが彼の暮らしていた家かぁ。

「お前、ここで何やっている。」
30代くらいの男が立っていた。筋肉質で、外国人のような顔だちをしていた。

「ここの管理者さんですか。僕この手記を読んで、この手記を書いた人の家っぽいんですけど、何か知っていますか?」

「あぁ、これは柊の日記じゃないか、どうしてお前が持っているんだ。」

「僕にもそれがよく分からないんです。家に置いてあって、あの、殺人事件があったって、知っていますか?」

「俺には分からない。お前の話を聞きたいし、話したいから、まぁ中に入るといい。」

机と椅子が置いてあるだけの質素な家だった。僕は座っていた。彼は温かいお茶を僕に振舞った。

「俺は昔、ここで少年に会ったんだ。俺はどこかでおかしくなって、詳しくは思い出せないが、少年を殺しそうになったんだ。何とか思いとどまったがな。」

「貴方はもしかして、この手記の書いた人の友人ですか。」

「あぁ、そうだ。俺は死んだことにされていたらしい。そうだな。死んではいなかったんだけれどな。お前柊の行方を知っているか?」

「柊さんは残念ながら、亡くなってしまったようです。柊さんはここに住んでいたようですけれど、僕の家族がどうにかしてその手記を得たか、僕の家族が柊さんと仲が良かったか、よく分かりませんが、置いてあったんですよ。
柊さんの死は何もなかったようになってしまいましたが、なにせ僕の親がその話をしきりにしだすものですから、僕は真実が知りたくなってしまって、今ここにいるんですよ。」

「柊は死んだのか、誰に誰に殺されたんだ。何も殺すようなことしていないだろ。」

「そうだと思います。しかしですね、貴方の友人、いましたね。貴方の友人、あぁ、僕は亡くなったと思っていますが、彼が殺したと思われるのですよ。」

「蓮が殺したって?ありえない、そんなことはしないような人だ。俺のことを絶えず気にしてくれるそういう人だった。蓮は俺の兄貴的な存在だった。とても努力家で、人に優しくて、俺には無いものを持っている、俺はどんなに蓮になりたいと思ったか、分からない。近くにいたのは俺と蓮だけれど、、、まぁ確かに俺以外だったら、自殺したか、蓮が殺したかになるってわかってはいるが、、、どこかで理解してないんだ。何故こんなことになってしまったのか。俺には分からない。」

「そう思うのも無理はありません。手記にはこう書いてありました。彼は優しい人だったが暗い面を持っていた、自分は優しい彼の方を信じたかったと、柊さんは気づいていたんですよ。柊さん自身が殺されるかもしれないことを。貴方についても深く記述していましたよ。貴方はこの時何をしていたんですか?」

「俺は頭がおかしくなったから、家に引きこもっていたのさ。自分でもよく分からないんだ。何故柊を殺そうとしたのか。俺が何ヶ月か後にに調子も精神も戻って久しぶりに外に出たら、連も柊もいなくなっていたんだ。そうして俺はこの地にいればいつか彼らに再開できると思っていたのさ。ここは誰もいないから、すぐ廃れるだろうからさ。帰ってきたときに廃れていたら、気が滅入るだろう。俺は少なくとも気が滅入る。ここは思い出の場所だからなぁ。
まぁ、ここまで経って戻ってこないんだったら、死んでいるか、どこか行っちまったのかしか考えられないからさ。まさか、仲間同士で殺し合いをしてたのかよ。どうしちまったんだ。蓮。」

「僕は蓮さんの気持ちがよく分かりません。彼が何を目的として柊さんを殺したのか全く理解できない。僕はでもそれでも蓮さんをどこかで擁護したくなっている。彼は死んだって言われているんですけど、死んだの情報をどこから得たかもわからないんですよ。彼は生きているかもしれません。僕の感覚では、彼は今噂になっていますよ。」

「どんな噂だ。ここの近くに蓮はいるのか?」

「はい、たまに現れるそうです。人殺しだって、僕が彼に話しかけられた日に少女が行っていました。彼は人を殺す、そう言ってました。そして僕にこう言ってきたんです。彼を殺せと。」

「そうか、しかし俺はこの辺を毎日整備しているから、詳しいが、蓮を見たことがないぞ。そして、俺は人殺しじゃない。」

「僕の毎回目の前に現れるんですよ。とても顔だちが良くて、そして話し方が穏やかで、紳士的で、僕はとても引き込まれる気がしました。」

「あぁ、そいつは蓮だと思う。顔だちがよく、優しい話し方をする。そして気を使った話をするだろう。彼はそういう人だ。俺は全く、殺気というものを感じなかった。」

「多分、僕を狙って現れているんだと思います。僕を殺す気なんじゃないかと疑ってみたんですけど、殺人したら捕まるよねという話をしてきたんですよ。確かにそうであるし、柊さんも死んではいないのではないかという気がしています。」

「どうだろうな、柊が「僕は殺される」って書いているんだぞ。それは半ば当たりなんじゃないかと思う。柊はとても先の読める人間だったから。
蓮を悪くないと思いたくないけれど、おかしくなってしまったのなら、無理もないかもしれない。」


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